何でも拭いちゃだめ?!~アルコール消毒とどうつきあうか

何でも拭いちゃだめ?!~アルコール消毒とどうつきあうか
ある日のこと。飛行機の中で、客室乗務員のこんなアナウンスが聞こえてきました。「アルコールの除菌シートで窓を拭くことはお控えください」。人の手が触れる部分を消毒するためのシート。あっちでふきふき、こっちでふきふきと、コロナの時代、手放せない存在になったという人も多いと思います。それなのに、窓は拭けないってどういうこと?使っちゃいけないものも多いのかな?夏空を飛ぶ機内で浮かんだ「ハテナ」を取材しました。(ネットワーク報道部記者 有吉桃子・郡義之・鮎合真介)

“窓が劣化のおそれ”

まず話を聞いたのは、機内アナウンスをした日本航空です。
「アルコール入りのシートで窓を拭くと劣化してしまうんです」
広報担当者によりますと、飛行機の窓は内部の気圧を一定に保つため3重構造になっていて、機内側はアクリル樹脂でできています。

アルコールが触れると、運航や安全に支障はないものの、その部分が曇ったりひび割れしたりするおそれがあるそうです。

日本航空は新型コロナ対策として、ことし6月中旬から乗客にアルコール入りのシートを配るサービスを始め、それに合わせて注意喚起のアナウンスも行っているということです。
日本航空広報部
「このご時世、拭きたくなる気持ちも分かりますが、機内の清掃や消毒はしっかり行っていますので、どうかご理解ください」

ネットには不安の声も

SNSでは、アルコール消毒で物を傷めた体験談や、不安の声を目にします。
「アルコールで床拭いたら白くなってしまった…」

「ピアノの鍵盤はアルコールで拭いたら絶対だめ。アルコールが付いた手でピアノを弾くのもNG!鍵盤が割れてきます」

「バッグとかお財布とか多分アルコールで拭いちゃいけないよね?と思いながら拭いてます」
実際のところ、どんなものに注意が必要なのでしょうか。

注意するのは…

アルコールについての調査研究を行う、メーカーなどで作る一般社団法人「アルコール協会」の本城薫専務理事に聞きました。
・ニスやラッカー塗りの家具などに使うと、表面が白くなったりひび割れたりする。

・塗料や接着剤は溶けるおそれがある。

・革製品は光沢をなくすことがある。

・一部のプラスチックは透明でなくなるおそれがある。
…とのことです。革のバッグや財布も、目立たないところで確かめたほうがよさそうですね。

そして、いちばん強調していたのは火災への注意です。アルコールは引火しやすいため、コンロやろうそく、線香、花火など火気の近くでは絶対に使わないでほしいと呼びかけています。
アルコール協会 本城薫 専務理事
「アルコール消毒は多くの物に有効で気にしすぎる必要はないと思いますが、素材によっては劣化・変質することがあります。使うものやアルコールの説明書きをよく確かめてもらいたい。そして火災には十分注意してほしい」

スマホは大丈夫?

では、一日中、手に触れることが多いスマートフォンはアルコール消毒していいのでしょうか。アップルやシャープ、京セラなどの各メーカーは、それぞれのウェブサイトにアルコールを使った手入れのポイントを掲載しています。

各社で内容は異なりますが、以下のようなことが書かれています。
・手入れの際はケーブルなどをすべて外して電源を切ること

・本体に直接スプレーしないこと

・開口部に液体が入らないようにすること

・少量のアルコールが含まれた柔らかい布でやさしく拭き取ること
機種ごとに詳しい説明が書かれていることもあるので、確かめるといいようです。

パソコンは?

それでは、パソコンはどうでしょうか。

本体やキーボードについて、あるメーカーはウェブサイトで、ケーブルや周辺機器などをすべて外したうえで電源を落とし、アルコールをしみこませた柔らかい布で拭くようすすめています。

一方で、このメーカーを含め、各社は、「アルコールなどを使うと機器が劣化したり損傷したりするおそれもある」として、薬剤の注意事項を確認したり、一日に使う回数を限ったりするよう求めています。

さらに、「ウェブカメラに消毒薬を使うと曇りの原因になる」などと、使ってはいけない機器を紹介しているところもあります。
なかなか複雑なようで、大手メーカー、NECの広報室に聞いてみました。
「消毒のやり方にもよりますが、故障の原因になる場合があります」
このところ、「パソコンをどう消毒したらいいか」という問い合わせが相次いでいますが、感染症にこれほど警戒する事態は想定しておらず、どのような方法で消毒すればどれほど効果があるかや、課題の有無について、現在、詳しい検証を進めているということです。
NEC広報室
「複数の人でパソコンを共用する場合など衛生面を気にする人も多いと思いますが、どう消毒すればいいか、詳しい検証をしています。1日も早く正確な情報を提供したい」

ペットは

衛生管理が気になるのは物だけではありません。ペットのアルコール消毒はどうなのでしょうか。東京都獣医師会で感染症対策を担当する中川動物病院の中川清志院長に聞きました。
中川院長
「犬やネコも目や鼻孔などを避ければアルコールで消毒できますが、頻繁に使うと皮膚や毛が荒れるし、アルコールに弱い場合もあるのでおすすめはしていません」

「今のところペットを介して感染が広がったという情報はないので、いつもどおり熱中症を避けながら散歩し、いつもどおりの手入れをしてあげれば十分と考えます。ペットがほかの人の飛まつを浴びるなどした場合は体を洗ってあげてください」
そして、ペットを守るために最も重要なのは、飼い主が感染しないことだと指摘します。
中川院長
「例えば、ドッグランなどでは飼い主どうしが立ち話をするなど、人と人が近づきやすいです。ほかの飼い主と距離を保ち、密を避けることが大事です」

肌のトラブル

周りには、1日に何度もアルコール消毒をして手が荒れたりかぶれたりしたという人もいます。

「アルコール協会」は、「肌の弱い人や手にけがをしている場合は、手荒れがひどくなることもあるので注意してほしい。手荒れが気になるときはハンドクリームで脂分を補い、手を保護してほしい」と話しています。

アルコールがだめなら

ウイルス対策に効果があるものの使う際には工夫も必要なアルコール。使えない場合はどうすればいいのでしょうか。厚生労働省の担当者はこう話しています。
厚生労働省
「手や指のウイルス対策で最も効果が高いのは流水とせっけんを使った手洗いなので、まずは手洗いを徹底してほしい。物についても、感染した人がいなければ通常の清掃方法で十分です。それでも心配だったり、共用の物を消毒したりしたい時はアルコール以外に家庭用洗剤や塩素系漂白剤などを使う方法もあるので、適した方法を選んでほしい」