豪雨被害の高齢者施設のほとんど 災害リスク指摘の地域に立地

豪雨被害の高齢者施設のほとんど 災害リスク指摘の地域に立地
7月、記録的豪雨が降った九州では、多くの高齢者施設で被害が出ましたが、NHKが立地のデータをもとに分析したところ、ほとんどの施設が、浸水や土砂災害など災害のリスクが指摘されていた地域に立地し、近年建設された施設も多かったことがわかりました。
7月の記録的な豪雨では、入所者14人が犠牲となった熊本県球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」をはじめ、高齢者施設で被害が相次ぎ、厚生労働省によりますと、浸水などの被害が出た高齢者施設は、九州では88に上っています。

NHKは、熊本県と大分県、それに長崎県内の合わせて33の施設について、自治体から施設のデータを入手し、災害のリスクについて分析しました。

その結果、33のうち32施設が洪水の浸水想定区域や土砂災害警戒区域に含まれていました。

また、32施設が開設された時期は、半数の16施設が過去10年以内、3割近い9施設が過去5年以内と、高齢者施設が近年になっても増え続けていたこともわかりました。

浸水リスクエリアで増加高齢者施設

さらに、7月4日から7日にかけて氾濫が発生した九州の1級河川、熊本県の球磨川、福岡県や大分県、佐賀県を流れる筑後川、福岡県を流れる彦山川の流域で同様に調べました。

支流は今回対象になっていません。

浸水想定区域の中にある施設は合わせて255施設に上り、
開設時期を調べると、
▽この10年で新たに開設されたのは、58%にあたる147施設、
▽この5年で新設されたのは、27%にあたる69施設と、
ほぼ同様の傾向が確認できました。

高齢者の避難に詳しい同志社大学の立木茂雄教授は、「土地の安さや利便性が優先され、リスクのある場所に施設の建設が進んできたと言える。立地の規制には時間がかかるかもしれないが、粘り強く進める必要がある」と指摘したうえで、「誰が何をするか、具体的に定めた避難確保計画を作るなど、迅速な避難につなげる取り組みも欠かせない」と話しています。

なぜ災害リスクある地域 高齢者施設増える

なぜ、災害のリスクのある地域に高齢者施設が増えているのか。

今回の豪雨で被災した熊本県八代市のグループホームに話を聞くことができました。

7年前に開設したこの施設は、ハザードマップでは最大3メートル以上の浸水が想定されていて、今回の豪雨では敷地の一部が浸水しました。

川が氾濫したという情報を受けて避難を決断し、利用者およそ40人全員が車で避難しました。

施設長の男性によりますと、この場所に施設を建設するうえでの決め手は、国道や駅の近さなど「立地の利便性」だったと言います。

検討段階では浸水リスクの比較的低い場所もありましたが、対象となる高齢者が住む地域から遠いこともあり、この50年余り大きな浸水被害もなかったことから、現在の場所に決めたということです。

施設長は「ここは国道沿いにあって市街地からも近いことから利用者の家族が面会に来やすく、利便性がよい場所でした。浸水域にあるかどうかは、この場所が浸水したことがなかったのもあって、想定はできていなかったのが実際のところです」と話していました。

今回、利用者全員は無事に避難はできましたが、避難判断のタイミングがぎりぎりになるなど課題もあったことから、より具体的な避難計画の検討を進めています。

施設長は「事前に避難訓練もしていましたが、十分に本番を想定できていなかったところがありました。『想定外』を想定して備えておかなければ、いざというときに思うように動けませんし、避難の判断も難しくなります。利用者の命を守るためにも、避難経路の確認や何を持ち出すのかなど、常に本番を想定して備えることが重要だと改めて感じました」と話していました。

繰り返されてきた施設の被害

水害や土砂災害のリスクのある土地に建てられた高齢者施設や障害者施設が被災するケースは、これまでにも繰り返し発生しています。

11年前の平成21年には、土砂災害警戒区域に建てられていた山口県防府市の特別養護老人ホーム「ライフケア高砂」に土石流が流れ込み、災害関連死を含め、入所する12人が亡くなりました。

また、4年前の平成28年には、川沿いに建っていた岩手県岩泉町の高齢者施設「楽ん楽ん」に台風の大雨で氾濫した川の水が流れ込み、入所する9人が亡くなっています。

そして、去年の台風19号では、浸水想定区域に建っていた埼玉県川越市の特別養護老人ホーム「川越キングス・ガーデン」が水につかり、入所者と職員120人が一時取り残されるなど、全国で少なくとも47の高齢者関係施設で浸水被害が発生しました。

国も立地規制に動き出す

福祉施設で繰り返し被害が起きていることを受け、国も対策に乗り出しています。

都市計画法などを改正し、2年後からは洪水による浸水の「危険区域」を自治体が指定すれば、原則として高齢者施設や障害者施設など福祉施設の建設を禁止することができるようになりました。

このほか、すでにリスクのある場所に建っている福祉施設が移転する場合、費用の補助の増額を決めるなど、移転の促進策も進めています。