“印鑑不要”の電子契約サービス 提供企業に相談相次ぐ

“印鑑不要”の電子契約サービス 提供企業に相談相次ぐ
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河野行政改革担当大臣が、行政手続きでの押印を可能なかぎり不要とするよう、すべての府省庁に求めたことを受け、印鑑を使わず契約などができる電子契約サービスを提供している都内の企業には、導入を検討している民間企業などから、多くの相談が寄せられています。
電子契約は、法人や個人の間の契約を紙の契約書や印鑑を使わず、インターネット経由で書面をやり取りするもので、都内にあるIT関連企業は5年前から、主に企業向けに電子契約サービスの販売を手がけています。

会社側によりますと、新型コロナウイルスの感染拡大で在宅勤務が広がったことし3月ごろから契約が増加し、4月は6500社余りと、去年の同じ月の3倍に増えたということです。

さらに今回の河野大臣の発言を受けて導入を検討する企業から問い合わせが相次ぎ、25日はおよそ100社から相談が寄せられたということです。

会社側によりますと、これまでは紙を使うことが多い金融機関や不動産業との契約が多かったということですが、最近はユーチューバーなどとの契約も増えてきているということで、今後、省庁での取り組みが進めば民間でもさらに電子契約サービスが広がるとみています。

「弁護士ドットコム」の橘大地取締役は「数分あれば簡単に契約が締結できるので、体験してしまうと、紙を使っていた時代には戻れないという声もいただいている。新型コロナで在宅勤務が進んだこともあり、電子契約は浸透していくと思う」と話していました。

はんこ店の店主「文化として残っていく」

一方で、都内のはんこ店の店主からは「契約など必要な時もあるので、はんこは文化として残っていくと思う」という声が聞かれました。

東京 台東区で明治25年から100年以上続くはんこ店を経営している福島恵一さん(47)は、河野大臣の発言について「業界も高齢化が進み、デジタルを通した新しいことへのチャレンジに難しさを感じている店主もいるので、河野さんの発言には驚いたし不安を抱いている人も多いのではないか。ただ、膨大に押されてきたはんこのうち、必要でない部分が整理されることは、時代の流れからもそうならざるをえないと思う」と話していました。

一方、デジタル化に備えて、福島さんは印刷部門における売り上げの増加に向けて取り組みを進めて来たといいます。福島さんが経営する前、印刷部門は売り上げ全体の10%ほどでしたが、企業での名刺の印刷など、営業を地道に進めた結果、現在は50%まで伸びたということです。

このほか、日本の文化を海外に知ってもらう取り組みの一環として、外国人向けのはんこ作りも積極的に行い、印鑑の文化を残していきたいと考えています。

福島さんは「デジタル化の中で省いていくものあると思うが、企業間の取り引きの中でも必要な時はあり、はんこは文化として残っていくと思う。日本では書道や賞状など、古くから使われることで根づいてきた歴史もあるので、われわれとしても守っていきたい」と話していました。