入国制限措置 きょうから緩和 留学生「うれしい気持ち」

入国制限措置 きょうから緩和 留学生「うれしい気持ち」
1日から入国制限措置が緩和され、中長期の在留資格を持つ外国人の日本への入国が認められるのを受けて、留学生からは喜びの声が聞かれました。
韓国人の学生、パク・ミンヒョンさん(19)は、ことし4月から東京の私立大学に留学生として通う予定でしたが新型コロナウイルスの入国制限の影響で、来日することができずにいました。

大学の授業は韓国に滞在しながらオンライン授業を受けてきたということです。

今回、入国制限が緩和されることについて、パクさんは「ずっと待っていた生活だったため、遅くはなりましたが入国できるようになったことはうれしい気持ちが大きいです。今回の経験がむだな時間にならないように、これから日本での留学生活もがんばっていきたいです」と話していました。

また、パクさんは、ことし3月に来日する予定だったため都内に部屋を借りていましたが、入国の見通しがたたないため契約を解除することもできず、半年以上にわたって毎月およそ8万円の家賃を払い続けてきたといいます。

日本での留学生活の見通しがたたず、一時は周囲からは休学を勧める声もあったということです。

この半年間についてパクさんは「入国制限はいつまでと言ってくれたら心の準備ができたと思うのですが、いつ、何を準備したらいいのかがわからず、もどかしい気持ちがありました」と話していました。

留学目指す受験生から不安の声

一方、日本の大学への留学を目指す韓国の受験生たちからは依然として、不安の声が聞かれました。

韓国にある日本の大学などへの進学をサポートする塾によりますと、韓国にいる受験生が日本の大学を目指す場合、日本の会場での受験が必要となるケースが少なくなく、新型コロナウイルスで入国制限されて以降、受験生が来日できずに試験が受けられないケースが相次いでいるということです。

また、韓国の受験生が日本で試験を受ける際には短期滞在で来日するケースが多いということですが、今回の措置ではビジネス目的以外での短期滞在は対象になっておらず、受験生の多くが不安を募らせているということです。

このうち日本の大学への進学を目指して韓国国内で受験勉強をしているという、19歳の受験生は来日できずに、先月に行われた第1志望の大学の試験を受けることができなかったということです。

女性は「留学は自分の夢をかなえるための最初のボタンかけだと思っています。去年は準備が足りず、この大学のために浪人を決めてやってきたので試すこともできずに終わり、やるせない気持ちです。観光などの短期滞在を緩和することは世論や国民の不安もあり、難しいとは思いますが、受験生が試験を受けられるよう、学校側が試験の時期を延期したり、オンライン試験に切り替えたりするなどの配慮を期待しています」と話していました。

日本語学校「受験生も入国緩和を」

ソウル近郊にあるキョンギ(京畿)道コヤン(高陽)市にある日本語学校では、およそ100人の学生たちが日本の大学への進学を目指して勉強をしていて、そのうちの7割が来年の入学を目指す受験生です。

この日本語学校の伊原静江副院長は、留学生の入国制限が緩和されたことについて「ことしの新入生が入国できるようになったことは本当にほっとしました」と話していました。

一方で、受験のための短期滞在での日本への入国が認められていない状況については、「短期滞在の制限が緩和されないかぎり、2年も3年も前から日本留学を準備していた計画が水の泡となってしまいます。受験票の発布や、大学の面接など条件付きで受験生の短期の入国を認めるなど、チャンスを与える必要がある」と指摘し、さらなる対応を求めました。

専門家「受け入れ先の対応が重要」

公衆衛生学が専門で検疫の役割などに詳しい国際医療福祉大学の和田耕治教授は「入国制限を緩和すれば感染が拡大するリスクは当然あるが、対策を行うことによってリスクを下げることもできる。今回の緩和で入国が想定されている留学生や技能実習生については、受け入れ先の企業や団体が14日間、他人との接触や体調の変化などについて注意して対応できれば、大きなリスクがあるとは考えていない」と話しています。

一方で、注意するべき点として、「最初は人数も限られるうえ、受け入れ側も気をつけると思われるが、次第に慣れてきたところで感染が広がる可能性もある。慌てて多くの人数を呼び寄せるのではなく、段階を踏んでいくことが受け入れる側には必要だ」と指摘しています。

