シャインマスカットが狙われる!~相次ぐ高級ぶどう盗難の訳~

シャインマスカットが狙われる!~相次ぐ高級ぶどう盗難の訳~
皮ごと食べられて、さわやかな甘さが人気の高級ぶどう「シャインマスカット」。旬を迎え、まさに出荷しようとしたその矢先に盗まれる被害が相次いでいます。シャインマスカットは一体どこへ消えてしまったのでしょうか。(ネットワーク報道部記者 大石理恵 馬渕安代 小倉真依/前橋放送局記者 岩澤歩加)

防犯カメラが捉えた不審な人物

8月24日、群馬県太田市の農園で、シャインマスカットおよそ50房が枝からとられてなくなっているのが見つかりました。枝にはハサミで切り取られたような跡が。
そのわずか6日前、この農園の防犯カメラにこんな映像が記録されていました。フード付きの服を着ているようにみえる不審な人物が畑に出入りする様子が写っています。

これは別の品種のぶどう畑に設置したカメラの映像で、6房か7房が盗まれたとみられるということです。
心を込めて育ててきたぶどうを収穫前に相次いで盗まれた生産者は。
中里陽介さん
「ぶどうは1日2日でなるわけではなく、時間をかけてつくっています。簡単にたった1日で持っていかれて、怒りがこみ上げます」

4万2000円相当が

一方、床にシャインマスカットなどがずらりと並べられたこの場所、販売店ではなく警察署の道場です。

9日、長野県須坂市のぶどう畑からシャインマスカット22房を含む31房のぶどう、およそ4万2000円相当を盗んだ疑いで新潟県の68歳の男が逮捕されました。

このほか、山梨市のぶどう畑でも、8月、シャインマスカットおよそ50房が盗まれていて、収穫を迎えるこの時期、各地で被害が相次いでいます。

シャインマスカットなぜ狙われる

市場関係者によりますと、シャインマスカットは平成19年頃から市場に出回り始め、高い糖度や皮ごと食べられる手軽さ、それに見栄えの良さが受けて一躍人気となりました。

生産量が増えるにつれて価格は少しずつ落ち着いてきましたが、それでも高値で推移しています。東京都中央卸売市場ではことし7月の平均価格は、1キロあたりおよそ3500円と、ほかのぶどうと比べて際立っています。

なぜ、どんな目的で盗難が相次いでいるのか。

農林水産省の担当者は、犯人が見つかる例が少なく、実態は分からないと断ったうえで、次のように分析しています。
農林水産省園芸作物課の担当者
「盗んだのが少量であれば個人での消費というのも考えられなくもないが、大量に盗まれるケースでは、売りさばく目的だと考えられる。シャインマスカットは巨峰などほかのぶどうと比べ実が落ちにくく、商品価値を保ちやすく売りやすい側面もあるのではないか」
また果物の流通に詳しい専門家にも話を聞きました。
大泉一貫名誉教授
「シャインマスカットは単価が高いうえ、どこに出品しても人気がある。一般論としては売りさばく目的で盗んだのだと考えられる。ただ、果物は日持ちがしないので扱いが難しく、すぐに売りさばかないと価値がなくなる。その点、最近はインターネットで売り買いするサイトやアプリが整備され、個人でも簡単に販売しやすい環境になっているのでさばきやすいのではないか」

SNS発信に落とし穴?対策は?

どのような状況で盗難被害にあってしまうのか。ぶどうや桃を盗まれたことがある果樹園では、みずからの体験をもとに、SNSの情報発信に落とし穴があるのではないかと指摘しています。

この果樹園は、ホームページでこんなエピソードを紹介しています。
「前日に『梨の○○、ブドウの○○が明日から収穫始まります!』とSNSへ投稿したところ、翌日にはその品種が盗まれていました」
夜中に収穫予定を投稿したところ、翌日、畑に出るまでの間に、まさにその品種が盗まれてしまったといいます。

この果樹園では販売促進のツールとしてSNSを積極的に活用していて、これまで、新規の客を2割から3割ほど多く獲得することにつなげられたといいます。

しかし、SNSへの投稿を見た何者かがタイミングをはかって盗みに入ったとみられることからことしは収穫予定の投稿を控えているということです。
この果樹園では、あわせて、ハード面での盗難対策も進めていて、ことしから人などの動きを感知して点灯や撮影を行うライトやカメラを設置しました。ことしは、いまのところ被害にはあっていないということですが、各地で相次ぐ盗難に心を痛めています。
果樹園の男性
「果物は1年に1回しか収穫できないので、手間をかけて育ててきた果物が盗まれると経営を圧迫してしまう。また、期待して待ってくれていたお客さんのもとにも商品が届けられなくなってしまうので、盗難は悲しいし憤りを感じる」
さらに、生産のプロから見て、盗まれた果物はベストの状態ではないことを広く知ってほしいと訴えています。
果樹園の男性
「農家は果物の状態を一つ一つ見ながら適した時期に収穫しているが、犯人たちは一気に盗むため、なかには未熟な状態の果物が混ざっている。まずいものが多く含まれていることを知ってもらえれば、横流し販売の買い手が控えるようになり、そうなれば盗む人も減るのではないかと思う」

消費者も関心を

農林水産省が行った平成30年度の調査では、盗難の被害にあった農作物は桃、ぶどう、キャベツ、はくさい、りんご、さくらんぼ、いちごなど。シャインマスカットだけではなくさまざまな種類の農作物が被害にあっています。

さらに、解決に至らないケースも多く、生産者が対策をとってもなかなか被害がなくならない現状があります。

今回の取材を通して、生産者の人たちが「おいしいものを届けたい」といかに時間と手間をかけて、農作物を大切に育てているのか、あらためて知ることができました。それだけに、農作物の盗難をどうするか、生産者の人たちだけの課題ととらえるのではなく、私たちも関心を寄せ続けたいと思います。