台風10号 みんなの備えを振り返ってみた

台風10号 みんなの備えを振り返ってみた
最大級の警戒が呼びかけられた台風10号。九州を中心に死者や行方不明者が出たほか、建物の被害も相次ぎました。ネット上では、これまで何度も強い台風を経験している九州地方の人たちからも「初めて真剣に備えた」という声が聞かれました。
一方、被害の爪痕ばかりを報道するのではなく、「何をしたおかげで被害を防ぐことができたのか」という点もしっかり伝えるべきだという指摘も。次の台風に備えて今回の経験を振り返り、実際に行動してよかったことなどを聞いてみました。(ネットワーク報道部記者 大石理恵 國仲真一郎)

“備えよ常に”

台風10号が日本から離れたあと、SNS上では、備えることの大切さを伝える声が広がりました。
「今回は家を守る準備行動を初めて能動的に取った。あらかじめの備えを今後は大事にして行こう」

「いろんな被害を想定して早めに動いてよかった。『備えよ常に』の精神は大事だなと。落ち着いたら防災グッズ見直そう」

「台風は何度も体験してるけど、今回、初めて窓ガラスに養生テープ貼ったり避難もした。非常食も役にたった。うちは大きな被害がなかったけど備えていてよかった」

「安心感が違いました」

九州や中国地方を中心に相次いだ停電。はじめて停電に備えた対策をとった人もいます。
「息子と停電対策のために凍らせたペットボトルの水をラインで見せ合う」
投稿した山口県下関市に住むかずこさんに話を聞きました。これまで災害に備える意識は薄かったということですが、今回の台風で意識が変わったといいます。
かずこさん
「過去に例を見ないほど大きくて強い勢力だと聞いたので、怖くなってちゃんと準備をしようと」
まずハザードマップで自宅周辺に浸水の危険がないことを確認しました。

また、過去に停電が長引いて苦労した経験を思い出したかずこさん。家族3人分の水や懐中電灯、料理用のガスボンベを用意したほか、自宅にあった10本ほどのペットボトルに水を入れ、冷凍庫で凍らせておきました。
停電しても凍らせたペットボトルがあれば、しばらくは冷蔵庫の機能を保つことができると考えたからです。

台風が接近した今月6日の深夜。かずこさんの自宅は半日にわたって停電し、備えが実を結んだということです。
かずこさん
「しっかり準備していたので、過去の台風の時とは安心感がまったく違いました。幸い大きな被害はありませんでしたが、次に台風が来たときも、同じように備えたいです」

養生テープ どなたでもどうぞ

SNS上で特に多くみられた投稿は、窓ガラスが割れた時に破片が飛び散らないよう、窓ガラスに養生テープを貼る対策でした。
養生テープは、各地の住宅や店舗、市役所などさまざまな建物のガラスにも貼られていました。

地域の人たちに無償でテープを配った会社もあります。
長崎市にある「中村塗装」は台風が近づいた今月5日、倉庫に保管していた養生テープや粘着テープを段ボール箱に入れて事務所に並べ、SNSで次のように呼びかけました。
「受け取りに来られる方ならどなたでも」
すると、10分後にはテープが欲しいという人たちが次々と会社を訪れたそうです。
中村専務
「台風の前にホームセンターに行ったら養生テープが不足していて『うちにいっぱいあるのになぁ』と思いました。確認したら倉庫に10箱あったので、少しは提供しても仕事に支障はないと思って提供を決めました」
「子どもから聞いてきた」という高齢者や、幼稚園の関係者なども会社を訪れ、2日間で、およそ450個の養生テープなどを提供したということです。

中村さんが地域の人たちにテープを提供しようと思いついたきっかけは、新型コロナウイルスの感染拡大で全国的にマスクが不足したことでした。
中村専務
「うちは塗装業者なので、優先的にマスクを入手できていたのですが、どうして一般の家庭に行き渡らないのか、ずっと気にかかっていました。あの経験を踏まえてまわりの人たちに少しでも貢献したいという思いが今回の判断につながりました」
個人の備えを地域の事業所などが後押しする動きは、ほかの地域でも見られました。

マイカーの避難 注意点も

台風が九州本土に近づきつつあった今月5日。過去に浸水被害に見舞われた鹿児島市では、中心部にあるパチンコ店が地域の人たちに立体駐車場を開放しました。

SNSで周知すると、浸水の被害から車を守ろうと大勢の人が集まり、1日もたたないうちに275台を収容できる駐車場は満車になったということです。
鹿児島市は中心部の多くが浸水想定区域に指定されているため、このパチンコ店は、これまでも台風に備えて立体駐車場を解放してきました。満車になったのは今回が初めてだということです。
樋口マネージャー
「台風10号が『過去最大級』とか『例を見ない強さ』などと伝えられていたため、多くの方が危機感を持ったのではないかと思います。大きな被害は出ませんでしたが、今後も有事に備えて駐車場を開放するなどの対応を取りたいです」
台風10号では、気象庁による異例の呼びかけや報道で繰り返し危険性が伝えられたこともあり、これまでの台風以上に備えを急ぐ人が増えたのかもしれません。ただ、車を避難させる際の注意点もあるそうです。

京都大学防災研究所の矢守克也教授に聞きました。
矢守教授
「立体駐車場などの高い場所に大切な車を避難させるのは有効です。避難のタイミングを一律に言うのは難しいですが、台風の接近による影響が色濃くなる前に、暴風警報が出る前に避難することが大事だと思います」

ひとつひとつの積み重ねで

台風10号の被災地では、いまも被害を受けた住宅の片付けに追われている人たちもいます。矢守教授は、台風10号のような勢力の台風が今後も繰り返し発生する恐れがあるとして注意を呼びかけています。
矢守教授
「今回のような非常に大きな台風が今後も、日本に接近・上陸する可能性は高いです。今回、多くの地域で見られたように家の中で安全で快適に過ごせるような工夫、広域避難やホテルへの避難、さらに交通機関による計画運休など、個人や企業によるひとつひとつの対応の積み重ねによって被害を小さくすることはできると思います。次の台風が来たときも今回の経験を生かして万全の備えをしてほしいと思います」