中国 レジ袋お先に有料化したものの…

中国 レジ袋お先に有料化したものの…
日本ではプラスチックごみの削減を目的に、7月からスーパーなどでのレジ袋の有料化が義務づけられました。実は中国では12年前から有料化されているのですが、今、さまざまな課題が見つかっています。そして、新型コロナウイルスが新たなプラスチックごみの課題も生んでいます。(中国総局記者 吉田稔)

きっかけは「白色汚染」

「袋は必要ですか?」

中国のお店で会計をすると聞かれることばです。日本では始まったばかりのレジ袋有料化ですが、中国では、今から12年も前、2008年6月から実施されています。
きっかけとなったのが、レジ袋のポイ捨て。経済発展に伴ってレジ袋の使用量が急増し、特に1回使うと破れてしまうような薄手の袋が路上に捨てられるのが目につくようになったのです。当時の北京の町なかでは、破れたレジ袋があちこちの吹きだまりに積もり、「白色汚染」とも呼ばれていました。

このため中国政府は、薄手のレジ袋の生産や使用を禁止するとともに、厚めのレジ袋を提供する場合も、有料にするよう命じたのです。

1年後の2009年、中国政府で環境・エネルギー問題などを担当する「発展改革委員会」は、「この1年で全国のスーパーなどでのプラスチック製の袋の使用量は70%近く減った」と発表。成果を誇りました。

10年余を経て実態は

その後の実態はどうなっているのか。実は、地元の環境団体の調査で、2009年当時の政府の発表とは食い違うような状況が浮かび上がってきました。
中国各地の環境団体でつくる「ゼロ廃棄連盟」が、北京や南部の※深セン、東北部の瀋陽など、9都市の1000軒近い商店を対象に調べたところ、レジ袋を有料で提供していたのは、わずか17%にとどまっていたのです(2018年の調査)。(※セン=土偏+川)
実際に私たちが街頭で買い物をしてみても、日用品や簡単な食品を売っている個人商店では、「袋がいるかどうか」を聞くこともなく、レジ袋に商品を入れて手渡してきます。また、北京市内に展開するチェーンの果物店ですいかを購入した際も、「1枚目の袋はサービスだよ」と言って、ただで袋に入れてくれました。中には、「レジ袋は一律有料」という市政府のポスターを軒先に貼っていながらも、袋を無料で渡している店もありました。

こうした実態について、上述の調査に携わった北京の環境団体の幹部、孫敬華さんは、次のように説明します。
孫敬華さん
「店はライバルどうしの関係にあるので、よそが無料で袋を提供するのに、こちらが有料ということになれば客が離れてしまいます。また、大手のスーパーやチェーン店は当局も管理できますが、個人商店までは目が行き届かないのです」

価格や市民意識に課題も

中国の制度には、もう1つ課題もあります。それが価格です。中国のスーパーやコンビニでのレジ袋の価格は、小さいもので0.1人民元(=約1.5円)から、大きいもので0.4人民元(=約6円)程度。

日本と大差ない水準です。価格は、有料化が始まって以来、ほとんど据え置かれたまま。この10年余りの経済成長で、中国では物価も所得も大幅に上昇しています。一方で、レジ袋の価格が据え置かれてきたことで、消費者が袋代に負担を感じなくなっているのです。

買い物客に話を聞いても、「袋を持っていなければ買うしかないけれど、値段はほとんど気にしない」という意見を多く聞きました。

中国の環境団体もこの点を問題視していて、「少なくともレジ袋1枚につき1人民元(=約15円)、つまり今の2倍以上にしなければ効果は生まれない」と分析しています。

新型コロナが生む新たなプラごみ問題

レジ袋の削減が課題を抱える中、中国では今、新型コロナウイルスを背景に新たなプラスチックごみ問題が注目されています。それが、このところ急成長している食品の宅配サービスです。

中国ではこの数年、レストランやスーパーの宅配専用アプリが次々と誕生。アリババなどネット通販大手も参入し、各社がしのぎを削っています。

その傾向に拍車をかけたのが、新型コロナウイルスの感染拡大でした。消費者が外出を控え、レストランなどの実店舗の売り上げは急速に落ち込みました。代わって、宅配サービスの需要が伸びたのです。
今、中国の都市部のオフィス街では、昼時になるとランチの宅配のバイクがビルの入り口に鈴なりになって、注文した人たちと携帯でやりとりをしながら商品を渡す光景が日常の1コマとなっています。

そこで課題となっているのが、料理が入っているプラスチック容器です。各料理店は、味が落ちないよう様々な工夫をしています。例えば麺類だと、麺がのびないよう、麺、スープ、具材をそれぞれ別々の容器に入れます。
中国メディアによると、宅配の注文1件当たりの容器の使用量は平均で3.27個。2017年の時点で中国の大手宅配アプリ3社の1日の注文数が約2000万件。つまり、1日6000万個以上のプラスチック容器が使われていることになります。

容器1つの深さが5センチだとすると、まっすぐ積み上げた場合の高さは3億センチ=300万メートル。世界最高峰のエベレストの、なんと339個分に匹敵する計算です。
環境団体幹部 孫敬華さん
「1品1品を容器や袋に入れるのは、資源の大変な浪費です。レジ袋の有料化が始まった2008年にはこうした宅配サービスの拡大は想定されていませんでした。政府、企業、そして私たち1人1人が、変化していくプラスチックごみの問題に対応し続けなければなりません」

中国政府も対策を強化、実現可能か!?

深刻化するプラスチックごみ問題に、中国政府も対応を強化する構えです。ことし1月、中国政府は、北京や上海などの大都市では、ことしの年末までにスーパーなどで使われるレジ袋の使用を禁止するという方針を打ち出しました。

レジ袋にとどまらず、飲食店でプラスチック製ストローを使用禁止にするほか、2025年までに宅配で使われるプラスチック容器を30%減らすことなども盛り込まれています。

これは新型コロナウイルスの感染拡大が明らかになる前に出された方針ですが、上海などの大都市の中には、7月以降、具体的な実施計画を公表するところも出始めています。ただ、ことしの年末と言うとあと4か月ほどしか残されていませんから、今の状況を見ると「本当に実現可能なのか?」と疑問を感じざるを得ません。

中国では「上に政策あれば下に対策あり」とも言われます。政府が規制や取り締まりを強化しても、人々ははなんとか抜け道を見つけ出す、というような意味です。

中国のプラスチックごみ対策がどこまで実効性をもって進められていくのか、日本のレジ袋有料化の制度の行く末を見るうえでも、今後も注目していく必要があると思います。
中国総局記者
吉田 稔
平成12年入局
経済部で財政・貿易を担当
平成29年より中国総局