子どもが日傘で学校、ダメ?

子どもが日傘で学校、ダメ?
照りつける日ざし。連日の厳しい暑さで熱中症のおそれもあり、日傘を使う人も多いのではないでしょうか。
真っ赤な顔で汗をかきながら学校に通う子どもたちを守りたいと、保護者の中には、日傘を持たせる人たちもいるようです。
でも、SNSを見ると「学校に日傘は禁止と言われた」という多くの不満の声が。
「危険な暑さなのになぜ?」
保護者の皆さんの“モヤモヤ”を受けて、調べてみました。
(ネットワーク報道部 記者 野田綾 鮎合真介 SNSリサーチ 三輪衣見子)

「日傘はダメ」保護者から疑問の声

短い夏休みが終わり、始まった新学期。まだまだ続く暑さから登下校時の子どもを守ろうと、日傘を用意した親もいるようですが、SNS上では…
「小学校が始まって暑いだろうと日傘を買ってあげたけど、学校から日傘はNGと言われた」
「日傘はあぶないからさしてはいけないって まじか小学校よ」
「うちの子達が通う学校は傘差しNGだそうです。危険な暑さだよね、何でかな!?」
「日傘が使えない」という不満や疑問の声が、各地であがっていました。

日傘がダメ、危ないって、どういうことなのでしょうか。

「手がふさがるから危ない」

「下校の時だけでも使わせたいなぁと思って持たせたら、使用禁止と言われ、使わせてくれず真っ赤な顔をして帰ってきました」
こう投稿した、神奈川県に住む30代の母親に話を聞くことができました。

小学1年生の長女は、学校まで30分ほど歩いて登校しています。

夏休みが明けて今月18日、真っ赤な顔をして帰宅した長女は「だるい。頭が痛い」と体調不良を訴えました。
母親
「冷やしたり、塩分をとらせたりして、その日は体調が回復しましたが、熱中症になりかけていたのだと思います。帰りは一番日ざしの強い午後2時半から3時ぐらいで、上り坂が続き、日陰もほとんどありません。試しに歩いてみると、大人でも厳しい暑さで、それまでも冷却スカーフや帽子を活用していましたが、さらに対策が必要だと、慌てて日傘を買いました」
帰りだけでも使ってほしいと学校に持たせると、長女は教師から「使ってはいけない」と言われたと言います。
母親
「日傘を使うなら連絡帳で知らせなくてはいけないと子どもが言われたそうなので、連絡帳に記載しました。すると学校から連絡があり、やんわりと、使用しないでほしいという趣旨のことを言われました」
理由は2つ。
1つ目は、傘を使用してはいない子どもに傘がぶつかるとケガにつながりかねないということ。
2つ目は、低学年は傘で手がふさがると危険だということだったと言います。
母親
「ほかの子どもに当たると危険だということは理解できました。しかし、傘で手がふさがると危ないというのは、今も納得がいきません。雨の日は傘をさすのに、何が違うのかと。低学年だから危ないということかもしれませんが、低学年こそ暑さに弱く、自分で水分補給をするなどの対応も難しいところがあります。学校には、使用の注意を示したうえで、各自に対策を任せるなどの対応をしてほしいと感じています」

学校「一律に禁止ではない」

学校側は、どんな説明をするのでしょうか。

この母親の長女が通う小学校は、私たちの取材に直接は答えませんでしたが、教育委員会を通じて回答を寄せました。

教育委員会によると、この小学校は「日傘の使用については一律に禁止とするのではなく、個別の事情を考慮し使用を認めている」と説明しているということです。

ただ、「小学校としては、登下校時は混雑するため、傘を使用しない子どもに傘がぶつかってしまう危険もあることから、できれば帽子をかぶるなど別の方法で対応してほしいと呼びかけている」ということです。

教育委員会としての立場を聞くと、「教育委員会としては、日傘の使用を推奨することも禁止することもしていません。保護者の判断で使用させることはかまわないと考えていますが、基本的には各学校に任せています」とのことでした。
教育委員会の担当者
「学校としては臨機応変に対応しているのだと思いますが、そのことを伝える教師によっては、危険性を心配するために、誤った伝わり方をしてしまうこともあるのだと思います。事情をよく話し合ってもらいたいと考えています」
このほか取材を進めると、こんな意見も。

