新型コロナ感染拡大 各国で深刻化する「ごみ問題」

新型コロナ感染拡大 各国で深刻化する「ごみ問題」
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新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、各国で「ごみ問題」が深刻になっています。

中国

中国でも新型コロナウイルスの感染拡大を背景に出前サービスによるプラスチックごみの増加が問題となっています。

中国ではここ数年、レストランの配達専用アプリが次々と誕生するなど出前サービス市場が急成長していましたが、新型コロナウイルスの感染拡大がそれに拍車をかける形となりました。
各料理店は味が落ちないよう料理をそれぞれ別の容器に分けていれるなどさまざまな工夫を凝らしていて、環境NGOの調査によりますと注文1件あたりのプラスチック容器の使用量は平均3.27個だということです。

中国メディアによりますと大手出前アプリのうち1社は先月、1日の注文数が4000万件を超えたと明らかにしていて、NGOの調査に合わせ単純に計算するとこのアプリによる出前だけで1日に少なくとも1億2000万個以上のプラスチック容器が使われていることになります。

プラスチックごみが増え続ける中、中国内陸部の陝西省西安にある中国最大のごみ埋め立て地は2044年まで利用できるよう作られましたが想定より20年以上早く、去年、いっぱいになっていて、プラスチックごみをどう処理するかが問題となっています。

中国では2000年代からレジ袋のポイ捨てが「白色汚染」と呼ばれるなどプラスチックごみが問題となり、▽2008年にはレジ袋を有料化したほか▽2017年には海外から受け入れていたプラスチックごみの輸入を禁止するなど、さまざまな対策を取ってきました。

さらに、中国政府はことし1月、北京や上海などの大都市では▽年末までにスーパーのレジ袋や飲食店でのプラスチック製ストローの利用を禁止するほか、▽2025年までに出前サービスで使われるプラスチック容器を30%減らす方針を明らかにしています。

一方で、プラスチックごみを巡る問題は新型コロナウイルスの感染拡大を背景に深刻化し続けていて、ことしの年末まで残り3か月あまりとなる中、大都市でのレジ袋の禁止などの目標を達成できるかは不透明な状況です。

韓国

新型コロナウイルスの感染が広がる中、韓国ではことしの夏にかけて料理や飲み物の配達サービスの売り上げが大幅に増加するなどした結果、使い捨てのプラスチック容器などのごみも増え問題となっています。

韓国の環境省によりますと、ことし上半期のプラスチックごみの量は、前の年の同じ時期と比べて15.6%増え、平均して1日あたりおよそ850トンが排出されたということです。

韓国ではプラスチックごみの分別が義務づけられていますが、多くが他のゴミと一緒に捨てられたり、中に食べ物や液体が残されたりしているためにリサイクルできず、ごみの総量も増えています。

このため、首都圏にある自治体のうち、少なくとも6割が、ことし埋め立て処分場に出すことができるごみの割り当て量を上回るとみられていて、韓国政府は一部の自治体に対して手数料としてあわせておよそ150億ウォン、日本円にして13億円余りを求めることや、5日間ごみの受け入れを制限することを決めるなど、対応に追われています。

また韓国政府は、できるだけ多くのプラスチックごみをリサイクルに回してごみの総量を減らせるよう、全国の集合住宅のごみの集積所に分別方法を助言する指導員、およそ1万人をことし12月にかけて派遣することも決めています。

ごみの集積所では、指導員が▽ペットボトルのラベルをはがしたり、▽住民に使い捨ての容器を洗うように促したりするなど、地道な取り組みが行われていました。

さらに韓国政府は、来年2月までごみの中からリサイクルできるものを選別する業者への支援金を増やすことにしていて、ゴミの削減に向けた模索を続けています。

タイ

東南アジアのタイでは、SNSに投稿されたある動画がきっかけでプラスチックごみの急増が問題視されるようになりました。

ことし5月、日本からタイに帰国した後指定された施設で2週間の隔離措置に入っていた男性が撮影したもので、部屋に運ばれた飲料水や弁当に使われた大量のプラスチック容器が背丈ほどの高さに積み上げられました。

動画を投稿した男性は、「このプラスチックごみは私だけではなく、施設にいる全員が出しています。2週間でどれほどのごみの量になるか、想像してほしかったのです」と話していました。

タイではプラスチックごみ削減の一環として、ことし1月から大手スーパーなどが無料のレジ袋の提供をやめたばかりでした。

しかし、新型コロナウイルスの影響で外出を自粛して食べ物や飲み物の配達を利用する人が多くなったこともあって、タイ政府によりますと、首都バンコクでは新型コロナウイルス対策の導入以降、1か月あたりのプラスチックごみの量は去年の同じ月と比べて最大で60%増えているということです。

さらに、新たな対応が求められているのがウイルスが付着している可能性があるマスクなどの廃棄物の処理です。

タイでは、感染拡大を受けてショッピングセンターなど公共施設の至るところに使用済みのマスクを入れる専用のごみ箱が設置されました。

マスクを捨てにきた女性は「マスクを使う私たちにも、ごみを回収する人にとっても、感染のリスクを減らすよいやり方だと思います」と話していました。

回収された使用済みマスクは、ウイルスが付着している可能性がある医療廃棄物とともに専門の処理施設に集められ、外部に排出される煙を極力抑え込んだ焼却施設で通常よりも高温で焼却処理されています。

こうした廃棄物を安全に回収し処理するため、携帯電話のアプリを使って廃棄物の量と場所の情報を共有する取り組みも試験的に始まっています。

公衆衛生学が専門のメーファールアン大学のスィタン・コンクラトーク研究員は、「こうした廃棄物がどこにどれだけあるかという情報が重要で、それによって、安全な処理や廃棄方法を決めることができる」と指摘しています。

専門家「メーカー側の協力が必要」

廃棄物の対策に詳しい京都大学の高岡昌輝教授は「新型コロナウイルスの影響で、日本国内でも容器や包装のプラスチックごみが例年より10%から16%ほど増えているという報告がある。一時的には致し方ないと思うが、今後の方向性としてはできる限りプラスチックごみを減らしたうえで、ほかの素材に代替できるものは環境負荷が低いものに切り替えていかざるを得ないと思う」と指摘しています。

その上で、「プラスチック製品を作るメーカー側の協力が必要で消費者だけで対処できる問題ではない。プラスチックは生活に根づいており、すべてが置き換わるのはなかなか難しいと思うが、新型コロナウイルスはこの問題を考えるひとつの契機になっている」と話しています。