美容院でのマスク、困っていませんか?

美容院でのマスク、困っていませんか?
「替えのマスクは持ってきていますか」先日、行きつけの美容院に行ったところ、こう尋ねられました。聞けば、この美容院では、カットの途中でマスクが汚れた場合に備えて新しいマスクを用意しているとのこと。接客業のなかでも、客との距離が近くならざるをえない美容院。新型コロナウイルスへの対応が求められるなか、こうした場所ならではの悩みに応えようと開発されたマスクがあります。(WorldNews部記者 阿知波美帆)

マスクを貼るだけ?

開発されたマスクは、耳にかけるひもがついていません。使い方は簡単。顔に「貼る」だけです。

口や鼻を覆う不織布の裏には、皮膚への負担が少ない医療用の両面テープが取り付けられています。通常のマスクだと、シャンプーの際に、耳にかけるひもがぬれてしまったり、パーマやカラーリングで汚れてしまったりすることがあります。また、耳回りの髪をカットする際に、はさみが引っ掛かり、客を傷つけてしまうおそれもあります。“貼る”マスクを使うことで、客は安心して髪を整えることができるというのです。
“貼る”マスクには、2つのタイプがあります。1つは、顔や鼻を覆う部分がポケットになっているタイプ。客が持参したマスクをポケットにはめて使います。もう1つは、素材が半透明で顔が透けて見えるマスクです。

美容師にとって悩ましいのは、顔の大半がマスクで覆われていると、顔の輪郭や目、鼻のバランスを確認しながらカットするのが難しくなるという点です。半透明の“貼る”マスクを使えば、こうした負担を少しでも抑えることができるというのです。

安心しておしゃれを

マスクを開発したのは、東京と神奈川で美容院を経営する西村裕司さんです。全国の美容院の経営者で作る団体「全日本美容業生活衛生同業組合連合会」が策定した新型コロナウイルスの感染拡大予防ガイドラインによると、従業員のマスク着用や手洗いの徹底、換気の実施、ドライヤーやくしなどの美容器具の消毒とともに、「施術に影響しない範囲で、顧客にもマスクの着用を促す」としています。

ガイドラインでは、耳にかけるひもをラップで巻くなどして水にぬれないようにすることで、客の不快感の軽減に配慮するとありますが、客に少しでも安心しておしゃれを楽しんでもらおうと、西村さんが仲間と一緒に2か月ほどかけて開発しました。
西村さん
「顔のバランスを確認しやすいよう、顔にフィットした形になるよう工夫しました。また、飛沫を防ぐ効果を保ちながらも、なるべくサイズが小さくなるよう心がけました」

“貼る”マスクで生活も支える

実は西村さんには、このマスクを開発したもう一つの理由があります。「雇用の創出」です。

西村さんは、美容院を経営する傍ら、舞台俳優のヘアメイクの仕事も数多く手がけています。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、予定されていた公演は次々と延期や中止となり、多くの舞台関係者が、一時、仕事の激減に直面しました。一緒に働いてきた人たちのなかには、衣装の制作を担う縫製のプロたちもいます。こうした人たちに、“貼る”マスクの生産や販売に加わってもらうことで、彼らの生活を少しでも支えることができないかと考えたのです。

“貼る”マスクは、10枚セットで1650円。6月にインターネットで販売を開始してから、これまでに8万枚以上が売れ、リピーターからの購入も増えているということです。
西村さん
「本当は、感染症への不安を抱くことなく、こうしたマスクも必要とされないような状況になってほしいです。ただ、新型コロナウイルスだけでなく、インフルエンザなど感染症への不安を抱く人は多いと思います。こうした方たちが、安心して、安全に美容院を利用することに役立つのであれば、この製品をより多くの人に知ってほしいと思います」

欠かせない日用品だから

マスクを購入した人の中には、耳の手術をしたばかりで、マスクのひもをかけることができないという人もいたということで、西村さん自身、予想もしていなかったニーズに驚いたと話していました。

今や、外出時には欠かせない日用品となった「マスク」。さまざまな事情や状況に応じた新たな製品が、今後も市場に生まれてくるのではないか。取材を通じてそう感じました。
WorldNews部記者
阿知波 美帆
平成12年入局
岡山放送局、経済部などを経て英語ニュースの取材や制作を担当