新型コロナ影響で倒産500社 関東地方の企業が4割近く占める

新型コロナ影響で倒産500社 関東地方の企業が4割近く占める
新型コロナウイルスの影響で倒産に追い込まれる企業が相次いでいます。

民間の信用調査会社、帝国データバンクによりますと、破産などの法的手続きをとって倒産した企業と、事業を停止して法的整理の準備に入った企業は、ことし2月から9月8日までの累計で、500社に達しました。

このうち、関東地方の1都6県の企業が全体の4割近くを占め、業種別では、「飲食店」と「ホテル・旅館」などが多くなっています。

飲食店倒産の現場は

倒産した会社は今どうなっているのか。

今月3日、別の調査会社、東京商工リサーチの調査員とともに、倒産した都内の飲食店の跡地を訪れました。

このうち、港区のオフィス街にある居酒屋はもともと近隣の店との競争が激しく業績不振が続いていたところに新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛の影響で売り上げが急激に落ち込みました。

このため3月中旬に店を閉め、4月に裁判所から破産手続きの開始決定を受けたということです。

すでに看板が外され、人の姿はありませんでしたが、店内には、まだ荷物などが残されていました。

また、古書店街がある東京神保町におととしオープンしたイタリアンレストランは、ほかの飲食店との競争が激しかったうえ、初期投資の負担が重く余裕のない経営が続いていました。

そうした中、感染拡大の影響で来店客が激減して売り上げが大きく落ち込んだため、ことし4月上旬に事業の継続を断念し、6月に裁判所に破産を申請しました。負債総額は1億5800万円でした。

店があった場所はすでに空き店舗となっていました。

東京商工リサーチ情報部の後藤賢治課長は「厳しい資金繰りでギリギリで経営している小さい飲食店が多く、もろに影響を受けて倒産するケースが続出している。いまは国や金融機関の支援で何とか事業を存続できている企業も多いが、今後支援が途絶えれば経営破綻する企業の数は急激に増える可能性がある」と話していました。

中小企業30万社超が廃業の危機か

一方、倒産だけではなく、今後は、中小企業の廃業が増えるおそれがあり、地域経済への影響が懸念されると指摘されています。

東京商工リサーチが、ことし7月から8月にかけて全国の中小企業およそ9600社を対象に行ったアンケートによりますと、「コロナ禍の収束が長引いた場合廃業を検討する可能性がある」と回答した企業は8.5%でした。

調査会社によりますと、中小企業は全国におよそ358万社あり、単純計算で30万社を超える中小企業が廃業の危機にひんしていることを示していると分析しています。

東京商工リサーチ情報部の後藤賢治課長は「経営者が事業を続けていこうという意欲が薄れていることを危惧している。新型コロナの影響が長期化したり支援が止まったりすれば、そのまま廃業や倒産する企業が増えてくる可能性がある。国や金融機関の継続的な支援がなければ、事業を続けるのは難しい状況だ」と話しています。

みずから廃業したホテルも

新型コロナウイルスの影響で倒産する企業が相次ぐ一方、売り上げの激減で事業の継続は難しいと判断し、みずから廃業したホテルもあります。

千葉県船橋市の中心部に位置し、長年親しまれてきた「船橋グランドホテル」は先月末に閉館しました。

昭和59年の開業以来、ビジネス客などの宿泊に加え、結婚式や政治家のパーティーなどの会場に利用され、地元で「街の顔」として広く親しまれてきました。

しかし、新型コロナウイルスの影響でことし2月下旬ごろから宿泊客が減少し、売り上げが例年のわずか5%にまで落ち込むなどして資金繰りが厳しくなりました。

このため従業員92人の退職金に充てる資金が確保できるうちに閉館し、廃業することを決めたということです。

最終日のホテルは、別れを惜しむ人たちでにぎわっていました。

近くに住む54歳の男性は、老後、同居するために大阪から呼び寄せ7年前に亡くなった父親がこのホテルのレストランを気に入っていたことから、この日は仕事を休んで父親に思いをはせながら1泊したということです。

男性は「父の思い出の場所なので閉館するのは本当に寂しい」と話していました。

また、船橋市を本拠地とするバスケットボール男子のBリーグの強豪チーム「千葉ジェッツ」は、パーティー会場や対戦チームの宿泊場所として頻繁に利用していたということで、スタッフらがホテルを訪れ支配人に「感謝状」を贈りました。

開業以来、ホテルで働いてきた支配人の鶴巻裕士さんは、「無事、この日を迎えることができて、ほっとしています。感謝の気持ちでいっぱいです」と話していました。

またホテルは今後、売却に向けての交渉や手続きが進められることになるということです。