「京都芸術大学」名称訴訟 “市立”で区別できると訴え棄却

「京都芸術大学」名称訴訟 “市立”で区別できると訴え棄却
ことし4月に京都にある大学が名称を「京都芸術大学」と変更したことに対し、「京都市立芸術大学」が紛らわしく混乱が生じると主張して名称の使用差し止めを求めた裁判で、大阪地方裁判所は「『市立』という設置主体を示す特徴的な部分によって区別できる」として訴えを退けました。
京都市左京区で学校法人が運営する「京都造形芸術大学」はことし4月、名称を「京都芸術大学」に変更しました。

これについて、京都市西京区にある公立の「京都市立芸術大学」が紛らわしく混同されると主張し、名称の使用差し止めを求める訴えを大阪地方裁判所に起こしていました。

これまでの裁判で、京都市立芸術大学側は「自分たちは全国的、国際的にも知名度があり、似た名前の大学が京都にあることは混乱を引き起こす」と主張したのに対し、訴えられた京都芸術大学側は、「『市立』という表示により別の大学であることは明らかで、特に受験生や保護者は間違いようがない」と反論していました。

27日の判決で、大阪地方裁判所の杉浦正樹裁判長は、「原告の大学名が不正競争防止法で保護される全国的に著名なものとはいえない。京都やその周辺では広く知られているが、『市立』という設置主体を示す特徴的な部分によって被告の『京都芸術大学』とは区別できる」と判断して訴えを退けました。

京都市立芸術大学「主張認めらず残念」

訴えを起こした京都市立芸術大学は、判決について「本学の主張が認められなかったことは誠に残念です。今後の対応は、判決文の内容を精査したうえで、検討してまいります」とするコメントを出しました。

京都芸術大学「主張の正当性が認められた結果」

裁判で訴えられていた京都芸術大学は判決について「本学の主張の正当性が認められた結果であると考えています。これからも日本の芸術文化の発展に寄与できるよう尽力してまいります」というコメントを出しました。

京都市長「原告側の主張が認められず 非常に残念」

判決を受けて原告の京都市立芸術大学を設置している京都市の門川市長は「原告側の主張が認められず、京都市としても非常に残念だ。『市立』ということばを使わなければ識別できないというのは混乱を招く。控訴については、大学の意思決定を尊重し、応援していく」と述べました。

それぞれの大学とは…

〈京都市立芸術大学〉
裁判を起こした「京都市立芸術大学」は、京都市西京区にキャンパスがあり美術学部と音楽学部の合わせて19の学科にことし5月の時点で、1071人の学生が在籍しています。

140年前の明治13年に開設された国内初の絵画専門学校、「京都府画学校」を由来とする日本で最も長い歴史を持つ芸術系大学です。

明治22年に経営が京都府から京都市に移され、昭和44年に京都市立音楽短期大学と統合し、現在の京都市立芸術大学となりました。これまでに人間国宝2人、文化勲章受章者18人、文化功労者26人を輩出し、前衛芸術家の草間彌生さんや指揮者の佐渡裕さんも卒業生です。


〈京都芸術大学〉
一方、訴えられた「京都芸術大学」は、学校法人が経営する私立大学で、京都市左京区や東京 港区にキャンパスがあり、ことし5月の時点で、3905人の学生が在籍しています。

29年前の平成3年、「京都造形芸術大学」として開学し、当初は絵画や彫刻などの造形芸術を学ぶ3学科のみでしたが、その後、映画や舞台、マンガなど幅広い芸術の分野にも広げ、現在は17学科に増えています。

こうした現状を踏まえ、大学を運営する学校法人は「『造形芸術』の枠を超えた教育・研究に取り組む大学にふさわしい名称にするため」として、来年に30周年を迎えるのを前に、名称を変更したということです。

この名称変更について、双方の大学は事前に協議を行ったことを明らかにしていますが、話し合いでは解決せず、京都市立芸術大学側が訴えを起こす事態になりました。

別の裁判も

京都市立芸術大学は京都芸術大学に対して「不正競争防止法」に基づいて起こした今回の裁判とは別に、「商標法」に基づいて名称使用の差し止めを求める仮処分も8月21日に大阪地方裁判所に申し立てています。

これは正式名称の「京都市立芸術大学」が今月12日に商標登録されたことを受けての対応で、よく似た名称の「京都芸術大学」の使用は商標法に違反すると主張しています。

京都市立芸術大学は裁判だけでなく決定が出れば直ちに効力が生じる仮処分を申し立てた理由について、「裁判の1審で勝訴判決が出たとしても、最終的に確定するまでしばらく時間がかかる可能性がある。被告大学側は積極的に名称をPRして既成事実化を画策している」と説明しています。

一方、京都芸術大学は「申し立て書が届いていないので、コメントできない」としています。

過去には名称使用差し止めのケースも

過去には学校の名称をめぐる裁判で使用の差し止めが命じられ、名称が変更されたケースもあります。

平成12年、広島県呉市青山町に「呉青山学院中学校」という名称の私立学校が開設されました。

これに対し東京の青山学院大学などを運営する学校法人が名称の使用差し止めを求める訴えを東京地方裁判所に起こしました。

訴えた青山学院側は、125年余りの歴史があること、大学への入学志願者が全国にいることなどから全国的に著名だと主張しました。

これに対して、訴えられた中学校側は、「青山学院」は大学を除いて「中等部」などの学校は知名度が高いといえないこと、大学もほかの国立や私立の有名大学と比較して、偏差値などで明らかに差があり知名度は劣るので著名だとは言えないと主張しました。

判決で東京地方裁判所は名称は著名だとする青山学院側の主張を認め、「名称のうち、とくに『青山学院』の部分が見た人の注意を引き、青山学院と何らかの関連がある呉市の中学校だと誤解を招く」として、名称の使用差し止めを命じました。

被告の中学校側は裁判が長期化すれば、影響が大きくなると判断したとして、判決を受け入れ、校名から「学院」を外して「呉青山中学校」に名称を変更しました。

英語名で対立するケースも

大学の名称をめぐっては、大阪でも新たにできる大学の「英語名」について対立が起きています。

大阪市立大学と大阪府立大学を統合して再来年に開設される予定の「大阪公立大学」は、ことし6月に英語名を「University of Osaka」とすることを決めました。

これに対して大阪大学が、従来から使っている「OSAKA UNIVERSITY」と似ていて大きな混乱を招くとして再考を求めています。
大阪大学はその理由として、「『OSAKA UNIVERSITY』と『University of Osaka』は海外では同じ意味と捉えられていて、留学生が誤解したり、学術論文が混同されたりする」と主張しています。

これに対し、大阪公立大学は、「実際に大学が存在するようになれば混乱はなくなる。海外で混同が起きないようにPRしていく」と反論しています。

大阪大学は、変更に応じない場合は法的な訴えを起こすことも選択肢だとしていますが、大阪公立大学側は現時点で変更の予定はないとしています。