コロナ重症者数が増加傾向 大阪は東京の2倍以上 その理由とは

コロナ重症者数が増加傾向 大阪は東京の2倍以上 その理由とは
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新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、このところ重症者の数が増加する傾向にあります。最も感染者が多いのは東京都ですが、一方、重症者の数を見ると、17日の時点で、大阪府が東京都の2倍以上に上っています。「重症」かどうかについては厚生労働省が基準を定めていますが、東京都と大阪府はそれぞれ異なる基準で重症者の数を取りまとめていることが分かりました。

大阪 吉村知事「高齢者は早めの受診を」

大阪府内では、今月に入ってから、新型コロナウイルスの重症患者が急増しています。

大阪府内では、新型コロナウイルスの重症患者が1か月前の先月18日には4人、重症患者を受け入れる病床の使用率は2.1%でしたが、17日の時点で、70人、37.2%と、今月に入って急増しています。また、17日は、70代から90代の高齢の男女合わせて5人が死亡しました。

大阪府の吉村知事は、記者団に対し「東京との比較で言うと、重症者の基準が大阪と東京で違っているが、それだけで理由の説明がつくものではない。大阪のほうが高齢者との距離が現役世代と近いというのも1つの理由かと思うが、いろいろな要因が複合していると思う」と述べ、19日に府の対策本部会議を開いて、状況を詳しく分析する考えを示しました。

そのうえで、「高齢者は感染が分かった段階で重症の人がいる。そうなる前に、なんらかの症状が出た場合にはできるだけ早めの受診をお願いする」と述べ、高齢者に対し、症状が出た場合は、早めに検査を受けるよう呼びかけていく考えを示しました。

大阪府 重症者の基準と患者の推移

大阪府によりますと、新型コロナウイルスに感染し、治療を受けている患者を「重症」と判断する基準は、人工呼吸器の装着や気管挿管、それに人工心肺装置「ECMO」の装着やICU=集中治療室での治療の4つのうち、いずれかに該当する場合としています。

この基準にあてはまる大阪府の重症患者は、
▽1か月前の先月18日は4人、重症患者を受け入れる病床の使用率は2.1%でしたが、
▽今月1日の時点では20人で10.6%、
▽17日の時点では70人で37.2%と、今月に入って大幅に増えています。

特に目立つのが高齢者で、17日までの1週間に発表された重症患者43人を年代別に見ると、60代がおよそ2割、70代がおよそ4割、80代がおよそ3割と60代以上が9割を占めています。ほかは、50代が3人、30代と90代が1人でした。

小池都知事「高齢者対策進める」

東京都内では、新型コロナウイルスに感染した重症の患者が18日の時点で31人となり、ことし5月30日以来、30人を超えました。

東京都の小池知事は、都庁で記者団に対し「きょうは重症者がきのうよりも4人増えて31人となった。重症者向けの病床をすでに100床準備しているが、高齢者が重症になる確率が高いので、高齢者対策をしっかり進めていきたい」と述べました。

東京都「ECMO使わず集中治療室に」カウントせず

東京都は新型コロナウイルスに感染した人のうち、人工呼吸器を使っている人と、「ECMO」と呼ばれる人工心肺装置による治療を受けている人を重症患者として集計しています。

一方で、人工呼吸器と「ECMO」を使わず集中治療室に入っている人は重症患者にカウントしていないということです。

これについて、都は「感染対策や病床の関係で重症でなくても集中治療室に入っている人がいると現場から聞いているので、専門家からもアドバイスをもらって現場の実態をより反映させる形でカウントしている」と説明しています。

都内の重症の患者は18日の時点で31人となっています。

これについて、都は、4月や5月のときと比べて、最近は1日の検査件数が増えていて、症状がない高齢者の感染を早期に見つけて症状が悪化する前に対応できているとしています。

専門家「徐々に高齢者の感染増加」

全国の重症者数の推移について感染症に詳しい東京医科大学の濱田篤郎教授は「感染者の数はここ最近は横ばいとなっているが、感染者の数が増えてから少し遅れて重症になる人が増えてくるため、今後もしばらく注意が必要だ」と指摘しています。

このうち東京の状況について、濱田教授は「これまで東京は若い人たちを中心に感染が広がっていたが、今月から少しずつではあるが高齢者の割合が増えるなど状況が変わってきたように感じている。最近は若い人の感染が中心で、重症化する人が少ない印象があったかもしれないが、高齢の感染者が増えると重症者の数は増え、医療現場のひっ迫を招きかねない状況は変わっていない。これまで通り『3密』の環境を避けるなど感染対策を意識して生活してほしい」と話しています。

一方、重症者が増えている地域があることについては「大阪は先月から急激に感染者が増え、重症化するリスクの高い高齢者も感染したことが原因だと考えられる。今後、高齢者に感染を広げないようにほかの地域以上に注意が必要ではないか」と話しています。

厚労省「基準にのっとって報告して」

新型コロナウイルスに感染した人について、厚生労働省は「重症者」の基準を定め、ことし4月に都道府県などに通知しています。

具体的には、▽集中治療室などに入っているか、▽人工呼吸器や、▽「ECMO」と呼ばれる人工心肺装置が必要な状態か、いずれかに当てはまる場合は重症者として報告するよう求めています。

厚生労働省の担当者は「重症者の基準は示しているとおりなので、都道府県などは基準にのっとって報告してほしい」と話しています。