コロナ影響 例年と異なる環境で新学期 学校現場は

コロナ影響 例年と異なる環境で新学期 学校現場は
新型コロナウイルスの影響で夏休みが短縮されるなど例年と異なる環境で新学期を迎えた子どもたち、学校現場は異変を見逃さないよう緊張感を高めています。
およそ700人の児童が通う東京・世田谷区の区立下北沢小学校は、1日から2学期が始まりました。

学校には初日から、保護者から欠席や遅刻の連絡が10件以上入り、中には登校を前に頭痛や腹痛を訴えるなど、ストレスが原因とうかがえるケースもあるということです。
毎朝、連絡を受けている副校長は、「新型コロナの影響も続いているうえに、夏休み明けのとても変化がある時期で、気持ちが乗りきらない子どももいると思うので、丁寧に聞くようにしています」と話していました。

教室ではこの日から授業が始まりましたが、全員マスクをつけ、机は均等に距離をあけたり透明のシートで教室を仕切ったりして、1学期に続いて感染対策がとられていました。

コロナ禍での夏休みについて、6年生の男子児童は、「あまり遊べなかったので家でずっとゲームや宿題をしていてつまらなかった。学校が始まってよかったです」と話していたほか、6年生の女子児童は常にマスクが必要な現状について「息苦しかったり友達の声が聞き取れなかったりするから不便です」と話していました。

宿題の絵日記に「なにか足りない」

こうした子どもたちの環境の変化は、宿題の絵日記にも表れていました。

「夏休みの思い出」がテーマの2年生の絵日記には、例年は家族旅行や帰省の様子が目立つということですが、ことしは自宅や近所の公園などで過ごした場面を描いたものがほとんどだといいます。

中には、「コロナでずっと会えなかった友達と公園で遊べて嬉しかった」と記した児童もいたほか、近所のプールに行った日のことを描いた児童は最後に「今年の夏はなにか足りない」とつづっていました。
担任の教員は「子どもたちは元気そうに見えますが、気持ちの中では物足りない部分もあると思う。このあとの学校生活でも制限は多くなりますが、できるかぎりのことはやってあげたい」と話していました。

子どもたちの異変 見逃さない

校内では、大字弘一郎 校長が子どもたちに異変がないか毎日確認して回っていて、保健室では養護教諭から子どもたちの利用が少なくなっていると報告を受けていました。

感染対策のため、緊急時以外は保健室の利用を控えるよう呼びかけていることなどが背景にあるということで、養護教諭は、「これまではオープンな保健室にすることを心がけていたが、今は保健室に来たら感染してしまうのかと心配する子どもも出ているので、すごく難しい。気軽に相談しやすい環境と感染対策を両立していきたい」と話していました。

大字校長は、「ふだんの夏休みと違って子どもたちのリフレッシュができていない。新型コロナの状況の中でことばにできない不安を抱えているおそれがあり、子どもの心に寄り添っていきたい」と話していました。

「#学校ムリでもここあるよ」広がる

夏休み明けにあわせ、学校や家庭以外にも安心して過ごせる場所を提供しようと、「#学校ムリでもここあるよ」と題したキャンペーンが全国で広がりをみせています。

キャンペーンは、夏休み明けに子どもの自殺が増える中、登校が負担となる子どもを支えようと始まったもので、全国のフリースクールや子ども食堂、それに飲食店などおよそ150か所が参加しています。

その1つ、東京・小金井市のカフェには、入り口や店内に「#学校ムリでもここあるよ」という貼り紙が掲示されていて、営業時間に合わせて子どもたちに居場所を提供しています。

店長の嶋岡秀美さんは、みずからも中学生時代に数か月、学校に通いづらくなった経験があるということで、同じ気持ちを持つ子どもたちが社会とのつながりを持てる場を作りたいと参加しました。

ことしはまだ、子どもの利用はないということですが、去年は2人の小学生や親子が日中にカフェを訪れ、キッズスペースで本を読んだり、カフェの手伝いをするなどして過ごしていたということです。

嶋岡さんは、「子どもたちは、学校でも家でも緊張しているかもしれないので、第三の場所があると自分を解放できると思います。コロナで出かけにくくなっているかもしれないですが、気軽に来てもらい、何もしなくてもいい場所としてリラックスして過ごしてほしいです」と話しています。
「#学校ムリでもここあるよ」のキャンペーンは今月12日まで行われるということで、子どもたちが安心して過ごせる居場所や相談場所について特設サイトで紹介しています。

特設サイト「#学校ムリでもここあるよ」
https://cocoaru.org/

「あなたの命がいちばん大事」

「#学校ムリでもここあるよ」のキャンペーンを推進している川崎市のNPO法人「フリースペースたまりば」の西野博之 理事長は、30年以上、不登校の子どもの相談にあたるなど支援に取り組んできました。

西野さんのもとには、8月下旬以降、保護者から「子どもが学校に行きたくないと言っている」といった相談が1日に6、7件寄せられていると言います。

西野さんは、「毎年、長い夏休み明けは特に緊張があって学校に行きたくないという子どもたちが増える。ことしは夏休みが短かったが、新型コロナで日本全国、世界中がストレスが多くたまるような時期だったので、やはり相談は増えています」と話しています。

そのうえで、「学校に行けないというだけで命を絶とうとする子など、いろんなつらさを抱えた子どもたちに出会ったが、救えなかった命もある。子どもたちにはあなたの命がいちばん大事で、いちばん大切なものはあなたが生まれてきたこと、あなたが生きていることなんだよと伝えたい。楽しく行けるなら学校に行ったらいいし、学校に居場所が見つからなかったら、命を削ってまで行く必要はない。世の中には学校以外にも行ける場所、学べる場所は広がってきているので、そういうところに出かけてほしい」と呼びかけています。そして、「子どもは『助けて』と言いだしづらいので、子どものSOSをキャッチしてあげられる大人が地域に広がってほしい」と話しています。

相談窓口は

学校や家がつらくなったり、悩みや不安を感じたら、電話やチャットで気軽に相談できる窓口です。

1人で苦しまず、ぜひ話をしてみてください。

▽「24時間子供SOSダイヤル」
0120-0-78310
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1306988.htm

▽「子どもの人権110番」
0120-007-110
http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken112.html

▽「いのちの電話の相談」
0120-783-556
https://www.inochinodenwa.org/

▽「チャイルドライン」
0120-99-7777
https://childline.or.jp/

▽一般社団法人日本臨床心理士会、
一般社団法人日本公認心理師協会「新型コロナこころの健康相談電話」
050-3628-5672
http://www.jsccp.jp/info/infonews/detail?no=730