さらに政府が今後も入国制限の緩和を進める方針を示していることについて、「外国の感染状況や検査体制などを注視したうえで、状況に合わせて検討することが求められる。今後は、オリンピックを見据えて観光客の受け入れをどうするかも課題だ。観光客は滞在期間が短く国内のどこにいるのか把握することが難しいほか、外国人だけでなく、海外旅行から帰国した日本人についても対策が必要だ」と指摘しています。

入国後はウイルス検査 14日間の待機も

今回の緩和措置により、政府が入国を拒否している159の国と地域からでも、中長期の在留資格を持つ外国人は日本に入国することが可能となりますが、感染防止のための措置や手続きが必要になります。

まず、日本に入国する際、空港内で「抗原検査」などのウイルス検査を受けるほか、出国前に取得した陰性の証明書や14日間の待機措置が確約できる受け入れ先の企業や大学などの誓約書の提出が求められます。

そして、入国後14日間は公共交通機関を利用しないことやホテルなどでの待機が求められます。

待機期間中は1日1回、自治体から健康状態のフォローアップが行われるほか、スマートフォンなどによる位置情報の保存が必要となります。

一方、159以外の国から日本に入国する場合は、空港でのウイルス検査は必要ないものの、入国後の14日間、公共交通機関を利用しないことやホテルなどでの待機が求められます。

成田空港では期待と懸念の声も

成田空港の利用者からは経済の回復への期待とともに、感染が拡大することを懸念する声が聞かれました。

成田空港では感染拡大に伴って国際線の運休や減便が相次ぎ、ことし4月以降、利用者が去年と比べて9割以上減少する事態が続いています。

国際線の到着ロビーは、1日も閑散とした状態が続いていました。

ターミナルビルにある飲食店や土産物店のなかには撤退した店舗も出ています。

こうした中、政府は1日から原則、全世界を対象に入国制限を緩和し、ビジネス関係者に加えて医療や教育の関係者、それに留学生など、中長期の在留資格を持つ外国人に、日本への新規の入国を認めました。

成田空港を利用した20代の留学生で、中国人の女性は「日本に留学ができなくなっていた友人がいるので、日本に入国ができるようになってよかった。経済や教育など、さまざまな面で交流が再開できるようになればいい」と話していました。

インドネシアに駐在している50代の日本人の男性は「入国制限の緩和によって感染が広がる心配な面もありますが、このまま入国制限が続くと経済が死んでしまうので、制限の緩和と感染防止の両立を図ることが重要だ」と話していました。

成田空港の検疫所では体制強化

新型コロナウイルスの水際対策を行う成田空港の検疫所では、入国者の増加に対応するため、検査を行う部屋を増やしたうえで、連絡先などを記入する「質問票」をデジタル化するなど、体制を強化しました。

【トイレを検査室に】

これまで検査を行う部屋が空港に1つしかありませんでしたが、1日およそ4700件の検査を行うことができるように、国際線の到着ロビーにある4か所のトイレを改修し、新たに検査室として整備しました。

成田空港検疫所の田中一成所長は「増えていく入国者に対応するためトイレを改修したが、検査には問題ない」と話していました。

【紙の質問票をデジタル化】

また、入国者の増加に円滑に対応するため、連絡先などを記入する紙の「質問票」が試験的にデジタル化されました。

「質問票」は、入国者が、発熱などの症状の有無や、14日間の待機場所や連絡先などを記載して検疫所に提出しますが、成田空港検疫所によりますと、これまで紙の「質問票」では記入漏れが散見され、検疫所が確認に追われるケースが相次いでいたということです。

このため、紙の質問票をデジタル化して、スマートフォンやタブレット端末などを使って情報を入力できるようにしました。

デジタル化された質問票は、厚生労働省の専用のサイトにアクセスし、必要な情報をすべて入力しないと操作は完了しません。

入力を終えるとQRコードが発行され、空港の端末にかざすだけで手続きを行うことができます。

成田空港検疫所の田中所長は「検疫官の負担が軽減されるとともに、入国者の連絡先などが正確に把握できるようになる」と話していました。