新型ECMO 医療現場に導入へ 患者や医療従事者の負担軽減期待

新型ECMO 医療現場に導入へ 患者や医療従事者の負担軽減期待
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新型コロナウイルスで最も重症になった患者に対する治療の最後のとりでとも言われる人工心肺装置「ECMO」について、血の塊、血栓ができにくくするなど、改良した装置を国立循環器病研究センターが開発し、今後、医療現場で使われることになりました。
装置を交換する必要がなくなり、患者や医療従事者への負担を軽減できると期待されています。
装置を開発したのは、大阪 吹田市にある国立循環器病研究センターのグループです。

ECMOは、患者の体内から取り出した血液に直接酸素を送り込むことで、肺の機能を一時的に代行する装置で、新型コロナウイルスに感染し、症状が非常に重くなった患者の治療に使われています。

これまでのECMOは、1週間ごとに装置をすべて交換しなければならないうえ、長時間使うと装置内に血栓ができて詰まるおそれがありました。

新型のECMOは、ポンプの構造を工夫したことで装置の交換が必要なくなったほか、チューブなどに血を固まりにくくする薬を塗ったことで血栓ができにくくなったということです。

センターでは、装置の安全性を確かめる臨床研究として、早ければ来週から、医療現場で使い始めるということで、患者や医療従事者の負担を軽減できると期待されています。

福嶌教偉移植医療部長は「秋から冬にかけて予想される患者の増加の前にここまでこぎつけられてほっとしている。より多くの患者の命を救えればと思う」と話しています。

新型ECMOのメリット

新型のECMOについて、国立循環器病研究センターでは、交換が不要で、装置の中で血の塊、血栓ができにくいのが大きな利点だとしています。

センターによりますと、ECMOを使った治療を受けた新型コロナウイルスの患者は6日までに全国で233人で、このうちおよそ6割にあたる145人は回復に向かい、61人は死亡したということです。

新型コロナウイルスの患者がECMOを使用する期間は、国内では平均で12日間で、これまでの装置では、治療中に1度か2度、装置をすべて交換する必要がありましたが、この際には完全に止めなければならないため、患者の状態が悪化するリスクが非常に高くなるほか、多くの医療スタッフが必要でウイルスに感染するリスクもあります。

新型のECMOはポンプの構造を改良したことで装置の交換が必要なくなり、これまでに実施した試験では、14日間以上連続で使用できた人もいたということです。

また、装置の中にできる血栓についても、チューブやポンプなどに「ヘパリン」という血を固まりにくくする薬などを塗ったことでできにくくなったということです。

センターでは、新型のECMOは患者の症状の悪化のリスクを減らせるほか、医療スタッフの負担の軽減にもつながるとしていて、早ければ来週から東京と大阪の合わせて10の医療機関で使い始めるということです。