デザイン発表で反響広がる~万博ロゴマークにつながる思いとは

デザイン発表で反響広がる~万博ロゴマークにつながる思いとは
2025年に開かれる「大阪・関西万博」。その公式ロゴマークが決まりました。どんなデザインかというと…ネットなどで賛否両論、大きな話題になっています。「気持ち悪い」「かわいい」「あれにそっくり」…あなたはどう思いますか?
ロゴマークが表すものと、それが生まれた背景を探ると、半世紀前の万博からつながる熱い思いにたどり着きました。
(大阪放送局 記者 甲木智和/ネットワーク報道部 記者 成田大輔 大石理恵)

分かれる賛否

これがそのロゴマークです。
赤い球体が輪のように連なり、さまざまな方向を向いた目のような青い模様が5つあしらわれています。

8月25日に発表されるやいなや、その奇抜さからネットで議論がわき起こりました。
「なんでこれ選んだんだよ・・・」
「気持ち悪くて、生理的に受け入れられません」
「普通にかわいいと思うんだけれどな」
ロゴマーク決定を知らせる経済産業省のツイートは、発表の翌日までにリツイートが6万に上り、4000件のコメントがつきました。

商品やキャラクターにも

その後もネットではこの話題で盛り上がっています。ドーナツチェーン店の商品に似ているとか、民放の子ども向け番組に登場する毛むくじゃらのキャラ(赤いほう)を思い出すとか、スナック菓子のパッケージにそっくりだといった指摘も。

メーカーも反応しました。
「なぜか??? た~~~~くさんの人が ボクのことを話してくれてて 理由はさておき とっても嬉しいよ~ みんなありがと~」
「東ハト」担当者
「実は8月24日にキャラメルシロップの量を増やすなど商品をリニューアルしたばかりで、そのことで話題になったのかと思いきや、まったく違っていました。万博のロゴマークが似ていると話題になったことに驚いております。商品のキャラクターも大きなお口を開けて驚いているようです」
お堅いイメージの自治体のシンボルにも影響が及びます。
昭和39年に制定された埼玉県の県章に似ているという声があるのです。

この県章、県名の由来にもなった古代の装飾品「まが玉」を16個並べ、「太陽」「発展」「情熱」「力強さ」を表しているそうです。
埼玉県担当者
「県章がロゴマークと比べられるとは、思いがけないことでした。実は今、来年の埼玉県誕生150周年のロゴマークを募集しているので、この盛り上がりに便乗して応募が増えるとうれしいです」

手作りに挑戦する人も

さらに、「作ってみた」という人も現れました。

東京 江戸川区でパンの店を営む松永健太さんは、ロゴをイメージしたパンを作ってツイッターにアップしました。
万博が開かれることは知らなかったものの、ロゴマークが大きな話題になっていたので、余っていた食パンの生地を使って、早速、焼いてみたそうです。

焼き加減で模様を出し、目のような部分にはチョコレート。仕事の合間に1時間ほどで作り上げたそうです。
松永健太さん
「ロゴマークを見たときに、この形ならパンで作れそうだと思いました。デザインが無難じゃない感じがいいと思います。遊びで作っただけなので、販売する予定はありませんが、反響が大きくて驚いています」

どうして選ばれた?

このロゴマーク、どうやって選ばれたのでしょうか。

万博の実施主体となる博覧会協会が、全国から応募のあった5894作品から選考しました。

選考委員は、
▼座長を務めた建築家の安藤忠雄さん、
▼万博のプロデューサーを務める映画監督の河瀬直美さん、
▼『ジョジョの奇妙な冒険』の作者で漫画家の荒木飛呂彦さん、
▼元サッカー女子日本代表の澤穂希さんなど、11人です。

8月3日に最終候補の5作品が発表され、その後、一般から意見を募ったうえで決定となりました。
詳しい審査の過程は明らかにされていませんが、大阪らしいユニークさや存在感があることに加え、今後、キャラクターを考える際などに可能性が感じられる点も評価されたということです。
安藤忠雄さん
「ロゴマークには違和感もあるが、そこがいいと感じる。万博に限らず、今までのロゴマークは左右対称で安定していた。このマークは変わっていて、それがなによりエネルギーになると思う。予定調和ではなく、新しい時代を切り開いてほしい。このロゴマークに決定し、いいスタートが切れたのではないか」

作者の思い

このロゴマークに込められた意味とは…。

手がけたのは大阪 浪速区にあるデザイン事務所のメンバー6人で作るグループです。

事務所の代表を務めるアートディレクターのシマダ タモツさん。受賞の記者会見で涙を浮かべながらこう話しました。
シマダ タモツさん
「本当にびっくりしています。このマークが万博の顔になるとは思っていなかったので、最高にうれしいです」
今回の万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」に沿って、命の輝きを表現したそうです。

