豚や牛などの盗難相次ぐ 組織的グループが売る目的で犯行か

豚や牛などの盗難相次ぐ 組織的グループが売る目的で犯行か
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北関東などで畜産農家で飼育されている豚や牛などが盗まれる被害が相次いでいます。盗まれたのは合わせて600頭以上にのぼり、警察は組織的なグループが食肉として売る目的で盗んだ疑いがあるとして捜査しています。

子牛盗難の様子 防犯カメラに

23日午前7時ごろ、足利市羽刈町にある農業生産法人の牛舎から生後3週間ほどの子牛3頭がいなくなっているのを経営者の男性が見つけました。

敷地内の防犯カメラの映像を確認すると、22日の午後10時40分ごろに、男らが牛舎に忍び込んで子牛を宙づりにして運び出す様子が写っていました。

この牧場では、ことし6月にも子牛2頭が盗まれたため、防犯カメラを取り付けて警戒していたということです。

警察は、防犯カメラの映像を分析するなどして行方を捜査しています。

群馬で670頭が盗難 被害額2000万円

警察などによりますと、群馬県では先月上旬から今月にかけて前橋市や伊勢崎市などで飼育されていた豚が盗まれる事件が相次ぎ被害は合わせておよそ670頭、被害額は2000万円にのぼってます。

群馬県内では、このほか牛2頭や鶏28羽の被害も確認されているということです。また栃木県の足利市でも生後2週間ほどの子牛など合わせて6頭が牛舎から盗まれる被害がことし6月から今月にかけて3件確認され、被害額は275万円にのぼっています。

さらに茨城県内でも7月上旬、養豚場で飼育されていた豚が盗まれる被害があったということです。

畜産が盛んな地域ではこれまでにも豚などの家畜が盗まれる事件はありましたが、ほとんどが数頭から数十頭の被害で短期間に600頭以上が盗まれるのは極めて異例です。

現場に豚の血のあとも

被害にあった複数の養豚場の中や出入り口の近くなどに、豚の血のあとが残っていたことが捜査関係者への取材でわかりました。

また数人が侵入したとみられる足跡も残っていたということです。

警察は数人のグループが養豚場に侵入して豚をその場で殺すなどしたあと、運び出した疑いがあるとみて調べています。

警察幹部「手慣れた犯行 闇ルートを持つグループか」

警察の幹部は「映像からは素早く盗み出していて手慣れた犯行だという印象だ。見た目から、複数の若い男が関わっているとみられる。ただ、金がほしいだけなら店などに空き巣に入るほうがリスクが少なく、家畜をあえて盗んでいることから解体から流通・販売まで闇のルートをもともと持っているグループではないか。数百頭もの家畜を盗むとなると相当な労力がかかるわりにリスクが大きく、日本人の犯罪組織の事件としてはこれまでほとんど聞いたことがない。外国人グループの関与も含めて捜査している」と話しています。

獣医師「犯人は家畜の扱いに慣れた人物とみられる」

獣医師で千葉県畜産協会専務理事の岡田望さんに栃木県足利市で子牛が盗まれた時の防犯カメラの映像を分析してもらいました。

岡田さんは「子牛が運ばれている時暴れている様子がないので気絶している可能性があり、棒などでたたいたり薬物を使ったりしたことが考えられる。犯人は短パンにサンダルと軽装で短時間に盗み出していることもあって、かなり家畜の扱いに慣れた人物とみられる」と話しています。

その上で、「牛は個体識別番号が付いているので盗まれたものが通常の市場に出回ることはないし、豚も出荷元が明確でないと流通できない。日本の国産の肉は需要が高く、組織的なグループが関わっている可能性がある」と話していました。

農水省「通常の流通ルートに乗せることは難しい」

牛や豚などを加工する「食肉処理場」は全国におよそ180か所ありますが、こうした施設以外で家畜を殺したり肉に加工したりすることは原則として法律で禁止されています。

関係者によりますと「食肉処理場」を利用するには卸売り業者などに登録が必要で、生産者がはっきりしない牛や豚が持ち込まれることはないということです。

さらに牛の場合は個体識別番号が付けられていて厳重に管理されています。農林水産省の担当者は「牛や豚を盗んでも、通常の流通ルートに乗せることは難しいのではないか」と話しています。

