タイ バンコクで反政府デモ 憲法改正や王制改革など訴え

タイ バンコクで反政府デモ 憲法改正や王制改革など訴え
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反政府デモが続いているタイで、プラユット政権が発足して以来、最大規模になるとみられる抗議デモが首都バンコクで始まり、若者たちが、憲法の改正や王制改革などを訴えました。
タイでは、軍事クーデターを主導したプラユット首相が去年の総選挙の後も引き続き政権を率いて、軍の影響力を背景に強権的な姿勢をとっているとして、若者たちが反政府デモを続けていて、国王が現政権を追認しているなどと批判して王制改革まで訴えています。
若者たちは、19日、首都バンコクにあるタマサート大学の敷地内にゲートを壊して突入し、大学の運動場やその周辺で、プラユット政権の発足以来、最大規模になるとみられる抗議デモを行いました。

主催したグループの若者らは、「プラユット首相は退陣しろ」とか、海外の滞在が長い国王について「どうしてタイにいないのだ」などと訴え、軍が政治に関与しやすくなっている憲法の改正や議会の解散、それに王制改革などを訴えました。

参加した人は、「この国は、貧しい人だけが法律によって取り締まられ、金持ちは見逃されるという不正義がある」とか「この国は後退しているので再び前に進み出すよう変化を望んでいる」などと話していました。

今回のデモは、大学生や高校生など若者を中心に5万人を超える人が参加するとみられていて、19日夜遅くまで集会を行った後、20日早朝に、政府の施設などに向かって行進し、要望書を手渡すとしています。

これに対し、プラユット政権は、およそ1万人の警察官を配置して政府の施設の警備にあたらせるほか、軍にも出動の準備を命じるなど、デモ隊の行動に警戒を強めています。

タブーとされてきた「王制改革」要求も

今回の反政府デモでは、これまで議論することさえタブーとされてきた王制改革の要求が公然と唱えられるようになっています。

背景にあるのが、4年前にプミポン前国王が亡くなり、現在のワチラロンコン国王が即位したあとの王室に対する国民の意識の変化です。

特にSNS上では、国王の権限が強化されたことなどに疑問を投げかける投稿がさかんに行われるようになり、先月からは集会やデモで王制改革を求める声が上がるようになりました。

このうち、タマサート大学の学生グループは、▽国王に対する批判などを禁じた憲法の条項の撤廃や、▽国王を中傷した場合、最長で禁錮15年の刑が科される不敬罪の廃止など10の要求項目を掲げ、政府や議会に対し実施や検討を求めています。

学生グループは、こうした法律は表現の自由を侵しているうえ、政権側が反政府運動の取締りに恣意的(しいてき)に利用しているとして、真の民主化を妨げていると主張しています。

また、▽日本円にして数兆円とされる王室の財産については政府と国王個人が管理するものを明確に仕分け、▽政府が配分している王室関連予算を国の財政状況に従って減らすよう求めています。

このほか、▽国王が公の場で政治的な意見を述べることやクーデターを承認することを禁止すべきだとする項目が盛り込まれています。

政権側や王室支持派は

若者たちが求めている王制改革について、プラユット政権は消極的で、王室への批判に対しては断固たる措置をとる姿勢を崩していません。

また、王室を擁護するグループが王室への批判は絶対に許さないとして若者たちを非難する集会を各地で開くなど、国民の分断が深まっています。

一方でプラユット政権は、憲法の改正については前向きな姿勢を示していて、国会で本格的に議論を始めようとしています。

ただ、憲法改正には複雑な手続きがあり、4、5年はかかるとの指摘もあることから、若者たちの間では、憲法改正の議論は単なる懐柔策で、時間稼ぎにすぎないという見方が広がっています。

さらに若者たちの間では、政権の今後の出方に危機感が広がっていて、プラユット政権が国王への忠誠を示すために王制改革を求める動きを武力で鎮圧に乗り出すのではないかと懸念する声も上がっています。

また、プラユット政権が発足以来最大の危機を迎える中で、軍が秩序を回復するという目的で再び軍事クーデターを起こすのではないかという見方も若者たちの間で根強くあります。

タイ経済悪化で閉塞感強まる

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、タイの経済が急速に悪化していることも人々の閉塞感に拍車をかけています。

タイのことし4月から6月までのGDP=国内総生産の伸び率は、去年の同じ時期と比べて実質でマイナス12.2%と、アジア通貨危機の影響を受けた1998年の第2四半期以来、22年ぶりの落ち込みとなりました。政府は年間のGDPもマイナス7.5%程度と、アジア通貨危機以来の厳しい見通しを示しています。

タイは日系の自動車メーカー各社が生産拠点を置くなど、輸出産業が経済のけん引役ですが、こうした輸出産業の落ち込みや、外国人旅行者が入国できなくなったことによる観光業への深刻な打撃が景気や雇用の悪化につながっています。

タイの失業率は2%近くに上昇し、11年ぶりの高い水準となっているうえ、統計に含まれない日雇い労働者などを考慮すれば、雇用情勢はさらに厳しいとみられます。

タイの産業界は、ことし上半期だけで輸出産業や観光業を中心に250万人の雇用が失われたとしていて、有効な対策が実行されなければ雇用情勢はさらに悪化しかねないとして、政府に迅速な対応を求めています。

タイは、都市部と農村部の経済格差が大きいとされ、上位20%の所得層と貧しい農家など下位20%の所得格差は10倍以上に上るという調査もあります。

農村部からバンコクなどへの出稼ぎで家族の生活費を賄う人も多く、景気や雇用の悪化はこうした人々の暮らしを直撃し、人々の不満が高まる要因ともなっています。