「Go Toトラベル」 きょうから東京発着が対象に

「Go Toトラベル」 きょうから東京発着が対象に
観光需要の喚起策「Go Toトラベル」は、1日から東京を発着する旅行が対象に加わります。新型コロナウイルスで深刻な打撃を受けた観光業界をさらに後押しする効果が期待される一方、感染防止策の徹底が改めて問われることになります。
「Go Toトラベル」は、旅行代金の割り引きや、観光施設や土産物店などで使えるクーポンの形で、1泊当たり最大2万円分の補助を受けられる観光需要の喚起策です。

ことし7月に、まず、旅行代金の割り引きが始まりましたが、感染者の増加を受けて対象から外れていた東京都内への旅行と、都内に住んでいる人の旅行も1日から適用の対象になります。

一方、観光施設や土産物店、飲食店や交通機関などで使えるクーポンも1日から全国の登録施設で利用できるようになります。

「Go Toトラベル」に東京発着の旅行が加わり、新たにクーポンの発行も始まることで、観光業界を後押しする効果が一段と高まることが期待されますが、新型コロナウイルスの感染防止策の徹底が事業者と旅行者の双方に改めて問われることになります。

制度の詳細と注意点

「Go Toトラベル」は、旅行代金を1泊当たり2万円を上限に補助する制度です。

登録している宿泊施設や旅行会社に支払う旅行代金のうち、35%が割り引かれるほか、観光施設や土産物店などで使えるクーポンが旅行代金の15%分発行されます。

例えば、旅行代金が1泊4万円の場合、
▽旅行代金の35%に当たる1万4000円が割り引かれ、
▽クーポンは15%に当たる6000円分を利用することができます。

東京を発着する旅行商品については、旅行会社などで9月18日から割引価格を反映した形で販売が始まりました。

18日より以前に予約していた人が割り引きの適用を受けるには、旅行に行く前に自分で事業者側に申し出る必要があります。

クーポンとは

また、1日から登録している観光施設や土産物店、飲食店や交通機関でクーポンも利用できるようになりました。

クーポンの有効期間は旅行の期間中で、例えば、1泊2日の場合は宿泊する日と翌日の2日間です。クーポンが使えるのは、宿泊する施設があるか、隣接する都道府県になります。

このうち、
▽北海道では青森県も、
▽沖縄県では鹿児島県も対象になり、クーポンが利用できる店舗には専用のステッカーやポスターが掲示されます。

クーポンは、商品券として紙で発行する形や、スマホを利用した電子クーポンの形で1000円単位で発行され、買い物に利用した場合、お釣りはもらえません。

東京追加の経済効果は

「Go Toトラベル」の対象に東京発着の旅行が加わることの経済効果については、個人消費を7700億円押し上げるとする試算、試みの計算もあります。

まず、全国の人口の1割を超えるおよそ1400万の東京都民が全国各地の観光地を訪れる効果があります。

さらに、去年、都内のホテルや旅館などに宿泊した人は、外国人旅行者を除いても延べ4963万人と、全国の宿泊者数の1割を占め、都内を訪れる人たちの増加も見込まれます。

観光客が増えれば、宿泊や観光の施設だけでなく、交通機関や飲食店の利用も増えることになります。

野村総合研究所は、「Go Toトラベル」の対象に東京発着の旅行が加わる経済効果について、個人消費を7700億円押し上げると試算しています。

これは、事業全体で期待される個人消費の押し上げ効果、4兆3000億円の17.8%を占めるとしています。

再び感染が拡大したら?

仮に今後、再び感染が拡大する地域が出てきた場合、政府は、専門家の意見も踏まえて「Go Toトラベル」の対象から外すことを検討します。

この際、旅行者が予約を取り消してもキャンセル料が発生しないよう配慮するとしています。

具体的には、事業者にキャンセル料をとらないよう呼びかけ、事業者に損害が生じる場合には「Go Toトラベル」の事業費から補填(ほてん)するとしています。

対象となるのは、例えば
▽宿泊施設では仕入れた食材にかかった費用、
▽旅行会社であれば、航空券の手配にかかる手数料などで、実際に生じた損害に相当する額を補填するとしています。

経緯と対象事業者数

「Go Toトラベル」は、新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ消費を喚起する「Go Toキャンぺーン」のうち、観光に関わる分野を支援する事業です。

