安倍首相 正式に辞意表明「負託に自信を持って応えられない」

安倍首相 正式に辞意表明「負託に自信を持って応えられない」
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安倍総理大臣は、記者会見で、持病の潰瘍性大腸炎が再発し、国民の負託に、自信を持って応えられる状態でなくなったとして、総理大臣を辞任する意向を正式に表明しました。
安倍総理大臣は、記者会見で、新型コロナウイルスの今後の対応などを説明したあと、みずからの健康状態に言及しました。

この中で、安倍総理大臣は、「ことし6月の定期検診で持病の潰瘍性大腸炎の再発の兆候がみられると指摘を受け、薬を使いながら全力で職務にあたってきたが、先月中頃から、体調に異変が生じ、体力をかなり消耗する事態となった。今月上旬には、再発が確認された」と明らかにしました。

そして今後の治療について、「現在の薬に加え、さらに新しい薬の投与を受けることにし、今週24日の再検査では、薬の効果は確認されたものの、継続的な処方が必要であり、予断は許さない状況だ」と説明しました。

そのうえで、「政治においては、最も重要なことは結果を出すことだ。病気と治療を抱え、体力が万全でない苦痛の中、大切な政治判断を誤る、結果を出せないことがあってはならない。国民の皆様の負託に、自信を持って応えられる状態でなくなった以上、総理大臣の地位にあり続けるべきではないと判断した。総理大臣の職を辞することとする」と述べ、総理大臣を辞任する意向を正式に表明しました。

また、辞任を決めたタイミングについて、新型コロナウイルスの感染拡大もあり、「悩みに悩んだ」としたうえで、7月以降の感染拡大が減少傾向へと転じたこと、冬を見据えた対策を取りまとめられたことを理由に挙げて、「新体制に移行するには、このタイミングしかない」と説明し、今週24日に、自分1人で判断したことを明らかにしました。

そして、「さまざまな政策が実現途上にあり、コロナ禍の中、職を辞することについて、国民の皆様に、心より、心より、おわび申し上げる」と謝罪したうえで、「拉致問題をこの手で解決できなかったことは痛恨の極みだ。ロシアとの平和条約、憲法改正、志半ばで、職を去ることは断腸の思いだ」と述べました。

一方、安倍総理大臣は、次の総理大臣が任命されるまでの間、職務にあたる考えを示しました。

また、今後の政治活動について、「一議員として活動を続けていきたい。次なる政権に対しても一議員として協力し、支えていきたい」と述べました。

さらに、安倍総理大臣は、次の総理大臣として名前のあがっている人の評価を問われたのに対し、「それぞれ有望な方々であり、内閣や与党で一緒に働いた方々だ。それぞれの政策を競い合う中で、おそらくすばらしい方が決まっていくのだろう。誰がということも、私が申し上げることではないだろう」と述べました。

「政治的空白生み出さないよう このタイミングで辞任」

安倍総理大臣は、記者会見で、「今まで使っている薬に合わせて点滴での処方で、新しい薬を使い、2回目の時の検査で効果が出ているということだった。このままそうした治療を続けながらというのももちろん考えるわけだが、これから9月に人事があり、そして国会を開会をしていくという中で、継続的にずっと間違いなくよくなっていく保証はなく、コロナ禍において政治的空白を生み出さないようにするため、このタイミングで辞任するしかないと判断した」と述べました。

「次の自民党総裁 私が申し上げることではない」

安倍総理大臣は、記者会見で、「次の総裁が決まるまでの任期など考えると、影響を与えないのはこのタイミングしかないと判断したところだ。もちろんこの任にあるかぎり、コロナウイルス対策に責任を持って全力を上げていきたい。幸い、いま新しい薬が効いているので、しっかりと務めていきたい。次の自民党総裁をどのように選出するかは、執行部にお任せしているので私が申し上げることではないと思うし、誰がということも、私が申し上げることではないだろう」と述べました。

「憲法改正 党として約束」

憲法改正について、「憲法改正4項目の案については党で決めたことであり、誰が総裁になっても、党として約束していることなので、取り組んでいくのだと思う」と述べました。

「レガシーは国民や歴史が判断」

政権の実績について、「レガシーは国民や歴史が判断していくことだ」と述べました。

そのうえで「7年8か月前に政権が発足した際に『東北の復興なくして日本の再生なし』、『東北の復興に全力を挙げる』と申し上げ取り組んできた。また、働く場を作ることを大きな政策課題として掲げて20年続いたデフレに3本の矢で挑み400万人をこえる雇用を作り出すことができた。成長の果実を生かして保育の拡充、幼児教育と保育の無償化、高等教育の無償化、そして、働き方改革や、一億総活躍社会へ向けて大きく一歩踏み出すことができたと思っている」と述べました。

