新型コロナで利用減の新幹線で宮城産海産物の輸送実験を開始

新型コロナで利用減の新幹線で宮城産海産物の輸送実験を開始
新型コロナウイルスの影響で、新幹線の利用客が大きく落ち込んでいることから、JR東日本は、初めて新幹線の客席を使って宮城県産の新鮮な海産物を東京に輸送する実験を始めました。
新型コロナウイルスの影響で、東北新幹線の利用客の数は先週の時点で、去年の同じ時期の3割にとどまっています。

このため、JR東日本は初めて、空いた客席を使って地方の特産品を東京に輸送する実験を行いました。

26日に輸送されたのは、同日朝に水揚げされた宮城県産のホヤやカキなどで、午前11時前、仙台駅を出発する東北新幹線に約140キロの海産物が運び込まれました。

輸送用として使われた先頭車両では、座席2列を向かい合わせにしたうえで、冷気を保つ特殊な箱の中に海産物を入れて、鮮度が落ちないように注意して運びました。

新幹線は約2時間かけて東京駅に到着し、午後2時すぎには駅構内の海鮮料理店で刺身や酢の物として提供されました。

取り組みに参加した水産業者によりますと、トラックで輸送する場合、東京に到着するのは翌日になることが多いですが、新幹線を使えば飲食店で提供するまでの時間を丸1日短縮できるということです。

JRでは、より新鮮な状態で海産物などを届けられることから、新幹線で運ぶ需要はあるとみて、今後検証を進めながら、実用化を目指すことにしています。

JR東日本のサプライチェーンマネジメントプロジェクトの浜田剛課長は「新幹線は速達性と定時性が強みなので、地域の商品を運ぶことで地域に貢献したい」と話していました。

東北新幹線の利用状況

新型コロナウイルスの影響で東北新幹線の利用は大きく落ち込んでいて、緊急事態宣言が出されていた5月の利用客の数は去年の同じ時期の1割まで落ち込みました。

その後、利用客の数は徐々に回復してきているものの、先週も去年の同じ時期の3割ほどにとどまっていて、長期にわたってこうした状況が続くのではないかとみられています。

こうしたことから、JR東日本は鉄道事業の収入減少を補う対策を幅広く検討していて、その一つとして地方の特産品を新幹線で東京に輸送する実験を始めました。

JRでは今後、産地からの輸送にかかる時間について検証を進めるとともに、列車に乗る乗客の反応もみながら実用化を目指すことにしています。

水産業者の期待

実験に参加した石巻市の水産業者は、新型コロナウイルスの影響で飲食店への販売が落ち込み、4月の売り上げは平年の2割ほど、先月も8割ほどにとどまっています。

これまではトラックで海産物を東京の市場や飲食店に運んでいましたが、早朝にとれた海産物が飲食店などに納品されるのは翌日の昼以降になることが多く、より新鮮な状態で送ることが課題となっていました。

なかでも宮城県特産のホヤは、水揚げから時間がたつと身が縮みやすく鮮度も落ちることから、輸送に時間がかかる首都圏での消費が伸び悩んでいました。

今回の実験では納品にかかる時間がトラックに比べてまる1日短縮されることから、より新鮮な状態で提供できるようになり、首都圏での消費拡大にもつながると期待されています。

水産業者「海遊」の伊藤浩光社長は「海産物は鮮度が命なので、今回の取り組みは物流に革命をもたらす画期的なものだと思う」と話していました。