エアコン使わないのはどうして?

エアコン使わないのはどうして?
命に関わる危険な暑さが続いています。都内では熱中症で死亡した人が今月だけで140人を超えました。エアコンを使わず、体調を崩したり亡くなったりするケースも相次いでいます。いったい、どうして?
(ネットワーク報道部 管野彰彦・斉藤直哉/映像センター 小柳一洋/徳島放送局 伊藤一馬)
東京都監察医務院によりますと、都内では8月に入ってから20日までに、すでに148人が熱中症で亡くなっています。

19日までの8日間でみると、死亡した28人のうち、屋内で亡くなった25人はエアコンを使用していませんでした。
インターネット上には…
「暑いってわかっているのにエアコンを使わないのは理解できない」
「私の周りの人たちはエアコンを使わない人が多くて心配」
といった声が多く投稿されています。

このところの暑さは確かに身の危険を感じるほどです。エアコンをつけずに部屋にいると、じっとしているだけで、大粒の汗が流れ出て頭がぼーっとしてくることがあります。

さきほどの都内の例では、8日間で亡くなった28人のうち、70代以上が約8割を占めていました。

ネット上でも高齢の人たちがエアコンを使いたがらないという投稿が目立っています。
「私の母も家にエアコンがあるのに扇風機だけで過ごしている。『エアコン使いなよ』って言っても『大丈夫』と言って使わない」
「気をつけていないと(父親が)勝手にエアコン切って自分の部屋でぐったりしてる」

冷たい風は体に悪い?

では、なぜ高齢の人たちはエアコンを使いたがらないのか?
東京 狛江市 高齢障がい課 平山剛さん
「お年寄りなどに話を聞いてみると、エアコンへの『嫌悪感』のような感情を持っている声をよく聞きます」
部屋を涼しくしてくれるエアコンに嫌悪感とは、いったいどういうことなの?
東京 狛江市 高齢障がい課 平山剛さん
「冷たい風を浴びると体調を崩してしまうと思っている人が多いようです」

“必要性を感じない”

これまでエアコンのある部屋で暮らしたことがないという、東京 荒川区の男性(69)はこう話してくれました。
東京 荒川区の男性
「暑さをしのぐには扇風機で十分。必要性を感じたことはなかったです」
ところが、ことしは寝ていても目が覚めたり頭がクラクラしたりすることが起きるようになりました。

医師やケアマネージャーから熱中症を心配されて、男性はようやく「命が大事」と、人生で初めてエアコンを購入したそうです。
熱中症に詳しい帝京大学医学部附属病院高度救命救急センター長の三宅康史医師は、高齢の人がエアコンを使いたがらないのには理由があると指摘します。
三宅康史医師
「高齢になると暑さを感じにくくなり、基礎代謝も落ちるので、若い人と比べて寒がりになります。そのためエアコンをつけるのを嫌がる人が多いのだと思います。また去年は大丈夫だったからことしも、と考えている人も多いのではないでしょうか」
もう1つ気になったのが、昔からよく聞く「エアコンは身体に悪い」という話。子どものころに親から言われたという人もいると思います。実際のところはどうなのかも聞きました。
三宅康史医師
「確かに冷えすぎると、膝が痛くなったり、部屋が乾燥して、のどが痛くなったりすることはあります。ただ、適切な温度・湿度に設定すれば、それほどの影響はないと思います。昔のエアコンは細かい温度調整が難しくて冷えすぎたりといったこともあったと思うので、その頃の感覚が残っているのかもしれません」
三宅医師は、ことしの暑さではエアコンを積極的に使ったほうがよいと指摘します。

“電気代がかかるから”

一方、経済的な事情でエアコンを取り付けられなかったり、使用を控えたりする人もいます。

内閣府が行った消費動向調査では、ことし3月の時点でのルームエアコンの普及率は88.6%と、1割以上の世帯では設置していません。

年収が750~950万円の世帯(95.4%)と、300万円未満の世帯(82.7%)では、10ポイント以上も差があります。
生活保護を受けながら、1人暮らしをしている前橋市の男性(74)。10年以上、エアコンのない生活を送っています。
前橋市の男性
「欲しいと思うこともあったが、購入費やその後の電気代のことを考えると、買うという決断には至らなかった」
2台の扇風機に加え、冷えた氷を包んだタオルを首に巻くなどして、なんとか過ごしてきましたが、ことしエアコンを購入しました。

暑さはしのげるようになったものの、電気代が心配でつけっぱなしにはできないといいます。
前橋市の男性
「今は寝る前だけつけるようにしています。電気代を継続的に支援する制度があると助かるんですが」

エアコンは電気代が高い?

「電気代がかかる」というイメージをもたれることの多いエアコン。

大手メーカーのダイキンの担当者によると、現在は、ほぼすべての機種に採用されている「インバータ」という制御回路が登場する前(1980年代以前)は、エアコンが頻繁に「オン・オフ」を繰り返していたため、電気の使用量が大きかったということです。

電気料金は地域や時代で基準が異なるため、単純な比較は難しいとしたうえで、担当者は、省エネ性能の改良が続けられていて、最新機種の消費電力は11年前の機種と比べ2割ほど削減できていると説明しています。

上手に使うコツは

ダイキンの担当者は、電気代を節約しながらエアコンを上手に使う簡単な方法を紹介してくれました。
1つめは『帰宅したらエアコンをつける前に窓を開けて換気を行う』。部屋の中にたまった熱気を外に逃がしてからエアコンを動かすことで、むだな電力を消費しなくてすみます。
2つめは『2週間に1度はエアコン内部のフィルターを掃除する』。フィルターが目詰まりすると、部屋の温度を下げるのにより多くの電力が必要になってしまいます。
3つめは『エアコンの室外機に直射日光を当てない』。室外機の温度が上がると、たまった熱を逃がす効率が下がってしまうため、日陰に入れたり、よしずを立てたりすることが大切だということです。
このほか、カーテンやブラインドなどで日光を遮ったり、窓の外にすだれを掛けたりして、日ざしを部屋に入れないことも効果的です。
ダイキンの担当者
「エアコンは起動するときに大きな電力を消費するので、つけっぱなしのほうがより省エネになります。体のためにも快適性のためにも、そしてお金のためにも、頻繁につけたり消したりせず、つけっぱなしで使うことをおすすめしています」

声かけで“スイッチオン”

危険な暑さから命を守るため、高齢者にエアコンを使ってもらうには、家族の呼びかけが重要だと専門家は指摘します。

本人が「暑くない」と感じたとしても、部屋の温度や湿度が基準を超えたら(目安は28度、湿度70%)、エアコンのスイッチを入れる、などと決めておくことが効果的だということです。
三宅康史医師
「これまでは行政の担当者や近所の人が家を訪ねて様子を見るということもできましたが、新型コロナの影響で、それも難しくなっています。直接会うことが難しくても、家族が電話などで声をかけることが、とても重要です」