東京都 モニタリング会議「重症患者の増加は加速 体制強化を」

東京都 モニタリング会議「重症患者の増加は加速 体制強化を」
東京都内の新型コロナウイルスの感染状況などを分析・評価する会議が開かれ、専門家は感染状況、医療提供体制ともに前の週の表現を維持した一方、重症の患者の増加が加速しているとして、こうした患者のための病床を確保する必要があると指摘しました。
東京都は20日午後、都内の感染状況と医療提供体制を分析・評価する「モニタリング会議」を開きました。

このうち感染状況について、国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は、新たな感染の確認が直近7日間の平均で256人となり、前の週と比較して減少傾向にあるものの、高い水準を維持していて、都の全域やリスクの高い高齢者に広がっていると報告しました。

そのうえで「感染が拡大していると思われる」と評価し、4段階あるレベルのうち、最も深刻な表現を6週連続で維持しました。

また医療提供体制について、大曲センター長は「重症患者の増加は加速している。通常の医療との両立を保ちつつ、重症患者のための病床を確保する必要がある」と指摘しました。

そして「体制強化が必要であると思われる」と評価し、7週連続で4段階あるレベルのうち、上から2番目の表現としました。

都内の重症者 国の基準では9人多く

モニタリング会議では、都内の重症者を集中治療室などに入っているか人工呼吸器や「ECMO」と呼ばれる人工心肺装置が必要な状態か、いずれかに当てはまる場合はカウントするという国の基準で集計した結果、19日の時点で、41人になるということが明らかにされました。

これは、人工呼吸器かECMOを使っている人のみをカウントする都の基準で集計した32人よりも9人多いことになります。

都は、都内の感染状況や医療提供体制をみるモニタリング指標として、これまで通り、国の基準ではなく都の基準で集計した重症者の数を使うことにしています。

これについて国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は、重症でなくても今後、重症化するリスクが高い患者をあらかじめ集中治療室で診る病院や、そもそも集中治療室を新型コロナウイルスの患者専用にする病院があり、「必ずしも集中治療室の患者が重症の患者とは限らない事例もある」と説明しました。

そのうえで、「集中治療室への出入りの基準は病院によって異なる一方で、人工呼吸器やECMOを使う医師や病院による判断の差は生じにくいと考えている」と述べ、都の基準で集計する重症者が医療現場の実態を反映しているという考えを示しました。

また、人工呼吸器とECMOを装着すると、より多くの医師や看護師などが必要になるため、医療現場にかかる負担の大きさも分かりやすいとしています。

重症者 70代以上が半数近く

都は、人工呼吸器か「ECMO」を使っている人のみを「重症者」として毎日、集計していますが、この基準で集計している重症者の年代別の内訳が20日のモニタリング会議で初めて明らかになりました。

それによりますと、19日の時点の重症者32人のなかには、40歳未満はおらず、40代は1人、50代から60代は16人、70代以上は15人でした。

70代以上が半数近くを占めています。

また、32人の男女別では男性が25人、女性が7人でした。

病床2500床を確保

モニタリング会議では、都が重症の患者向けの病床と中等症以下の患者向けの病床をさらに50床ずつ確保したことが報告されました。

これにより、20日の時点で都内では重症の患者向けを150床、中等症以下の患者向けを2350床、合わせて2500床を確保したことになります。

また、会議では、国の基準で集計した都内の重症の患者は19日の時点で41人で、重症の患者向けの150床のうち27.3%を占めていることも報告されました。

これは、政府の分科会が、感染者が急増して医療提供体制に大きな支障が出るのを避ける対応が必要な段階だとしている「ステージIII」の1つの指標となっている25%をわずかに上回っています。

大曲センター長「重症者の数 まだ頭打ちではない 」

モニタリング会議のあと、国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は、記者団から都内の感染者数は減少傾向にあるのかと聞かれたのに対し、「慎重に捉えるべきだと思う。新規陽性者の数字が本当に下がっている可能性もあるが、お休みの時期でもあったので、検査件数が少ないことが影響しているかもしれず、現状ではわからない」と述べました。

そのうえで、「結果がみえてくるのは10日から2週間後なので、お盆休みの影響ももうしばらく見ないとわからず慎重に物事を判断すべきだと思う」と述べました。

また、重症者の推移については、「患者が一定以上増えて、重症者の数が増え始めるのにだいたい2週間の差がある。まだ頭打ちではないと思っていて、あまり楽観的にはみていない。重症の状態はすぐには改善しないので重症者の人数としては積み上がっていくことになる」と述べました。

小池知事「重症化しやすい高齢者に感染させない意識を」

都内で今月17日までの1週間に感染が確認された人のうち、感染経路がわかっている人を都が分析したところ、家庭内での感染がおよそ41%と最も多いものの、職場内や会食での感染も引き続き確認されています。

これに関連して小池知事は「家庭では日用品やタオル、歯磨きのときのコップを別々にするなど、日常生活におけるさまざまな行動にも気をつけていただきたい。今は、各世代に感染が広がっているので、なかでも重症化しやすい高齢者の皆さんに感染させないという認識を全世代で共有し意識を深めていただきたい」と呼びかけました。

また、「会食の際には万全の対策をとることや、手洗いや消毒などを徹底してお願いしたい」と呼びかけました。