消費税率引き上げから1年 コロナ影響で財政状況一段と厳しく

消費税率引き上げから1年 コロナ影響で財政状況一段と厳しく
消費税の税率が8%から10%に引き上げられて1日で1年になります。政府は、増税による収入を社会保障の充実に充てることにしていますが、新型コロナウイルスの影響で税収のもととなる消費が落ち込み、支出も膨らんで財政状況は一段と厳しくなっています。
消費税率は1年前、去年の10月1日に8%から10%に引き上げられました。

これによる増収は年間5兆7000億円程度と見込まれ、政府は幼児教育や保育の無償化など社会保障の充実に充てることにしています。

しかし、税収のもととなる消費は、ことしに入り、新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、外食や旅行を中心に落ち込んでいます。

消費税は、所得税や法人税に比べて景気による税収の変動が比較的小さく、安定財源として適しているとされますが、人の移動が制限される感染拡大の打撃は大きく、税収への影響が懸念されています。

また、新型コロナへの緊急対策で国の支出が急激に増大し、財政状況も一段と厳しくなっていて、消費税率を引き上げて1年がたったものの、膨らみ続ける社会保障費をいかに賄っていくかという課題はより深刻になっています。

小売業界では大規模値下げの動きも

消費税率の引き上げに新型コロナウイルスの感染拡大も加わって、消費者の節約志向が一段と高まっているとして、小売業界では、大規模な値下げに踏み切る動きも出ています。

大手スーパーの「西友」は9月上旬、レトルトカレーやスナック菓子、それに衣料用洗剤など食品や日用品の765品目を平均でおよそ5%値下げしました。

値下げをした主要な品目の売り上げは、去年の同じ時期と比べて20%程度伸びているということです。

このスーパーが大規模な値下げに踏み切ったのは、消費税率が引き上げられた去年10月以来で、感染の収束が見通せない中、消費者の節約志向に応える必要があると判断しました。

商品本部の荒木徹バイス・プレジデントは「去年10月に非常に強まった節約志向はいったん弱まったが、新型コロナの影響でより一層強くなった。消費者には所得の面で不安感が高まっていると感じる」と話しています。

ここ数年、国内では人件費の上昇などを背景に食品や日用品の値上げが相次ぎましたが、小売業界では、消費者の節約志向に対応する必要があるとして、値下げに踏み切る動きが出てきています。

イートインスペースの利用大きく減少

コンビニなどで店内飲食ができるイートインスペースの利用は、消費税率の引き上げと新型コロナウイルスの感染拡大の影響で大きく減少しています。

消費税率の引き上げで酒類を除く飲食料品は、軽減税率が適用され税率が8%に据え置かれましたが、コンビニやスーパーで食品を買ってイートインスペースで食事をする場合は、外食と見なされ、軽減税率が適用されません。

調査会社のエヌピーディー・ジャパンが消費者を対象に行った調査によりますと、イートインの売り上げは増税直前の去年7月から9月までの3か月間は、前の年に比べて20%余り増えましたが、引き上げ直後の10月から12月までの3か月間は8%減少しました。

さらにことし4月からの3か月間は、新型コロナウイルスの感染拡大でイートインスペースを縮小したり閉鎖したりする店舗が相次ぎ、利用はマイナス45%と大きく落ち込みました。

都内にある薬局を併設したコンビニでは、10席以上ある広めのイートインスペースで体操教室を開くなど地元住民のコミュ二ケーションの場としても活用してきましたが、ことし4月以降、席数を3つに減らし、イベントも休止しています。

女性客の1人は「にぎわいがあって楽しい場所でしたが、今は寂しいです」と話していました。

店では今月、消毒など感染対策を徹底したうえで、参加人数を絞ってイベントを再開することにしています。

ローソンヘルスケアパートナー推進部の金子大作さんは「イートインがコンビニへの来店の理由にもなっていたので感染に注意を払いながら再開していきたい」と話していました。