「かき氷、始めました」GDP歴史的悪化に飲食店は

「かき氷、始めました」GDP歴史的悪化に飲食店は
家族や職場の仲間、友人たちと街にでかけ、食事をしながらわいわい語り合う日常が、新型コロナウイルスで失われてしまいました。4月から6月の日本の実質GDP(国内総生産)は、年率でマイナス27.8%という歴史的な落ち込みを記録。景気の実態は深刻です。東京都は8月3日から、お酒を出す飲食店などに営業時間の短縮を求め、この夏をどうやって乗り切るか、飲食店は試行錯誤を続けています。何かヒントになる試みを伝えることができないか。そう思い、街を見てきました。
(経済部記者 長野幸代)

猛暑で話題のかき氷 実は…

変わった店がある、という話を聞いて向かったのは、東京・足立区。

入り口には風鈴がずらり。涼しげな音が響き、のれんには「純氷かき氷 ゲンヤ堂」。ことし5月下旬にオープンしたかき氷屋さんです。連日の暑さの中、カップルや近所の人たちが次々に訪れていました。
売れ筋は、1つ1250円!するメロンが山盛りの「まるごとメロンミルク」。思わずSNSに投稿したくなるような見映えです。

ただ、見たところ、普通のかき氷屋さん。変わった店には見えません。

ところが、夕方になったとたん店の雰囲気が一変。店員さんの制服が変わり、炭火が登場。入り口ののれんも取り替えられ「生つくね 元屋」と。
そうです。このお店は、実は焼き鳥店。夜は焼き鳥、昼はかき氷と姿を変え営業しているのです。東京・千葉で16店を展開していますが、この店などグループ4店で、かき氷を始めたということです。
KUURAKU 齋藤さん
「コロナの影響で夜の売り上げが大きく下がってしまったのでお昼に何か始めようと思いましたが、どこの飲食店もランチを始めたので、ランチをしても戦えないと思いました。そこで、夏にマスクをしているととても暑いので、ひんやりとしたスイーツ需要も伸びるのではないかと考えて、かき氷で新しくブランドを展開することになったんです」
とは言っても、ふだん焼き鳥を焼くスタッフ。かき氷を作るのは初めてです。オープン前の2週間は、毎日氷を削ったそうです。ふわっとした氷の食感を出すために削る歯の角度を調整したり、かき氷の山が崩れてしまわないようシロップを改良したりと研究を重ねました。かき氷の価格帯は1000円前後で安くはないですが、カップルや女性には人気だということです。

売り上げの4分の1がかき氷

このグループは、緊急事態宣言を受けて4月3日から5月27日まで休業。営業を再開して6月下旬には、来店客数が前の年のおよそ7割まで戻りました。

しかし感染者数の増加で客足は再び遠のき、8月の夜の売り上げは前の年の3割まで減少してしまいました。一方、昼のかき氷は好調で、全体の売り上げの4分の1を占める店も出てきました。

このため、ほかの店でもかき氷を始めます。さらに、冬には焼き芋やお汁粉専門店に衣がえして営業することを検討しています。
ほかにも都心のオフィスビルにキッチンカーを走らせたり、焼き鳥の通販やデリバリーサービスを始めたりと試行錯誤を続けています。感染が収束するまで、何をすれば稼げるか、必死に探っています。
KUURAKU 齋藤さん
「お客さまは、本当は外食したいけど、コロナ禍で我慢されていると考えています。私たちも耐え抜いて、お客さまが来ることができないのであればキッチンカーで届けに行ったり、夜がだめならお昼のブランドを展開したりと、どんどん新しいことにチャレンジしようと思います」

広がりはじめた昼・夜 別営業

昼と夜とで店を変える取り組みは広がり始めています。飲食チェーンのダイヤモンドダイニングは、東京・赤坂と新橋のイタリアンレストランを、お昼の時間帯はステーキ専門店にしました。
メニューはステーキのみで、肉の量は150グラムから450グラムまで選べる仕組みです。

当初はパスタなどでランチを始めましたが売り上げは伸びず、インパクトをねらう戦略に出たということです。

いまは全体の売り上げの30%ほどをステーキであげるようになったとのこと。夜の売り上げの落ち込みをどう補うのか、競合が多い中で、ニーズを取り込む知恵比べが続いています。

さくっと立ち飲み、にニーズあり?

大手飲食チェーンの「プロント」は先月(7月)29日、東京・港区に立ち飲みスタイルの店をオープンしました。
ターゲットは女性。仕事帰りに、1人、もしくは、ごく少人数で、ふらっと立ち寄ってもらい、さくっと飲食するニーズがあると見たのです。

一般的な居酒屋のように座って食べることもできますが、基本は立ち飲みスタイルです。
これまで展開してきたカフェや居酒屋では、女子会のニーズを想定していました。サラダや生ハムなどを、大皿で提供しトングで取り分けるメニューもそろえましたが、今回の店では、料理はすべて1人分を小皿で提供します。
プロント 谷口さん
「コロナの影響で、大人数が集まって食べる機会はなくなりましたが、宅配やテイクアウトではなく、1人や少人数で、外で食べたいというお客さんのニーズを感じています。まだ手探りですが、感染防止対策を徹底しながら、新しい店の形を作っていきたい」

客は戻らない、を前提に

今回、訪ねた飲食店はどこも「感染が収束しないかぎり、客は戻らない」という前提にたって模索を続けています。飲食店の業態開発やプロデュースの専門家は、業界の現状をこう分析します。
アビリティアソシエーション 朝里勇人社長
「業態転換するか、じっと待つか、廃業するか。今はその3つになっている。テイクアウトを始める店には、さまざまな助成金があるが、それを知らずに将来を悲観して廃業する店もある。新しく何かを始めるのは、資金も体力も必要なので慎重になるが、フットワークを軽くしないと、今のままでは本当に生き残れない」
「変化に対応する」「チャレンジを続ける」。どんな業界であっても常に求められていた課題が、感染拡大という逆風で、身近な飲食業界にいま顕著に表れています。試行錯誤の中に、この状況を乗り越えるヒントがあると思って、取材を続けていきます。
経済部記者
長野 幸代
平成23年入局
岐阜放送局、鹿児島放送局を経て
現在、財務省を担当