“大会を安全に編成できる” バッハ会長 東京五輪開催に自信

“大会を安全に編成できる” バッハ会長 東京五輪開催に自信
IOC=国際オリンピック委員会のバッハ会長が選手や関係者にあてたメッセージを公開し、新型コロナウイルスの影響下でもいくつものスポーツ大会が再開されていることなどに触れ、東京オリンピックの開催に自信を示しました。
IOCのバッハ会長は選手やIOC委員、それにすべての関係者に「オリンピズムとコロナ」というタイトルのメッセージを送り、22日、その内容がホームページで公開されました。

この中でバッハ会長は、夏以降、屋外競技を中心にいくつもの国際的なスポーツ大会が再開していることに触れ、「選手や競技団体だけでなく一般の人たちが、スポーツが生活に不可欠な一部として復活することを強く望んでいるのは明らかだ」と述べ、社会におけるスポーツの役割の大きさを強調しました。
さらに、延期された東京オリンピックについて、バッハ会長はウイルスの検査技術やワクチンの開発が各国で進んでいる現状を踏まえ、実用可能になったことを想定して大会運営に活用することがシナリオの1つとして加わったことを明らかにしました。

バッハ会長はこれまで、すべての関係者にとって安全な環境が開催の条件とする見解を繰り返してきました。

今回のメッセージの中で、「ウイルスによる制限があるなかでも大会を安全に編成できることがわかってきた。東京オリンピックを含む今後の大会への準備に自信を与えるはずだ」と述べ、来年の東京大会の開催に自信を示しました。

小池都知事「心強く思う」

東京都の小池知事は、IOC=国際オリンピック委員会のバッハ会長が東京オリンピックの開催に自信を示したことについて、23日、都庁で記者団に対し、「スポーツを安全に行うということに対してポジティブに受け止めていらっしゃることを心強く思っている」と述べました。

そのうえで、「いろいろなスポーツイベントなども開かれつつあるが、さまざま工夫をしながらいろんな知見を重ねていくことも重要だ」と述べ、大会の開催に改めて意欲を示しました。

加藤官房長官「緊密に連携し大会実現を」

IOC=国際オリンピック委員会のバッハ会長が東京オリンピックの開催に自信を示したことに関連し、加藤官房長官はIOCなどと緊密に連携しながら、アスリートや観客にとって安心・安全な大会を実現できるよう努力する考えを示しました。

IOCのバッハ会長は選手や関係者にあてたメッセージを公開し、新型コロナウイルスの影響下でもいくつものスポーツ大会が再開されていることなどに触れ、東京オリンピックの開催に自信を示しました。

これに関連し加藤官房長官は23日午前の記者会見で、日本政府に対し直接、メッセージなどは届いていないとしたうえで「政府としてはアスリートや観客にとって、安心・安全な大会の実現に向けて、IOC、大会組織委員会、東京都などと緊密に連携して準備を進め、大会を実現できるよう努力したい」と述べました。

スポーツの国際大会は再開の動きも

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、国を越えて選手が集まるスポーツの国際大会は中止や延期が相次いでいましたが、無観客などの対応をとって再開する動きが見られ始めています。

このうち、テニスは先月から男女ともにツアー大会が再開されているほか、四大大会の全米オープンなども開催されています。

ゴルフも男子の全米プロ選手権や女子の全英女子オープンなど、海外メジャーの大会が相次いで再開しています。

トライアスロンでは今月、ドイツでオリンピック競技では感染拡大後初めてとなる世界選手権が開かれました。

また、陸上は世界陸連の最高峰の大会「ダイヤモンドリーグ」が、当初の予定よりも4か月遅れで先月再開されました。

来月にはトップ選手が集まりロンドンマラソンが行われます。

バドミントンは来月行われる予定だった国や地域対抗の国際団体戦に参加の辞退が相次ぎ、来年以降に延期されましたが、個人戦のデンマークオープンは来月の開催が決まり、日本も参加する予定です。

競泳は来月から国際リーグが始まる予定で、12月には東京で決勝大会を開く方向で調整が行われています。

一方で、柔道は12月に東京で開催される予定だった国際大会が中止されたほか、障害がある選手が出場するパラリンピックの競技も、車いすテニス以外のほとんどは国際大会の再開の見通しは立っていないなど、競技によって対応が分かれています。

JOC山下会長「バッハ会長と認識は同じだ」

IOC=国際オリンピック委員会のバッハ会長が、新型コロナウイルスの影響を受ける中でも、東京オリンピックの開催に自信を示したことについて、JOC=日本オリンピック委員会の山下泰裕会長は「基本的な認識は同じだ」と述べ歓迎しました。

就任から1年余りがたったJOCの山下会長は、23日から2か月に1回程度、定例の記者会見を開くことにしています。

このなかで山下会長はいくつものスポーツ大会が再開されていることなどを前提に、IOCのバッハ会長が東京大会の開催に自信を示したことについて「基本的な認識は同じだ。東京大会は、安心、安全を確保したうえで、開催するんだという思いを強く感じた」と述べ、歓迎しました。

そのうえで、東京大会やその先に行われる冬の北京大会に向けて「先が見えにくい状況は多いが、英知を絞れば50年、100年に一度の国家的プロジェクトが従来とは形は違ったとしても安全、安心な形で開催できると思う。
JOCとしても現場の課題をしっかり発信していきたい」と述べました。

一方、東京大会の招致を巡り当時の招致委員会から、シンガポールの会社におよそ2億2000万円が振り込まれたことが、賄賂に当たる疑いがあるとして、フランスの司法当局が捜査している問題について「捜査の推移を見守りたい。2016年に設置したJOCの調査チームは正当な手続きにのっとって調査したと認識している」と述べ、JOCとして再調査する考えはないことを明らかにしました。

この時期にメッセージを公開した背景

バッハ会長が、この時期に東京オリンピックの開催に自信を示す内容のメッセージを公開した背景には、今後相次いで予定されている東京オリンピックの調整委員会や大会関係者との会合を前に、大会の開催を前提に準備を進めているとする、IOCのスタンスを改めて明確にするねらいがあるとみられます。

24日から2日間、東京オリンピックの準備状況を確認するIOC調整委員会と大会組織委員会との会議が、オンラインで開かれます。

通常、年に2回、開催都市で開かれる会議で、東京大会が延期となったことから春に予定されていた会議は中止となりましたが、去年11月の会議ではマラソンの札幌開催の方針が決まるなど、東京大会に関する重要事項が話し合われます。

今回は新型コロナウイルスの感染防止策や大会の簡素化案について、議論が深められる予定です。

また、バッハ会長は、来月初旬にIOC委員や東京大会で実施される、各国際競技団体の会長たちとの非公式のオンライン会談を予定しています。

東京大会を巡っては新型コロナウイルスの感染拡大で、開催自体を疑問視する声もあるなか、一連の重要な会合を前に、バッハ会長がみずからのことばで東京オリンピックの開催に自信を示すことで、安全を確保しながら大会の開催を前提に準備を進めているとする、IOCのスタンスを改めて明確にするとともに、一連の議論の前提とするねらいがあるとみられます。