また、外交安全保障について「集団的自衛権にかかる平和安全法制を制定し、助け合う日米同盟は強固なものとなり、アメリカ大統領の広島訪問が実現できた。日米同盟を基軸として地球儀をふかんする外交を展開する中で、日本が中心となって自由で公正な経済圏を作り出すことができたと思っている」と述べました。

「公文書管理 十分かどうかは国民が判断」

財務省の決裁文書改ざん問題などをめぐる公文書管理の在り方について「公文書管理については安倍政権で、さらなるルールの徹底をしている。国会において、相当、長時間にわたって私も答弁した。十分かどうかは国民が判断すると思っている」と述べました。

次の総理大臣「それぞれ有望な方々」

次の政権に望むことについて「辞めていく私があまり注文をするべきではないと思うが、現状のコロナ対策に全力を尽くし、新しい日常を作り出す中で、それぞれの方々が未来を見据えて進んでいくことができる日本社会を作ってもらいたい」と述べました。

また、次の総理大臣として名前のあがっている人の評価を問われたのに対し、安倍総理大臣は、「個別具体的な名前はあえてあげないが、それぞれ有望な方々であり、内閣や与党で一緒に働いた方々だ。それぞれの政策を競い合う中で、おそらくすばらしい方が決まっていくのだろう」と述べました。

「次なる政権に対しても一議員として協力」

今後の政治活動について、「一議員として活動を続けていきたい。その中で、さまざま政策課題の実現に微力を尽くしていきたいし、次なる政権に対しても一議員として協力し、支えていきたい」と述べました。

コロナ対応「反省するべき点は多々ある」

安倍総理大臣は、これまでの新型コロナウイルスへの対応について「中国・武漢の邦人の救出オペレーションからスタートし、ダイヤモンド・プリンセス号の問題もあった。それぞれ初めての経験で知見がない中で最善を尽くしてきたつもりだ。マスクについても批判もいただいたが、配布を続けることによって相当供給も出てきた」と述べました。

そのうえで「国民からは厳しいご批判もあり、受け止めなければならない。死者や重症者の数などで、諸外国と比べて何とか低く抑えることができ、経済への影響も種々の経済対策によって、他の先進国などと比べれば何とか抑えることができているが、まだ不十分な点もあるし反省するべき点は多々ある」と述べました。

憲法改正「世論が十分に盛り上がらなかったのは事実」

憲法改正について「党で4項目に絞り込んだ改正案のイメージをしっかりと決定することができた。ただ、残念ながら、世論が十分に盛り上がらなかったのは事実であり、それなしには進めることはできないことを改めて痛感している。それぞれの国会議員も、国会でお互いに案をぶつけあって議論をしなければ、どうしても国民的な議論は広がらない。国会議員として、その責務を果たすように、私も一議員として頑張っていきたい」と述べました。

拉致問題「結果出ず 痛恨の極み」

拉致問題について「私がずっと取り組んできて、ありとあらゆる可能性、さまざまなアプローチで全力を尽くしてきたつもりだ。かつては日本しか主張していなかったが、国際的に認識されるようになりアメリカのトランプ大統領と、北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)委員長との会談でも、この問題について言及した。また、中国の習近平国家主席や、韓国のムン・ジェイン(文在寅)大統領も言及したが、今までになかったことだ」と述べました。

そのうえで「拉致被害者のご家族が、結果が出ていない中において、お1人、お1人とお亡くなりになり、私にとっても本当に痛恨の極みだ。常に私は『何かほかに方法があるのではないか』と思いながら、考えうるあらゆる手段を取ってきていることは申し上げたい」と述べました。

次の総理大臣の資質「責任感と情熱を持った方だろう」

次の総理大臣の資質について「しっかりとしたビジョンを持って、責任感と情熱を持った方だろうと思う。今まで名前が出ている方はそれぞれ資質を持っている。総理大臣というのは1人でできる仕事ではなくて、至らない私を支えていただいた多くのスタッフや議員の皆さんがいて、なんとかここまで来ることができた。そういうチーム力も大変重要ではないかと思う」と述べました。