被害にあった農家「丹精込め育てた豚 持っていかれて悔しい」

被害にあった群馬県太田市の養豚農家の男性がNHKの取材に応じ、「丹精込めて育てた豚を持っていかれて悔しい」と心境を明かしました。

男性によりますと8月1日、出荷直前の豚が2頭盗まれ、さらに8月11日、およそ50頭の子豚が盗まれたことに気付いたということです。

このうち8月11日に被害があった施設では、子豚だけを400頭余り飼育していて、成長の段階に応じて12頭から13頭ずつ柵で仕切って育てていたということです。

作業中にそれぞれの柵の中にいるはずの豚が数頭ずつ、または全頭いなくなっていることに気付き警察に被害届けを出しました。

盗まれたのはいずれも生まれてから2か月ほどの25キロから30キロほどの子豚でした。

一方、男性によりますと、施設の出入り口や通路に人の足跡が残されていたほか、豚のふんや尿を処理するために空けられている床下の隙間から青いサンダルが1足見つかったということです。

また、豚の血のあとも残っていたということです。この養豚場では被害にあったあと、出入り口に防犯カメラを3台設置したり、鍵をかけたりする対策をとりました。

養豚農家の男性は「被害に気がついたときはあっけにとられた。丹精込めて育てた豚を持っていかれて悔しい。二度とこんなことはしてほしくない」と話していました。

県養豚協会会長「自己防衛していくしかない」

群馬県内のおよそ110軒の養豚農家でつくる群馬県養豚協会の岡部康之会長はみずからも3つの養豚場でおよそ2万3000頭の豚を飼育しています。

岡部会長は県内の養豚場から豚が盗まれる被害が相次いでいることについてNHKの取材に対し、「本当にびっくりしている。あまりにも頭数が多くこれまででは考えられない」と話しました。そのうえで「盗まれた子豚は日本では一般的に食べるようなものでもないし、流通させようとしても価値がない。豚を殺す技術を習得しているのではないか」と述べました。

事件を受けて、県養豚協会は農家にファックスで養豚場の施錠を徹底したり防犯カメラを設置したりするよう注意を呼びかけたということで、岡部会長は「自己防衛していくしかない」と話しています。

群馬県知事「大変な危機感 必要な対策検討したい」

群馬県内の複数の養豚場から大量の豚が盗まれていることが明らかになったことを受けて、県はチラシを配布して養豚農家に豚の管理を徹底するよう注意を呼びかけています。

群馬県は豚が相次いで盗まれた事件を受け、県内の養豚農家に注意を呼びかけるため被害があった地域や件数などをまとめたチラシを作成しました。

この中では、被害を早期に発見できるように飼育している豚の頭数管理を徹底することや、被害にあった場合には警察へ早く通報すること、それに不審な点に気付いたときは最寄りの家畜保健衛生所へ情報提供を呼びかけています。

このチラシを養豚に携わっている県内260余りのすべての養豚場や農家に配布したということです。

群馬県の山本知事は定例の記者会見で「群馬県は本州最大の養豚県であり、知事としては大変な危機感を持っている。関係する団体とも話し合って、さらに必要な対策があれば検討していきたい」と述べました。

関東で相次ぐ被害 牛や鶏も被害に

関東ではことし豚や牛などの盗難被害が相次いでいます。

警察への取材によりますと、
▽豚は群馬県がことし1月から8月までの間に前橋市で4か所、館林市と太田市、伊勢崎市のそれぞれ1か所で合わせておよそ670頭。
茨城県では7月上旬に常総市の1か所で1頭。
埼玉県本庄市でもことし5月下旬に1か所で2頭の被害が出ています。

▽牛は栃木県足利市で、ことし6月以降、2か所の牛舎から飼育中の子牛が合わせて6頭盗まれました。
栃木県足利市の農業生産法人、「鶴田ファーミング」の牛舎ではことし6月子牛2頭を盗まれたのに続き、8月22日には子牛3頭が盗まれました。栃木県警によりますと被害額は5頭で合わせて230万円に上るということです。群馬県でも館林市と邑楽町の2か所で5月から6月にかけて、合わせて2頭の被害が出ています。

▽鶏も、6月に群馬県伊勢崎市の2か所で合わせて28羽の被害が出ています。