トランプ大統領 大統領選の結果めぐり法廷闘争の可能性に言及

トランプ大統領 大統領選の結果めぐり法廷闘争の可能性に言及
アメリカで連邦最高裁判所判事の死去を受けた後任人事が大きな論争となる中、トランプ大統領は大統領選挙までに後任を決定する必要があるとしたうえで、その理由として選挙結果をめぐり法廷闘争が起きる可能性に言及しました。さらに平和的な政権交代に応じるかは明確に約束せず、混乱への懸念が強まっています。
アメリカでは、連邦最高裁判所のリベラル派のギンズバーグ判事の死去を受け、トランプ大統領が26日に保守派の判事を指名する考えを示し、これに野党・民主党が反発して大きな論争となっています。

これについてトランプ大統領は23日、後任の判事は大統領選挙までに就任する必要があるとしたうえで、その理由として「大統領選挙の結果が連邦最高裁判所で争われることになる」と述べ、選挙結果をめぐり法廷闘争が起きる可能性に言及しました。

そのうえで、民主党が新型コロナウイルス対策などで郵便投票の利用を呼びかけていることに対し「民主党は詐欺をたくらんでいて、連邦最高裁で争われることになる」と主張しました。

さらにトランプ大統領はこの後の記者会見で「平和的に政権交代に応じると約束できるか」と問われたのに対し、「何が起きるか見なければならない」と答え、明確に約束しませんでした。

そして改めて郵便投票を持ち出し「私は投票に強い不満がありひどいと思っており、これを取り除けば平和的にできるだろう。ただはっきり言って政権の交代はなく政権の継続になる」と述べました。

これに対し、民主党のバイデン候補は「ここはどこの国なのか。全く理性的でなく、どう言ってよいか分からない」と批判し、議会上院の民主党トップのシューマー院内総務もツイッターで「トランプ大統領、あなたは独裁者ではないし、アメリカはそうなるのを許さない」と反発しました。

またメディアも「大統領は平和的な政権交代を拒んだ」などと伝えていて、選挙をめぐる混乱への懸念が強まっています。

過去にも連邦最高裁に持ち込まれ混乱

アメリカではこれまでも大統領選挙の結果が連邦最高裁判所に持ち込まれ、混乱が起きたことがあります。

裁判で争われたのは、20年前の2000年11月7日に実施された大統領選挙で、当時の民主党のクリントン大統領の後継候補ゴア副大統領と、政権奪還をねらう共和党のブッシュ氏が史上まれにみる大接戦を繰り広げました。

この結果、最終的に勝敗を決める南部フロリダ州でブッシュ氏がゴア氏をわずかな票差で上回ったものの、ゴア陣営が疑問票の数え直しを求めて州の裁判所に訴えを起こし、州の最高裁はこれを認めました。

これに対してブッシュ陣営は首都ワシントンにある連邦最高裁判所に上告し、選挙の投票日から1か月余りがたった12月12日、連邦最高裁は実質的に数え直しに疑義を呈する判断を示しました。

これを受けてゴア氏はその翌日、連邦最高裁の判断を受け入れるとして敗北を宣言し、ブッシュ氏の勝利が決まりました。

専門家は…

アメリカ政治が専門の東京大学の久保文明教授は「トランプ大統領は郵便投票で各州での集計がもつれ、どちらが勝ったのか分からない状態が続いた場合、フロリダ州の集計を巡り連邦最高裁まで争った、2000年のような状況をある程度、想定しているということだ」と述べ、トランプ大統領は選挙結果が連邦最高裁判所に持ち込まれることを、現実的にとらえているという見方を示しました。

そしてトランプ大統領が問題視する郵便投票の影響について「かなり遅れて投票用紙が届き集計が遅れる可能性がある。その意味で、今回の場合はこれまでの選挙になかった不確定要素が多く、紛糾する可能性が高い」としたうえで、2000年の選挙のように最終的な決着が連邦最高裁の判断でつけられる可能性は十分あると指摘しました。

また、トランプ大統領が大統領選挙までに最高裁判事の後任人事を決着させようとしていることについて「今まで保守派が5人、リベラル派が4人だったが、保守派の1人が事案によってはリベラルな判断を下していた。保守派をさらに1人増やすことで、強固にしたいねらいがある。トランプ大統領は大統領選挙で連邦最高裁まで争った場合、保守派6人で判決を出してもらったほうが、自分の当選を確定する上で有利だと考えている」と分析しています。

さらに、2000年の選挙で連邦最高裁が、民主党のゴア陣営の求める疑問票の数え直しに、実質的に疑義を呈する判断を示した際の判事の構成に関して「当時の最高裁も保守派の判事が多数派だった。それがブッシュの勝利という結果につながったことはいえると思う」という見方を示しました。

そして「トランプ大統領としては連邦最高裁で、1人保守派の判事を着実に指名することで、ひろく有権者、とりわけ共和党支持者に自分の実績として、アピールするというのをねらった発言でもあると思う。共和党のなかには、トランプ大統領に批判的でバイデンを支持するという人もいて、やや結束に難があるとみられているが、そうした中で共和党の支持層を固めようというねらいがある」と指摘しました。

また「新型コロナウイルスによって20万人を超える死者がアメリカで出ていて、トランプ大統領への批判が強まっているが、連邦最高裁の判事の問題に有権者の関心を向けることで、選挙を有利に展開したいねらいもあるとみられる」と分析しています。