鳥貴族 コロナ禍での逆風の現状と今後の戦略を創業社長が語る

鳥貴族 コロナ禍での逆風の現状と今後の戦略を創業社長が語る
新型コロナウイルスの感染が再び広がるなか、居酒屋業界には過去、経験がないような逆風が吹き荒れています。外食の自粛、自治体からの営業時間短縮や休業要請。繁華街でよく見かける焼き鳥居酒屋チェーン「鳥貴族」も例外ではありません。創業者の大倉忠司社長にインタビューして、この逆風にどう立ち向かおうとしているのか、心の持ちようを聞きました。(大阪放送局記者 甲木智和)

逆風まっただ中

「ジュー」という音とともに広がる食欲をそそる香り。ぱりっとした皮やジューシーなもも肉。

鳥貴族の最大の特徴はこうした焼き鳥からサラダ、ビールまで、すべてのメニューが298円の均一価格である点です。
懐がさびしいときも気軽に立ち寄れると根強い人気を誇っています。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて4月と5月には直営店を臨時休業、売り上げが激減しました。直近の決算は赤字となり、再び感染が広がっていることで営業時間の短縮を迫られるなど、厳しい経営環境が続いています。

創業者の大倉忠司社長に今の経営環境や今後の戦略について、オンラインでインタビューしました。
大倉社長
「感染者数の拡大に反比例する形で客数が少なくなってきていて、関東が最も影響を受けています。自粛要請ということばを知事が発言すると、経営に対する影響は出てきますね。こんな経験は経営者としては初めてです」

厳しい時代は過去にも

大倉社長が創業したのは1985年、25歳のとき。出身地の東大阪市にオープンした1号店では当初、赤字続きでした。試行錯誤を重ねる中、辞めていった従業員から厳しいことばをかけられることもあったといいます。
大倉社長
「創業してから会社が順調に成長できなかったころ、辞めていった社員から『こんな会社は大きくならない』とか『あんなにころころ考えが変わる社長にはついていけない』とか、結構厳しい、辛辣(しんらつ)なことばを言われて、辞めていかれたことがありましたね。赤字が続いてこのままでは倒産してしまう大きな危機でした」。

窮地を救ったのは“驚き”による差別化

窮地に立たされて決断したのは、すべてのメニューを均一価格にすること。もともとは150円、250円、350円という3つの価格設定でしたが、これを250円に一本化しました。

ただ、料理が異なると仕入れ値も変わります。料理ごとに利益がどれだけ残るのかわからず、経営上は大きなリスクを伴いました。それでもほかの居酒屋と差別化を図りたいと、あえて踏み切ります。
大倉社長
「このままでは倒産してしまうので一か八かというのもありました。均一価格にはお得な商品を探す楽しみがあるのかなと思っています。お客様にびっくりしていただきたい、喜んでいただきたい、感動していただきたい。店の利益を優先するとお客様には喜んでいただけない店になってしまいます」

事業が軌道に乗る秘けつは

事業が軌道に乗った秘けつは、コストを抑えるところと、こだわるところを明確に分けたことです。
コスト抑制の手段の1つは店舗の立地です。飲食店は人通りの多い路面店が理想とされますが、家賃が安い2階以上や地下を中心に店舗を展開しています。また、焼き台は炭火焼きにこだわらず、電気式がほとんどです。安定した火力で早く焼けることを重視しています。

その一方でこだわるのが、仕込みです。国産の鶏肉を使い、それぞれの店舗で串打ちまで行っています。私が取材で訪れたときも、店員が包丁で鶏肉を切って丁寧に串打ちしていました。「安さ」のイメージが強かったので、私には意外な発見でした。
大倉社長
「全国にチェーン展開すると調理する場を集約するセントラルキッチンを採用するケースが多いんですが、当時は、そうすると冷凍する必要が出て品質の面で必ずしもよくなかったんです。国産の新鮮な鶏肉を自分のお店で仕込んで提供する、ということをチェーン展開しても守ってきたことは大きかったと思います」

コロナ禍でも新たな挑戦

新型コロナウイルスの逆風にさらされるなかでも大倉社長は新たな仕掛けを導入。ことし6月に新たな形態の店舗をオープンしました。特徴はサイズが小さいこと。座席はカウンター中心で18席しかありません。

ねらいは2つあります。1つは従業員の独立心を支援し、やる気を引き出すこと。鳥貴族では将来、独立して店のオーナーになりたいと夢をもつ従業員が少なからずいるそうです。通常の店舗は個人で投資するには規模が大きすぎます。小さい店舗であれば初期投資が少なくて済み、独立を後押しできるというのです。
もう1つのねらいは新たな市場の獲得です。大型の店舗であれば大勢の客が見込める繁華街に出店せざるをえませんが、店のサイズを小さくしたことで比較的人口の少ない郊外エリアの市場も取り込もうというのです。焼き鳥店ならでは、まさに「一石二“鳥”」戦略ともいえます。
大倉社長
「小さい店を1店舗でもずっと経営していきたいんですという従業員が案外いたので、社員に働きがいをもってもらうためのコースをつくってあげたいという思いでした。社員が幸せでなければお客様を幸せにできないし、会社は成長しないとずっと思っています」。

危機のときこそ創造力を

厳しい経営環境が続く中、どのように前を向けばいいのか。大倉社長が大事にしている考え方を聞きました。
大倉社長
「楽観的と悲観的、その両極端を絶えず持つようにしています。経営者ですし最悪のシナリオは考えますが、その反面、このピンチを逆にどうチャンスにしようかと。平穏に経営していたら出なかった発想、危機だからこその新たな発想、それがなにかを考えると逆にワクワクします。それと座右の銘は『わがはからいにあらず』という親鸞のことばです。今の自分があるのは他人のおかげで、自分1人の力ではない、自分1人では経営1つできないという感謝の気持ちも強くなりました」。

次なる挑戦は

大倉社長は今、新たなビジネスの柱を立ち上げようと検討を進めています。詳細は明らかになっていませんが、これまでの強みをいかした新しい形を模索するとのこと。コロナショックに屈することなく、危機時にワクワクする心の持ちよう、おおいに見習いたいと思いました。
大阪放送局記者
甲木 智和
平成19年入局
大津局、経済部を経て大阪局で経済担当
電機・金融・財界などを幅広く取材