アメリカ 新型コロナ「回復者血しょう」の緊急使用を許可

アメリカ 新型コロナ「回復者血しょう」の緊急使用を許可
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新型コロナウイルスに感染し回復した患者の血液の成分を別の患者に投与する「回復者血しょう」について、アメリカのトランプ大統領は、FDA=食品医薬品局が緊急の使用を許可したと発表しました。
「回復者血しょう治療」と呼ばれるこの治療法は、過去に新型コロナウイルスに感染し回復した人の血液から、ウイルスなどを攻撃する「抗体」が含まれた「血しょう」と呼ばれる成分を取り出して患者に投与するもので、アメリカなどで安全性と効果を確かめる臨床試験が行われています。

トランプ大統領は23日の記者会見で、FDAが「回復者血しょう」の緊急の使用を許可すると発表し、「この治療法は多くの命を救うだろう」と効果に期待を示しました。

また、FDAのハーン局長は「すでに7万人以上が回復者血しょうの投与を受けていて、生存率が大幅に改善したという結果も得ている」としたうえで、緊急使用の許可によりより多くの患者がこうした治療を受けられるようになると述べました。

アメリカではウイルスに感染して回復した人に血しょうの提供を呼びかける運動が広がっていて、俳優のトム・ハンクスさんが提供したことでも話題になりました。

「回復者血しょう治療」をめぐっては、日本でも国立国際医療研究センターなどのグループが安全性や効果についての臨床研究を行うなど、各国で研究が進んでいますが、感染者数が少ない国では血しょうの確保が難しいなど、普及させるには課題も残されています。

日本国内でも臨床研究 効果に期待

新型コロナウイルスに感染して回復した患者の血液の成分を、別の患者に投与する「回復者血しょう」を使った臨床研究は、日本国内でも行われ、これまでに回復した人の血液、およそ40人分を採取して、投与の準備が進められています。

国内での臨床研究は、国立国際医療研究センターなどのグループが進めていて、新型コロナウイルスに感染して回復したおよそ50人から1人400ミリリットルの血液の提供を受けて、ウイルスなどを攻撃する「抗体」が含まれた「血しょう」を、患者50人に投与し、安全性や有効性を調べる計画です。

これまでに、およそ40人から血液の提供を受けて、投与に向けた準備を進めているということです。

臨床研究を担当する忽那賢志医師によりますと、この治療法は、酸素吸入などの呼吸管理が必要な中等症以上の患者が対象で、血しょうに含まれる新型コロナウイルスを狙い撃ちにする抗体を使うため、効果が期待されるとしています。

エボラ出血熱や「スペインかぜ」など、ほかの感染症に対しても使われてきた歴史がありますが、血液から必要な成分を分離する専用の装置や、別の感染症に感染しないかなど、安全性を確認する検査も必要で、比較的規模の大きい医療機関でないと実施できないということです。

忽那医師は、アメリカでも有効性を厳密に確認する臨床試験を経ておらず、まだ十分な科学的根拠がないほか、中国では、重症者には有効ではなかったという結果も報告されていて、今後も検証が必要だとしています。

忽那医師は「アメリカでは、すでに多くの人が受けていることもあり、かなり前倒しで緊急に許可したのではないか。特効薬がない中で、有効性が証明できれば意味は大きいため、私たちも実際の患者さんへの投与に向けて計画を進めていきたい」と話しています。