「介護ロボット」開発や導入支援の窓口設置 コロナ対策も期待

「介護ロボット」開発や導入支援の窓口設置 コロナ対策も期待
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介護現場で活躍する「介護ロボット」の開発や導入を支援する、厚生労働省の窓口が新たに設置されました。新型コロナウイルスの感染対策としても期待されています。
厚生労働省は現場の人手不足に対応するため「介護ロボット」の普及を進めていて、開発する企業を支援する拠点6か所と介護事業所向けの相談窓口11か所を今月、全国各地に設置しました。

このうち、東京 品川区に設けられた、企業の実証実験などを支援する拠点では、開発中の「介護ロボット」およそ30種類の展示も行われています。
介護施設を再現した部屋に展示されているのは、ベッドの半分が分離して車いすになるロボット。

寝たきりの高齢者を車いすに乗せるには通常2人の介護職員が必要ですが、このロボットがあれば、職員1人で対応できます。
ほかにも、離れた家族がタブレットを通じて操作し、高齢者と会話できるロボットや食事を配膳するロボットも展示されています。
いずれも人と人との接触を控えることにつながり、新型コロナウイルスの感染対策としても期待されています。

厚生労働省の委託を受けてこの拠点を運営する「Future CareLab in Japan」の片岡眞一郎所長は「新型コロナウイルスへの対応として、非接触を促進するロボットが注目されている。より現場で使いやすい介護ロボットとなるよう企業側と介護現場のニーズをマッチングさせたい」と話していました。

厚生労働省は、ロボットの普及を後押しするため、導入する介護事業所に対して最大で1台100万円を上限に補助することにしています。

導入を進めている施設では

介護ロボットの導入を積極的に進めている施設もあります。

東京 大田区にある社会福祉法人「善光会」の介護施設では、業務の負担を減らすため、以前から介護ロボットやIT機器の導入を進めてきましたが、新型コロナウイルスへの対応にも効果を発揮したといいます。

新型コロナウイルスの感染予防には3密を回避する対応が必要ですが、介護施設では特有の難しさがあります。

例えば、高齢者の身体や認知機能を維持するために必要な、リハビリやレクリエーション。

厚生労働省は感染予防のため、声を出す機会をできるかぎり少なくして行うよう求めていますが、耳が聞こえにくい高齢者も多く、実行するのは難しいといいます。

この施設では人の代わりに、ロボットが体操や歌の指導をすることで、対応しているということです。

また、夜の就寝時間帯は安否確認や排せつの介助のため、通常は一晩に何度も高齢者の居室に職員が入りますが、腹部に装着して排尿のタイミングを予測したり、シーツの下に敷いて呼吸の状態を自動で検知したりするロボットを導入することで、接触する回数を減らしているということです。

介護ロボットが確認した高齢者の状態は、職員が携帯するスマートフォンに記録され、勤務交代時に口頭で申し送りをしなくても情報共有ができます。

さらに、職員同士のやりとりもインカムを通じて行うなどして、職員間の接触も極力抑えているということです。

この施設には他の介護事業所などから「新型コロナウイルスへの対応として介護ロボットを導入したいがどのようにすればいいか」といった相談が相次いで寄せられているということです。

施設を運営する「善光会」の佐々木良明さんは「新型コロナウイルスの感染予防のため、業務の工程が増えているが、介護ロボットの活用でうまく対応できていると感じている。今後も導入を進め、ウイルス対策をする中でも介護の質を保っていきたい」と話していました。

専門家「本質的な人手不足対策と両輪で」

介護現場に詳しい東洋大学の早坂聡久准教授は「介護現場はもともと深刻な人手不足だったが、新型コロナウイルスの感染対応の業務がさらに増え、人手不足に拍車がかかるおそれがある。介護ロボットによって業務負担の軽減だけでなく、職員のモチベーションが高まる効果も期待され、行政は金銭的な支援も含め、普及を進めてほしい」と話しています。

そのうえで「介護は専門的な仕事であり、ロボットがすべてを取って代われるわけではない。あくまでも周辺業務の補助としてロボットを活用することで、介護職が専門的な業務に集中できる環境を整えていくことが必要だ。また、ロボットだけでなく、人材の掘り起こしや報酬の改善など本質的な人手不足対策も両輪で進めてほしい」と指摘しました。