シマダさんによると、キーワードは「細胞」。10余りの赤い球体は細胞をイメージしたもので、目のように見える部分はその「核」なんだそうです。細胞が弾むように輪の形に連なっていて、アルファベットの大阪の頭文字「O」と読み取ることもできます。
デザインする際に大きな影響を受けたのは、半世紀前の昭和45年に開かれた大阪万博の象徴、「太陽の塔」と、それを手がけた芸術家の故 岡本太郎さんです。

大阪生まれ、大阪育ちのシマダさんはこう話します。
シマダ タモツさん
「小さいころに見た太陽の塔が衝撃的で、岡本太郎さんのようなパンチの効いた、オリジナリティーのあるものをずっと作りたいと思っていた」
今でも年に2回は太陽の塔を訪れ、事務所の机の上にも太陽の塔の模型を置いているそうです。

年は違いますが、岡本太郎さんと誕生日も同じとのこと。
シマダ タモツさん
「普通であればまず選ばれないデザインですし、正直、ここまで選考に残るとは思っていなかったです。万博でなければ出していないロゴマークです。自分にとってはかわいい存在ですし、こういうロゴマークが通る万博にしてほしいと思っていました」

「太陽の塔」にも賛否が

「太陽の塔」。実はこの作品も、世に出たときはさまざまな意見、そして批判がありました。

「芸術は爆発だ!」ということばで知られる岡本太郎さんは、生前、NHKの番組でこんなことを話していました。
故 岡本太郎さんのインタビューより
「美術家の間から『国のカネと広場を使って、なんであまりにも岡本太郎的なものを作るんだ』と批判も出たが、『何を言ってるんだ、個性的なもののほうが普遍性を持つんだ』とやり返した」
当時の万博のテーマは「人類の進歩と調和」。岡本さんは「調和とはお互いにぶつかり合うことだ」として、一歩も引かなかったと言います。
故 岡本太郎さんのインタビューより
「相手に遠慮し向こうも遠慮して抑え合うのではなく、ぶつかり合うのがいい。だからあんなすっとんきょうなものを作った。憎まれてもいい、嫌われてもいい。みんなに不満がられる、それならそれでいいと平気で作ったんですよ」
太陽の塔は当初、万博が終わったら取り壊される予定だったそうですが、多くの人に受け入れられ、おととしから始まった内部の一般公開には大勢の人が訪れています。

批判受けた例 ほかにも

登場とともに批判を浴び、しかしその後、広く受け入れられるようになった事例は、ほかにもあります。
奈良県のマスコットキャラクター「せんとくん」。平成22年に行われた「平城遷都1300年祭」のマスコットキャラクターとして誕生しました。

童子の頭に鹿の角を生やした姿について、当初「愛きょうがある」「奈良らしくていい」と好意的に受け止める声がある一方、「気持ち悪い」「嫌悪感を感じる」といった厳しい意見も多くあり、有志の人たちが別のキャラクターを登場させる事態にもなりました。

しかし、せんとくんはそのままの姿でマスコットキャラクターを務め、その後“県職員”にも就任し、観光振興などの活動を続けてきました。

「1300年祭」から10年。地元の人や観光客に広く親しまれ、奈良のお土産品にもイラストが多く使われています。

奈良県によりますと、せんとくんに宛てた年賀状や暑中見舞いは全国から寄せられ、ことしの年賀状は650通届いたそうです。

ちなみにですが、この原稿を担当しているニュースデスク(奈良勤務経験者)も、せんとくんのキーホルダーを2つ愛用しています。

せんとくんの生みの親は

ぶれることなく歩んできたせんとくん。

生みの親である東京藝術大学副学長で彫刻家の籔内佐斗司さんに取材しました。
せんとくんを発表した当初、籔内さんのホームページには応援と批判を合わせて、およそ950通のメッセージが届き、籔内さんはすべてに返信したそうです。

当時の思いについて、自身のホームページにこう記しています。「せんとくんのデザインに嫌悪感を抱いたひとがいたことを否定するつもりもありません。私たちアーティストは、自分の創作物が好き嫌いで判断されるのは当然のことであると了解しています。ただし、好き嫌いの個人的感情を、善い悪いの社会的問題や倫理的問題にすり替えて見当違いの批難をされた場合は作家生命をかけて毅然として反論します」
せんとくんが今も活躍していることについて、籔内さんに尋ねると…
籔内佐斗司さん
「奈良県が遷都祭のあとも、何かイベントがあるたびに活躍の機会を与えてくれたからです。せんとくんが元気で今も活躍しているのは、彼をキャラクターに決めた決定権者の矜持(きょうじ)と、そんな彼を温かく見守ってくれた奈良の人たちのおかげです」
さらに、万博のロゴマークにさまざまな意見が寄せられていることについても聞きました。
籔内佐斗司さん
「経緯を詳しく知りませんが、決定権者がしっかりと対応して、デザイナーに理不尽な批判や負担がかからないことを願っています」
それぞれの強い思いが込められた作品。予定調和でないだけに注目を集めるのかもしれません。

未来の姿を描こうという万博の顔として、人々にどんなメッセージを送るのか。その活躍からも目が離せません。