愛知県内のある教育委員会は、「ランドセル通学にも慣れていない小学校低学年に日傘を持たせるのは難しい」「日傘は暗い色が多く、周りが見えにくいため、交通事故の危険性が高まる」などとして、「日傘は基本的にはおすすめしない」と話していました。

日傘推奨の学校も

日傘に前向きでない学校は確かにあるようですが、一方で、日傘の使用を積極的に推進している学校もありました。

全校生徒が日傘をさして登下校する、愛知県豊田市の童子山小学校です。

ことし5月下旬から子どもたちに日傘または雨傘をさし、一列に並んで登校させることにしました。

一番のねらいは、熱中症対策。傘をさすことでソーシャルディスタンスも保てるとして、熱のこもりやすいマスクや学校の帽子は着用しなくてもかまわないとしています。
野田靖 校長
「子どもたちは学校では涼しく過ごせますが、登下校は炎天下にさらされることになります。さらにこの夏は、マスクを着用しなくてはならず、熱がこもりやすくなります。なんとか熱中症から子どもたちを守りたいと、職員内で話し合う中で、日ざしを遮ることが効果的だということになり、日傘使用を決めました」
学校では、傘をさすことで荷物を持ちにくくならないよう、保護者に対し、子どもの荷物は小さくまとめることなど、文書で協力を呼びかけました。

保護者や子どもからは、日ざしを遮ったりマスクを外したりできることで、体感温度を下げることができていると、好評だということです。

子ども用日傘 売れ行き好調

子ども用の日傘に対する需要も高まっているようです。

名古屋市に本社がある傘のメーカー「小川」では、おととしから子ども用の日傘の開発を進め、去年4月からネットを中心に販売をスタート。

ことし3月までの1年間で売れた日傘は、わずか100本ほどでしたが、4月以降は状況が一変し、沖縄から北海道まで、全国から問い合わせや注文が急増しているといいます。
営業部 藤田侑樹さん
「売れ行きは去年のシーズンの50倍以上で、これまでに5000本から6000本は売れていると思います。子どもの熱中症対策として日傘を取り入れる学校が増えていることや、日傘をさすことでソーシャルディスタンスがとれるといった、コロナの時代のメリットが注目されているのではないでしょうか」

「雨傘と日傘は違う」の声も

猛暑の中で広がりも見せている子ども向け日傘。雨傘と同じように使っていいのでは、とも思えてきますが、調べていると、「雨傘と日傘は違う」と、使い方やマナーについて注意を呼びかけている団体もありました。
男性も日傘を愛用できる世の中を目指して活動している「日本日傘男子協会」です。

協会では、日傘をさすうえでの心得とマナーについて次のような標語を掲げています。
「雨の日の雨傘は『お互い様』。 でも晴れの日の日傘は『お互い様』ではない」

どういうことか、代表理事を務める宮武和広さんに話を聞くと、「子どもの登下校時の日傘は、学校ごとの判断なので、協会としての評価はできません」と断ったうえで、次のように話してくれました。
日本日傘男子協会 宮武和広さん
「日本では雨の日に傘をさすのが一般的なので、雨天時に傘をさしていても誰も疑問を持ちませんが、日傘はそうではありません。もし日傘が周囲の人にとって不快になったり、危険を感じたりするようになれば、日傘をさすことについて周囲の理解を得ることは難しくなります」
日傘を使う場合には、やはり雨傘以上に周囲の理解が大切だということのようです。

そのうえで宮武さんの考えは、もし学校でも日傘を使うなら、「みんなで使う」というふうにしたほうがいいのではないかということでした。
日本日傘男子協会 宮武和広さん
「子どもたちがみんなで日傘を使うようになれば、雨の日と同じように『お互い様』となって、誰もが気兼ねなく日傘を使えるようになると思います。また、日傘があることで、熱中症の予防だけでなく、お互いに自然な距離のソーシャルディスタンスが保てるので、コロナの感染対策にも役に立ちます。そうした観点から、子どもたちの日傘について考えてみてもいいのではないでしょうか」
まだ「みんな使って当たり前」とまではなっていない日傘。危険な暑さや、事故のリスクなども十分に考えたうえで、まずは学校、保護者とも、しっかりと意思疎通を図って、理解を深めることが第一歩なのかもしれません。

子どもの日傘と学校、あなたの地域ではどうですか?