低体重の赤ちゃん守る 国内2か所目の母乳バンク開設

低体重の赤ちゃん守る 国内2か所目の母乳バンク開設
低体重で生まれた赤ちゃんの命を守るため、ドナーから集めた母乳を無償で提供する、国内では2か所目の「母乳バンク」が都内に開設されました。
「母乳バンク」は、早産などで1500グラム未満の低体重で生まれた赤ちゃんに対し、母親が母乳を与えられない場合に、ドナーから集めた母乳「ドナーミルク」を医療機関の要請に基づいて提供する施設で、ベビー用品大手の「ピジョン」が中央区にある本社ビルに開設しました。

1日は、ピジョンの北澤憲政社長が、「母乳バンクで救われる小さな命があるので、海外のように普及させたい」とあいさつし、テープカットが行われました。

低体重で生まれた赤ちゃんは、母乳を与えることで重い病気にかかるリスクを減らすことができるとされていますが、国内には母乳バンクが1か所しかなく、施設不足が課題になっていました。

開設された施設には、年間2000リットルの母乳を殺菌処理できる機械や、マイナス30度で保管する冷凍庫などが備えられ、サンプルの母乳を使ってデモンストレーションが行われました。

この母乳バンクでは、年間600人の赤ちゃんにドナーミルクを提供する予定だということです。

ピジョンの手塚麻耶さんは、「長年赤ちゃんに寄り添い続けてきた企業として母乳バンクの理解を広げる活動もしたい」と話していました。

「日本母乳バンク協会」の代表理事で、昭和大学医学部の水野克己教授は、「より多くの赤ちゃんに母乳を届けることができるので本当にありがたい。今後は、母乳を安全に管理できる人材の育成にも力を入れたい」と話していました。

母乳バンクとは

「母乳バンク」は、早産などで、低体重で生まれた赤ちゃんの命と健康を守るための仕組みです。

ドナーから集めた母乳「ドナーミルク」を細菌検査や低温殺菌処理したうえで、冷凍して保管します。

そして、母親が母乳を与えられないなど、医療機関が「ドナーミルク」が必要だと判断した場合、要請に基づいて、赤ちゃんに無償で提供します。

母乳を第三者に提供するには、高い安全性が求められるため、国際的な基準に基づいて運用されドナー登録する人には血液検査を受けてもらうなど、健康状態の確認も行います。

「日本母乳バンク協会」によりますと、現在は、世界の50か国以上に600を超える「母乳バンク」があるということです。

昭和大学江東豊洲病院内に国内初の母乳バンク

国内では、昭和大学医学部の教授で小児科医の水野克己さんが、平成25年に昭和大学江東豊洲病院の一角に初めて「母乳バンク」を開設しました。水野さんは活動を広げるため、平成29年には「日本母乳バンク協会」も設立し、他の施設へのドナーミルクの無償提供も始めました。

母乳で感染症や病気のリスク軽減

なぜ、ドナーミルクが必要なのか。

早産などで、1500グラム未満で生まれる赤ちゃんは、「極低出生体重児」と呼ばれ、感染症や病気にかかるリスクが高いとされています。

母乳はそのリスクを減らす効果があるとされ、生死にかかわる腸の一部が“え死”してしまう病気については、人工ミルクに比べて、発症リスクをおよそ3分の1に低下させられるという研究結果があるということです。

しかし、早産などの場合、母親は体調がすぐれず、母乳が出ないことも少なくないため、ドナーを募って確保しておく必要があるのです。

ドナーミルク 提供できる量に限りが

厚生労働省の「人口動態統計」によりますと、1500グラム未満で生まれる赤ちゃんは、年間およそ7000人いますが、専門家の試算では、このうち3000人がドナーミルクを必要としているということです。

水野さんが開設した病院内の母乳バンクでは、年間およそ100人の赤ちゃんにドナーミルクを届けていますが、処理能力や保管スペースなどを踏まえると、提供できる量には限りがありました。

こうした中、厚生労働省は「母乳バンク」の効果などを検証するため、今年度から3年かけて調査研究を行うことを決めています。

ドナーミルクを利用するNICU=新生児集中治療室が増え、需要が高まる中、安全を確保したうえで、いかに安定的に必要な量を提供できる仕組みをつくれるかが課題となります。

母「本当に感謝しています」提供受けた赤ちゃん 順調に成長

ことし2月に都内の病院でうまれたひよりちゃんは、体重わずか533グラムでした。

母親の理紗子さん(32)に高血圧の症状が出て緊急入院し、帝王切開で予定日より3か月早く出産したためです。

理紗子さんはすぐに母乳をあげることができず、医師の提案を受けて、5日間、ドナーミルクを提供してもらいました。

1週間後に撮影された映像には、ひよりちゃんが綿棒にしみこませた理紗子さんの母乳を、小さな口を懸命に動かして吸う様子が写っています。

ひよりちゃんは4か月間入院したあと無事に退院し、生後半年となる現在は体重が5300グラムを超え、順調に育っています。

最近は、理紗子さんの顔を見て笑ったり、声を出したりするようになり、手足を活発に動かす様子もよく見られるといいます。

理紗子さんは、「うまれた直後は、素直に小さいなと思いました。体が未熟な状態でうまれたので、なかなか呼吸の管が取れなくて、最後まで呼吸が心配でした。ドナーミルクが免疫を促す効果があると説明を受けて、もちろん母乳を出したい、自分の母乳で育てたいと思ったんですが、すぐには出ないと思っていたので、ドナーミルクを使ってくださいとお願いしました。早く産んで小さくうまれて心配なことがいっぱいある中で、栄養をとって大きくなってほしいといういちばん大事なところをサポートしてもらえて、無事に大きく元気に育っているので本当に感謝しています」と話していました。