「フードテック」で日本の食は変わる?

「フードテック」で日本の食は変わる?
「フードテック」をご存じですか?食(フード)とテクノロジーを合わせた造語で、主に最新技術を駆使して新しい食品や調理法を開発することを意味します。肉を一切使わず、植物由来のたんぱく質などで作ったハンバーグなど、聞いたことありませんか?欧米を中心に注目されてきたフードテックは、新型コロナウイルスの感染拡大を機に改めて関心が集まり、環境に優しくヘルシーな食事として売り上げを伸ばしています。こうした中、日本でも大手食品メーカーが本格的にフードテックに取り組むプロジェクトが立ち上がると聞き、取材しました。新たな技術で日本の食卓とフードビジネスに変革が起きるのでしょうか。(経済部記者 保井美聡)

市場規模 700兆円?

食×テクノロジーというと、植物由来の成分で作られた「代替肉」や、肉の細胞を増殖させて作る「培養肉」などを思い浮かべるかもしれません。

しかし、フードテックに詳しいコンサルティング会社「シグマクシス」によると、食品そのものに限らず、消費者の食のしこうや健康状態を示すデータの収集や活用、ドローンを使った農業など、食にテクノロジーを生かす広い範囲を指しているといいます。

その市場規模は、2025年までに世界で約700兆円規模にのぼるという試算もあり、欧米などではスタートアップ企業に対する投資も活発になっているというのです。

その先頭に立つのは、やはりアメリカ。
植物由来の食材は、家畜に飼料を与えて肉として食べるより、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出が少ないとされ、アメリカでは大手ハンバーガーチェーンが代替肉を使った商品を販売するなど普及が進んでいて、まちのスーパーの店頭にも並んでいます。

代替肉の製造を手がけるアメリカの企業は、設立から11年のことし、株式の時価総額が1兆円を超えるなど、存在感を強めています。

もはやフードテックは、大きなビジネスになりつつあるのです。

新たなプロジェクトとは

そうした中、日本で新たな動きが。
9月30日、アメリカの投資会社「スクラムベンチャーズ」が日本企業と組んで、日本で「フードテック」のイノベーションを起こそうというプロジェクトを立ち上げ、都内で説明会を開きました。
参加する日本企業は、不二製油・日清食品・伊藤園・ユーハイム・ニチレイ・大塚ホールディングスの6社。

投資会社はこの6社それぞれのフードテックに関わる新規事業の開発を後押しするため、協業するスタートアップ企業とのマッチングを目指します。

まずはことし中に、投資会社がスタートアップ企業を募集。その後、食の専門家などからアドバイスを受けたうえで、6社が来年3月をめどに成果を報告するというものです。
外村さん
「日本の食品業界は、優れたおいしさと安全性を担保してきましたが、世界ではこうした蓄積を追い越しかねない、フードテックによる技術革新が短期間で起きています。日本企業がみずからの強みを生かしながら、スタートアップ企業の技術やアイデアを使って成長する手助けをしたいと考えています」

フードテックで何をする?

実際、各社はどんな新規事業をめざしているのでしょうか。

大塚ホールディングスのグループは植物由来肉を使ったハンバーグやハム、植物性チーズなどを開発していますが、例えばこうした肉でソーセージを作る場合、パリッとした食感を作れるのか?といった課題が。

このため、解決に向けて協業できるスタートアップ企業がないか模索しています。
ニチレイは、AIを使ってユーザーの味の好みや気分、食事をとる場面などに応じてレシピを提案するアプリを開発しています。
3年前に新規事業として立ち上げ、この日の説明会で発表しました。
このアプリには自社開発した350のメニューのレシピが用意されていて、悩むことなく献立を決めることができるといいます。

ただ、開発を担当した技術戦略企画部の関屋英理子さんは、自社開発だけでなく、外部と協業することで新たな視点を取り入れ、開発を進める「オープンイノベーション」の考え方が重要だと話しています。
関屋さん
「アプリの開発当時、『このサービスは必要か、事業化できるのか』といった指摘は社内でも多かったんです。しかし、今の食を取り巻く世界の状況を見ていると、同じ品質の商品を安く、大量に作るというこれまでの技術革新だけでなく、個人に特化した商品やサービスを外部のノウハウも入れて作っていく必要性を強く感じています」

食の文化を変えていく?

欧米で注目され、日本でも関心が高まりつつあるフードテック。
今回のプロジェクトが立ち上がった同じ30日に、流通大手のイオンが、植物由来の食材を使ったパスタソースや麺などを開発し、10月から本格的な展開を始めると発表しました。

ことし3月から一部の店舗で発売していた代替肉で作ったハンバーグも全国の店舗で展開するとしています。
和田マーケティング本部長
「市場ができたばかりなので、どの程度の食材を投入できるか検討しています。消費者に受け入れられなければ市場が縮小してしまうので、味や価格も重視しながら取り組みを進めたい」
疲れたり、悲しい気持ちになったりしていても、ほっと一息つける食事の時間。世界の誰もが大切にしている「食」の分野で、これまで日本は、例えば即席麺や冷凍食品などで世界をリードしてきました。

日本発のフードテックが、新しい時代に即した豊かな食文化を世界に提供できるのか、これからの取り組みが楽しみです。
経済部記者
保井 美聡
平成26年入局
仙台局、長崎局を経て流通や食品業界など担当