「やさしい日本語」半数近い人が取り組み必要 文化庁 初調査

「やさしい日本語」半数近い人が取り組み必要 文化庁 初調査
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日本で暮らす外国人が増える中、災害や行政に関する情報などを「やさしい日本語」でわかりやすく伝える取り組みについて、文化庁が初めて調査したところ半数近い人が「取り組みが必要」と考えていることがわかりました。
「やさしい日本語」は、日本語を母語としない人が理解しやすいよう、
▽一文を短くしたり、
▽「危険」は「危ない」に、「大規模」は「大きい」に言いかえるなど、
簡単な表現を使ったりして伝えるものです。

日本語の使い方などの変化を毎年調査している文化庁は、今回初めて「やさしい日本語」をテーマに調べ、全国の16歳以上の男女、1994人が回答しました。

この中で、災害や行政に関する情報を日本に住む外国人向けに「やさしい日本語」で伝える取り組みを知っているか聞いたところ、
▽「知らない」と答えた人が68%にのぼり、
▽「知っている」と答えた人は30%にとどまりました。
一方で、情報を届けるために必要な取り組みを尋ねると、
▽「さまざまな国の言葉での情報提供」が58%と最も多かったのに続いて、▽「やさしい日本語で伝える取り組み」は46%と半数近くになったことがわかりました。

このほか、
▽「日本語を身につけられる学習環境の整備」が29%などとなりました。

文化庁国語課の柳澤好治課長は、「日本にさまざまな国の方々が住んでいる中、日本人自身も対応が必要だと感じていることがわかった。多言語化だけでは限界があり、行政や民間が参考にできるよう『やさしい日本語』を周知していきたい」と話しています。

130か国の外国人が暮らす 東京 港区では

多くの外国人が暮らしている自治体では、「やさしい日本語」を取り入れる動きが広がっています。

8月の時点でおよそ130か国、2万人近い外国人が暮らす東京・港区では、生活に必要な日本語を学べるよう日本人の講師らと「やさしい日本語」で交流できるサロンを今年度から開催しています。

9月19日に、区内の中学校で開かれた会には、パキスタンやキューバなど9か国のおよそ10人が参加しました。

サロンでは、日本人の講師やボランティアが
▽簡単な単語からなる短い文章で、
▽言葉ごとに少し間をあけながらゆっくりと発音する
「やさしい日本語」を心がけ、2時間ほど会話し交流を深めていました。

日本で5年暮らすパキスタン人の27歳の女性は日本で子どもを2人産んだ際、「入院」という言葉以外、医師や看護師が話す日本語が全く理解出来ず、苦労したといいます。

女性は、「何もわからないまま子どもを産みました。子どもたちのためにも簡単な日本語を学びたい」と話していました。

また、40歳の中国人の男性は、漢字は中国語と意味が近く、例えば「沖縄」という文字を見れば地名だとわかる一方、訓読みや音読みがある日本語は発音が中国語と異なり、「おきなわ」と耳で聞いてもすぐにわからなかったといいます。

男性は、「2年住んでいますが日本語は難しい。きょうは親切に話してもらえ楽しかった。日本や外国の方ともっと話したい」と話していました。

港区が区内に住む外国人に行った調査では、
▽「地域活動に参加したい」と答えた人が7割に上った一方、
▽実際に「参加している」と答えた人は1割にとどまり、
理由の1つに「ことばの壁」が挙げられたといいます。

港区の宮本裕介国際化・文化芸術担当課長は、「多言語化は進めているがすべての国のことばに対応するのは難しい。『やさしい日本語』なら外国の方も理解できるし、英語が出来ない日本人でも国際交流できる。相手の立場にたって会話することは、同時に思いやりをもつことだと考えています」と話しています。

医師など対象「やさしい日本語」講座

国際医療福祉大学では23日、都内のキャンパスで「やさしい日本語」をテーマに公開講義が行われ、医療関係者や自治体職員などが対面やオンラインで参加しました。

講義では、日本語教育に詳しい聖心女子大学の岩田一成教授が講師となり、新型コロナウイルスを受け都の生活相談センターに電話した外国人の55%が「やさしい日本語」での対応を求めたことを説明しました。

その上で、わかりやすい表現として
▽「記入」は「書く」に、
▽「予防接種」は、「病気にならないようにするための注射や薬」
などと言いかえる例を紹介していました。

また、尊敬語や謙譲語は外国人にわかりにくいとして、「お休みを頂きます」は「休みます」と丁寧語に言いかえ、一文を短くすることが大事だと話していました。

参加した病院の事務長の男性は、「院内で英語や中国語での表記を増やしましたが、さまざまな国の患者が増え最近は多言語化の対応が追いつかないので、病院で活用していきたい」と話していました。

また、ケアマネージャーの女性は、「初めて『やさしい日本語』を知りました。外国人だけでなく、高齢者にとってもわかりやすい話し方だと思うので、取り組みを広めていきたい」と話していました。

専門家 言葉の使い方ひとつで暮らしやすさ大きく変わる

「やさしい日本語」の普及に取り組んでいる専門家は、言葉の使い方ひとつで外国の人の暮らしやすさが大きく変わると指摘しています。

順天堂大学医学部の武田裕子教授は、言葉が命に関わる医療現場に「やさしい日本語」を普及しようと動画を制作していて、25日、公開した動画では、病院で外国人の患者とやりとりする際の会話が示されています。

武田教授は、「実際には英語よりも日本語で暮らしている外国の方が圧倒的に多いという調査結果もある。日本語を母語としない方たちがどんな困難に遭遇しているのか思いを至らせ、ちょっとした言葉かけを変えることで暮らしやすさは格段に変わる。私たちにとっては母語なので新たに単語を覚える必要はなく伝えたいという思いを持って自分の中の言葉の引き出しを探って欲しい」と話していました。