新型コロナのワクチン情報狙いサイバー攻撃 海外機関に相次ぐ

新型コロナのワクチン情報狙いサイバー攻撃 海外機関に相次ぐ
新型コロナウイルスのワクチンをめぐり、開発情報を盗み取るためのサイバー攻撃が海外の研究機関などに相次いでいることから、厚生労働省は日本でもリスクが高まっているとして、国内の製薬会社などに対策を呼びかけています。
新型コロナウイルスのワクチンは各国で開発が進められていますが、アメリカやイギリスなどの情報機関は先月、ロシアの情報機関が研究機関などから開発に関する情報を盗み取るためのサイバー攻撃に関与していたとする声明を発表し、警戒を呼びかけています。

サイバー攻撃は国境を越えて世界的な規模で行われるため、厚生労働省は日本でもリスクが高まっているとして、国内の製薬会社や研究機関などに対策を呼びかけています。

複雑なパスワードを用いてアカウントを保護したうえで、ソフトウェアを最新の状態に保つことに加え、定期的にすべてのファイルでウイルスをスキャンすることなどを求めています。

厚生労働省によりますと、これまでのところ国内では新型コロナウイルスに関連してサイバー攻撃を受け被害が出たという報告はないということです。

国内のワクチン生産の状況

新型コロナウイルスのワクチンの国内生産をめぐっては、厚生労働省が6つの製薬会社などの事業に合わせて900億円余りを助成することにしています。

助成の対象となっているのは、武田薬品工業、塩野義製薬、アストラゼネカ、アンジェス、KMバイオロジクス、第一三共の6社です。

海外に本社がある企業も含まれていますが、それぞれが日本国内でのワクチン生産を目指して事業を進めています。

厚生労働省はこれまでに、イギリスのアストラゼネカとアメリカのファイザーの2社との間で、開発に成功した場合、供給を受けることで合意していますが、十分な量を確保するため、国内でも生産体制を整備する必要があるとしています。

サイバー攻撃への備え 医療分野全体の課題

サイバー攻撃への備えはワクチン開発だけでなく、医療分野全体にとっての課題となっています。

厚生労働省によりますと、国内の医療機関がサイバー攻撃を受けたとみられる事例は、これまで複数報告されています。

警察庁によりますと、このうち平成29年には病院のパソコンが「身代金要求型」と呼ばれるウイルスに感染し、データが暗号化されて利用できなくなり、解除するための金銭が要求されたということです。

医療機関のサイバーセキュリティ対策をめぐっては、平成17年に国のガイドラインが策定され、定期的に見直しが重ねられています。

ガイドラインではセキュリティ責任者を置くことや、パスワードに加えて指紋認証などを設定すること、インターネットに接続された機器の適切な管理を行うことなどを求めています。