「健康管理は総理大臣としての責任」

安倍総理大臣は「辞任の決断をする前に休んでおけばよかったという後悔はあるか」と質問されたのに対し、「健康管理は総理大臣としての責任だろうが、それを私自身、十分にできなったという反省はある。同時に、まさに見えない敵と悪戦苦闘する中、全力を尽くさなければいけないという気持ちで仕事をしてきたつもりだ。1国のリーダーはしっかりと健康管理はしなければならないと痛感している」述べました。

辞任「月曜日に判断」

安倍総理大臣は、記者会見で、辞任を判断した時期について「月曜日に判断した。秋から冬に向けての新型コロナウイルス対策の取りまとめをしっかりとする、そして、実行のめどがたつのがきょうとなった。私自身、自分1人で判断した」と述べました。

地方創生「地方にチャンスがあると思う人が出てきた」

地方創生の取り組みへの評価について「安倍政権における景気回復期でも、東京への人口集中のスピードを相当にぶらせることができた。地方にチャンスがあると思う人が出てきた。新型コロナウイルスの『3つの密』を避ける中で、テレワークが進むと同時に、地方の魅力が見直されている。今回の感染症が、日本列島の姿や国土の在り方を根本的に変えていく可能性もあるだろう。ポストコロナの社会像を見据えて、こうした大きな変化を生かしていきたい」と述べました。

自民党総裁選「政策論争ができる時間はとられるだろう」

みずからの後任を選ぶ自民党総裁選挙のスケジュールについて、「執行部で、いま具体的に案を考えている。私の体調は、その間、基本的には絶対大丈夫だと思う。しっかりと選んでいただける、政策論争ができる時間はとられるだろう」と述べました。

「核兵器の廃絶は私の信念」

核廃絶の取り組みについて「核兵器の廃絶は私の信念であり、日本の揺るぎない方針だ。当然、次の政権でも引き継がれるものだと思う。わが国の近くで核開発を進め、日本を射程を収めるミサイルの開発を進めている北朝鮮などの国から日本を守り抜いていかなければならない」と述べました。

そのうえで、「日米同盟の絆を強くすることが、日本を攻撃する気持ちにさせない抑止力になっていく。核兵器国と非核兵器国の橋渡し役を日本が行い、唯一の戦争被爆国として核廃絶に向けた努力を重ねていかなければならない」と述べました。

辞任を決断したタイミング「人事や国会の前に判断」

辞任を決断したタイミングについて、「新型コロナウイルスの感染拡大が減少傾向に転じたこと、インフルエンザの流行に向けての対策を取りまとめ実施のめどがたった時を選んだ。前回の辞任は、内閣の改造を行い、国会を召集して所信表明を行ったあとだったが、今回は、人事や国会の前にその判断をしなければいけない。万が一にも同じようなことをしてはならないと判断した」と述べました。

東京オリンピック・パラリンピック「開催国として責任を」

来年の東京オリンピック・パラリンピックについて、「世界のアスリートが万全のコンディションでプレーを行い、観客も安全・安心な大会にしたい。IOCや大会組織委員会、東京都とも緊密に連携しながら準備を進め、開催国としての責任を果たしていかないといけない」と述べました。

メディア対策「時々の政権が判断」

安倍政権は徹底したメディア対策を行ったのではないかと問われたのに対し「例えば幹事社から事前に質問を受けるというのは安倍政権の特徴ではなく、前の政権もずっと同じだったと思う。メディアにどう出演するかということについては、その時々の政権が判断するのだろうと思う」と述べました。

「政権を私物化したつもりは全くない」

安倍総理大臣は、「森友学園や加計学園の問題、『桜を見る会』の問題などをめぐり、政権を私物化したという批判があるが」と質問されたのに対し、「政権の私物化は、あってはならないことであるし私は政権を私物化したつもりは全くない」と述べました。

そのうえで、「国家、国民のために全力を尽くしてきたつもりで、その中で、さまざまなご批判もいただいた。説明ぶりなどについては反省すべき点もあるかもしれないし、誤解を受けたのであれば、そのことも反省しなければいけないと思うが、私物化したことはないということは申し上げたい」と述べました。

「任期途中 批判は甘んじて受けなければならない」

安倍総理大臣は、記者会見で、「まさに任期途中であるので、批判は甘んじて受けなければならない。インフルエンザの流行に備えて対策を取りまとめることができ、直ちに実行に移していくめどがたった。そして、新型コロナウイルスの感染が拡大傾向から減少傾向に転じたということもあり、このタイミングで判断させていただいた」と述べました。