新型コロナ 情報集約システムで誤入力 保健所などがチェックへ

新型コロナ 情報集約システムで誤入力 保健所などがチェックへ
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保健所の負担軽減などを目的に国が導入した新型コロナウイルスの感染者情報を集約するシステムで誤ったデータが入力されているケースが見つかり、厚生労働省は保健所などがチェックする仕組みに改めることを決めました。

保健所の負担の軽減など目的 医療機関がデータ入力

「HER-SYS」は、保健所の負担の軽減などを目的に、ことし5月以降、全国の保健所や検査などを行う医療機関に導入されました。

以前は、保健所が、医療機関からファックスで届け出を受けて感染者のデータを入力していたのに対し、「HER-SYS」では、医療機関が直接データを入力するよう国が求めています。

誤ったデータを入力見つかる

厚生労働省は28日、専門家を集めた会合を開き、医療機関が誤ったデータを入力しているケースが見つかったと報告しました。

このため、厚生労働省は、入力されたデータを保健所と衛生研究所がチェックする仕組みに改めることを提案し、了承されました。

さらにシステムを改修して、データに明らかな誤りがある場合に検知する機能を今月中に追加するということです。

また、医療機関へのアンケートで「データを入力している」と回答した医療機関が41%にとどまっていたことも報告され、負担を軽減するため、感染が疑われる患者の入力は入院が必要な人にかぎり、陰性だった場合は入力を求めないことも決めました。

厚生労働省は「保健所の協力を求めながら、できるだけ負担が減るよう改善を続けていきたい」としています。

「HER-SYS」改善へ

厚生労働省は、ことし7月以降、専門家や保健所長などを集めて定期的に会合を開き「HER-SYS」の改善策を検討してきました。

当初の入力項目がおよそ120に上り、データを入力する医療機関の負担になっているという指摘を受け、9月からは優先的に入力を求める項目を「発症日」や「症状」などおよそ40に絞っています。

一方、最大の問題として残っているのが、入力されたデータを国内の感染状況の分析に使用できていないことです。

感染状況を分析するには「発症日」など基礎となる情報が不可欠ですが、入力データの一部に誤りがあるため分析に使えず、現在も正確な感染状況を把握できていません。

また、こうしたデータの集約は、HER-SYSで行うことになっていて、現在はほかに収集する手段がないのが現状です。

このため、厚生労働省の職員が自治体のホームページを確認して感染者などの情報を手作業で集計し、統計データとして公表する異例の状況が続いています。

今回、医療機関が入力したデータを保健所などがチェックする仕組みに改めたことで、その分、保健所の負担は増えますが、厚生労働省は「データの精度を高めることで国内の感染状況を分析できるようにしたい」としています。

HER-SYSとは

「HER-SYS」=「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム」は全国の保健所や医療機関が新型コロナウイルスの感染者の情報を入力して一元的に管理するシステムです。

「Health Center Real-time information-sharing System on COVID-19」の頭文字などをとって「HER-SYS」と呼ばれています。

厚生労働省は、当初、ことし7月中に全国で導入することを目指していましたが個人情報の取り扱いなどを理由に都市部を中心に導入に時間がかかり、保健所を設置している155の自治体すべてで導入されるのは、10月になる見通しです。

保健所の負担 軽減するはずが…

導入にあたって国が掲げていた主な目的の1つが「保健所の負担の軽減」です。

以前の「NESID」と呼ばれるシステムでは、保健所が医療機関からファックスで届け出を受けて感染者のデータを入力していましたが、「HER-SYS」では医療機関が保健所を介さずに直接データを入力することで保健所の負担を減らすことができるとしていました。

ところが、厚生労働省が8月24日から9月2日にかけて導入している医療機関などにアンケートを行った結果、回答した318の医療機関のうちデータを入力していたのは41%にとどまっていました。

また、保健所がある自治体へのアンケートでは、回答した113の自治体の60%が、「ほぼすべてのデータを医療機関の代わりに入力している」と回答し、多くの保健所で負担が減っていない実態が明らかになりました。