米民主党バイデン氏 大統領になったらアメリカはどう変わる?

米民主党バイデン氏 大統領になったらアメリカはどう変わる?
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秋のアメリカ大統領選挙で政権奪還を目指す野党・民主党の大統領候補にバイデン前副大統領が正式に指名されました。バイデン氏は新型コロナウイルスへの対応でトランプ大統領に不満を抱く人たちに浸透をはかるとともに、温暖化対策や外交政策で違いを打ち出して、幅広い支持を得たいねらいです。
民主党は18日、2日目となる全国党大会を開き、代議員による投票の結果、バイデン前副大統領が党の大統領候補に正式に指名されました。

またバイデン氏のもと党の政策の指針となる政策綱領も採択しました。

政策綱領では新型コロナウイルス対策でのワクチンの無償提供や労働者を重視する経済政策を掲げる一方、地球温暖化対策や移民に寛容な姿勢などでトランプ政権との違いを打ち出しています。

また外交面ではアメリカ第一主義を掲げるトランプ大統領が国際協調を軽視してきたと批判し、同盟国との関係や多国間の枠組みを重視し、国際社会でのアメリカの指導力を新たな形で構築するとしています。

バイデン氏としては新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、トランプ大統領に不安や不満を抱く人たちに浸透をはかるとともに、与党・共和党でトランプ大統領の政策や言動に反発する層にも党派を超えて訴えかけ、11月の大統領選挙に向けて幅広い支持を得たいねらいです。

専門家「多国間外交に戻る」

共和党のブッシュ政権でアジア政策を統括していたホワイトハウスの元高官、マイケル・グリーン氏は、NHKの取材に対して「バイデン氏の外交はもっと伝統的な民主党の主流派の外交に戻る。それは外交による解決や国際的な機関を重視し、多国間外交を進め、気候変動に積極的に取り組む外交だ」と述べました。

そのうえでトランプ大統領のような予測不能な外交ではなく、国際協調を重視した外交政策になるという見方を示しました。

そして、「日本やアジアに対する外交・安全保障政策は党派を超えたものになる」と述べ、引き続き、日本やオーストラリアなどの同盟国を軸にインド太平洋地域を重視する戦略を進めるほか、トランプ政権よりも東南アジアの国々との外交に力を入れるのではないかという見通しを示しました。

「日本に過度な要求はしない」

さらにグリーン氏は、「バイデン氏はトランプ大統領のように日本に対して、いわゆる思いやり予算を4倍から5倍に引き上げるような過度な要求はしない」としながらも、アメリカの負担を減らし同盟国の貢献を増やす方針に変わりはなく、安全保障面で日本に何らかの負担を求めるという見方を示しました。

また、トランプ政権が参加を拒み日本が主導して発効した、TPP=環太平洋パートナーシップ協定への復帰の可能性をあげました。

グリーン氏は「バイデン陣営は、現時点では復帰の可能性を否定するか言及を避けている」とし、その理由については、前回の大統領選挙でトランプ大統領が獲得した労働組合票を奪うことを優先しているためだと分析しました。

トランプ大統領 再選で「さらに予測不能に」

一方でグリーン氏は、トランプ大統領が再選されれば、「周囲をイエスマンで一層固め、自分に異議を唱える人物を排除するだろう」とし、大統領の直観に基づく「さらに予測不能な外交が展開されるだろう」と分析しました。

そのうえで、懸念の1つとして韓国からのアメリカ軍撤退の可能性を挙げ、「政権の高官たちは反対しているものの大統領自身は前向きだ」と述べ、日本の安全保障にとっても影響を与えかねないと警告しました。

また、日本については「トランプ大統領は安倍総理大臣を個人的に好きな一方で、80年代以降、日本に対する憤りと不信感を抱いてきた。だからこそ、思いやり予算のばく大な増額要求や関税措置を実施しており、二重人格的だ」と述べ、「二重人格外交」が続くという見通しを示しました。

マイケル・グリーン氏は、共和党のブッシュ政権で重要ポストに就いていたものの、前回の大統領選挙ではトランプ氏に投票しないと表明し、今回の大統領選挙でも民主党のバイデン氏を支持すると明言しています。

「トランプ外交とは対照的」

民主党のバイデン陣営に東アジア政策を助言しているアメリカ外交問題評議会のミラ・ラップフーパー上級研究員は、NHKの取材に対し、バイデン氏は外交の面で、一国行動主義のトランプ大統領とは対照的に国際協調を重視するという見方を示しました。

この中でラップフーパー氏は、トランプ大統領が地球温暖化対策のパリ協定やイラン核合意からの離脱、それにWHO=世界保健機関からの脱退などを進め、「一国行動主義で国際社会でのアメリカの指導力を破壊してきた」と批判しました。

さらに、日本や韓国などの同盟国に対しても、アメリカ軍の駐留経費を巡り、過度な要求を行うなど同盟関係を軽視してきたとし、懸案となっている中国に対しても同盟国と協調して政策を打ち出すのではなく、関税を引き上げる貿易戦争などを一方的に始めたと指摘しました。
一方でバイデン氏の外交政策については、トランプ大統領とは対照的に国際的な枠組みや国際機関を重視するとともに中国についても日本などの同盟国と連携して対処にあたると述べ、前のオバマ政権が貿易面で中国との対抗も視野に推し進めたTPP=環太平洋パートナーシップ協定にアメリカが復帰する可能性もあるという見方を示しました。

さらに、バイデン氏の中国政策については、中国による香港での統制強化や、新疆ウイグル自治区での人権侵害、それに南シナ海での軍事拠点化などを例に挙げ、「中国の最近の強硬な姿勢を見れば、いかなる政権であってもかつてのような関与政策に戻るのは難しい」と述べ、バイデン氏が大統領になっても、中国に対しては厳しい姿勢で臨むという見通しを示しました。

また、北朝鮮やイランの核問題、気候変動の問題の解決のためには、「中国と協力をせざるをえない」とする一方、「アメリカのかつての政権は協力を引き出すために他の分野で圧力を控えるという間違いがあった」とも指摘し、新政権は中国から協力を引き出すために南シナ海の問題などで譲歩しないことが重要だと強調しました。

共和党の重鎮 パウエル元国務長官も登場

今回の民主党大会では初日に与党・共和党からケーシック前オハイオ州知事をはじめ、4人の党員が異例の応援演説を行ったのに続き、2日目は共和党の重鎮、パウエル元国務長官が登場して民主党のバイデン氏の支持を表明しました。

パウエル氏は演説で「われわれの国は分断され、あらゆる手段を使って分断をはかる大統領が存在している」とトランプ大統領を批判したうえで「バイデン氏こそ国を結束させ世界でアメリカの指導力を取り戻し、同盟国との関係も立て直せる」と強い期待を示しました。

またこの日は共和党のかつての大統領候補で2年前に亡くなったマケイン元上院議員の妻がマケイン氏とバイデン氏との党派を超えた友情を語ったビデオも放送されました。ビデオでは両氏が政党は異なっていても国益のために協力しあってきた歴史を伝え、共和党の支持者にも訴えかける内容となっています。

2日目の党大会のテーマは「リーダーシップの大切さ」で民主党としてはバイデン氏が共和党とも連携して国に尽くしてきたとして、その指導力をアピールすることで、党派を超えた結束を呼びかけるねらいがあるとみられます。

共和党内ではトランプ大統領が依然、高い支持率を維持していますが、バイデン陣営は新型コロナウイルスの感染拡大や人種差別の抗議デモへの大統領の対応に失望し離反する党員も増えているとみて、さらなる取り込みをはかる考えです。