旅行代金の割り引きと、観光施設や土産物店、飲食店や交通機関などで使えるクーポンを発行する形で、1泊当たり最大2万円分の補助を受けられます。

このうち、旅行代金の割り引きは、7月22日に始まりましたが、都内で感染者が再び増え始めていたことから政府は開始直前に、都内を目的地とする旅行と、都内に住む人の旅行を対象から外しました。

これに伴って旅行を取り消した場合のキャンセル料は、政府は当初、補償しない方針を示しましたが、事業スタートの前日になって、一転して補償する方針を示すなど混乱が生じました。

その後、9月10日に新型コロナウイルスの感染状況を分析・評価する東京都の「モニタリング会議」は感染状況の警戒のレベルをおよそ2か月続けてきた最も深刻な表現から1段階引き下げました。

これを受けて翌日の9月11日、赤羽国土交通大臣が10月1日から東京を対象に加える方針を明らかにしました。

観光庁によりますと、キャンペーンの利用者は、8月末の時点で少なくとも延べ1339万人に上ります。

また、割り引きの対象となる事業者は、これまでに
▽旅行会社が全体の6割を超える6500余り、
▽宿泊事業者が全体の7割近くを占める2万3800余り、
▽クーポンが利用できる事業者は、およそ10万に上っています。

東京都 小池知事「社会経済活動と感染防止対策の両立を」

「Go Toトラベル」の対象に東京発着の旅行が加わることについて東京都の小池知事は記者団に対し「いろいろと人の動きが出てきていて、これからもさらに増えることが予想されるが、感染しない、させないということの徹底を改めてお願い申し上げたい。『親しき仲にもマスクあり』ではないが、親しいから大丈夫ということはない。手洗いやマスクの着用、大声を出さない、食事の皿は別々にするということを守っていただいて、社会経済活動と感染防止対策の両立を図っていきたい」と述べました。

観光地・京都では東京対象に期待

京都市のホテルや旅館は、東京からの宿泊客を呼び込もうとアイデアを絞り出しています。

このうち京都市東山区の旅館は、SNSで旅館と周辺の観光地の魅力を伝えてくれる人に、1か月間、無料で1部屋を貸し出すことにしました。

選考の結果、選ばれた神戸市の吉川亜矢さんはこれまで旅行の写真をインスタグラムで積極的に発信してきました。

吉川さんは友人と一緒に清水寺や八坂の塔など旅館の周辺を散策しいわゆる「インスタ映え」する景色を写真に収めて発信していました。

吉川さんは「これを期に頻繁に足を運び、京都を極めたい。フォロワーには外国人もいるので、写真を見て日本に来たいと思ってもらえたらいいと思う」と話していました。

この旅館の佐野誠治専務は「この1週間で年末まで60件ほど予約が入ってきました。SNSで発信してもらうことで京都に行こうかなと思ってもらえることを期待しています」と話していました。

また、同じ東山区のホテルは東京からの観光客にターゲットを絞った「東京都民限定プラン」を始めました。

1泊2食付きで通常1人1万7160円のプランは、東京都民だけ、30%割り引きます。

ここから「Go Toトラベル」の利用でさらに35%が割り引かれるため、東京の人は7800円で利用できることになります。

このホテルは8月は「Go Toトラベル」の効果もあって稼働率は4割と、6月、7月に比べて1割ほど持ち直したものの経営は依然苦しい状況です。

ホテルの吉田良副支配人は「稼働率を上げて従業員の雇用を確保していく必要があります。大幅に割り引いているためなかなか利益には結び付きませんが、新プランを利用して京都に来ていただきたいと思います」と話していました。

一方で、京都に住む人たちの中には、観光客が増えることで再び感染が広がってしまうのではないかと不安を感じている人も少なくありません。

京都市観光協会は、観光客を対象にしたホームページを立ち上げ、▽旅行前の体調チェックや密集を避ける旅行の計画を促しているほか、
▽旅行中に発熱したときには専用の電話窓口に相談するよう呼びかけています。

京都市観光協会の嵯峨亜希子担当部長は「受け入れ側のわれわれがしっかり対策するのはもちろんですが、旅行を通して感染が広がらないよう、このタイミングで観光客の方にもしっかり事前に準備と対策をしていただきたい」と話しています。