JR九州「ななつ星」運行再開へ 新型コロナと豪雨災害で運休

JR九州「ななつ星」運行再開へ 新型コロナと豪雨災害で運休
新型コロナウイルスと豪雨災害の影響で5か月余り運休が続いたJR九州の豪華寝台列車「ななつ星」が、15日運行を再開します。
JR九州の豪華寝台列車「ななつ星」は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響でことし3月から運休したのに続いて、再開を目前に控えた先月初めには、豪雨災害のため、熊本県内の肥薩線や大分県内の久大本線に甚大な被害が出て運行ルートが寸断され、運休期間の延長を余儀なくされていました。

JR九州は、豪雨災害で被災した路線の代わりに、平成28年の熊本地震で大きな被害が出て、今月8日、4年4か月ぶりに全線で通れるようになった豊肥本線をルートに組み込み、15日、「ななつ星」の運行を再開します。

再開に当たってJR九州は、新型コロナウイルスの感染防止のため、定員を半数近くに減らすなどの対策を講じ、今月4日から9日にかけて、本番と同じ日程で訓練運行を2回行って、乗務員などが対策の手順を確認したということです。

JR九州クルーズトレイン本部の松尾英典本部長は、「やっとの思いで再開することができる。感染拡大のなか、乗客へのサービスと感染防止対策の両立に向け、緊張感を持って仕事をしたい」と話すとともに、「訓練運行で沿線の方から『お帰りなさい』と迎えられ、感動した。期待を裏切らないよう、万全の態勢で再開に臨みたい」と話していました。

「ななつ星」とは

JR九州の「ななつ星」は、周遊型の豪華寝台列車の先駆けとされます。

JR各社が運行する周遊型の豪華寝台列車としては、ほかに、JR東日本の「トランスイート四季島」や、JR西日本の「トワイライトエクスプレス瑞風」があり、平成25年に運行を始めた「ななつ星」は、その先駆けとされます。

8両編成のうち7両ある客車の中にはダイニングカーやラウンジカーも備え、客室が14室あり、乗客の定員は30人です。

工業デザイナーの水戸岡鋭治さんが、車体や内装などを手がけました。

1泊2日または3泊4日で、九州各地の観光地をめぐるコースが組まれ、九州7県をつなぐことが、名前の由来の一つとされています。

感染防止対策は

豪華寝台列車「ななつ星」の再開に当たり、JR九州は、乗客の定員を半数近くに減らすなどの感染防止対策を講じたということです。

JR九州は、「ななつ星」での最大の感染防止対策として、いわゆる「密」な状態を避けるために、乗客の定員を30人から16人に減らしたことをあげています。

これによって、乗客が食事をする2つの車両が、「密」な状態にならないようにし、14ある豪華な客室の8部屋しか使わないことで乗客どうしの距離を確保するとしています。

訓練運行では、社員らが乗客役を務めて乗務員などが感染防止対策の手順を確認し、今月8日から翌日にかけての訓練運行の同乗取材では、列車に乗り込む際に、体温のチェックと手の消毒が求められました。

乗客が食事する車両の一つ、1号車の「ラウンジカー」では、乗務員が、乗客のグループごとに距離を確保するため、互い違いのテーブルに案内していました。

また、乗客から写真を撮影してほしいと頼まれた乗務員は、スマートフォンを受け取る前に自分の手を消毒し、返却する際にはスマートフォンを消毒液で拭き取っていました。

このほかにも、毎朝、朝食前に乗務員が乗客の体温を測定したり、乗務員が車内を移動するたびに、通路の手すりなどを消毒したりといった対策を確認していました。

JR九州によりますと、客室ごとに配備された空調機器を使えば、計算上、15分に1回空気が入れ代わるということで、乗客に対し、客室の空調を切らないよう求めるということです。

「ななつ星」クルーの塩島吉博さんは「感染を広げてはならないと、強い緊張感を持っています。運休期間中に真剣に考えた対策を、全員が入念に行って、絶対に感染が起きないようにしていきたい」と話していました。

豪雨災害の影響は

JR九州の「ななつ星」は、新型コロナウイルスの影響による運休をへて、先月に再開する予定でしたが、九州各地を襲った豪雨災害でルートが寸断され、運休期間の延長を余儀なくされました。

「ななつ星」は、当初、感染防止対策を確認する訓練運行を先月7日から行ったうえで、先月14日に運行を再開する予定でした。

ところが、訓練運行の直前に起きた豪雨災害で、熊本県内の肥薩線や大分県内の久大本線で、合わせて3本の鉄橋が流失するなど甚大な被害が出て、長期にわたる不通が避けられなくなり、「ななつ星」のルートも寸断されました。

運休期間の延長を余儀なくされたJR九州は、新たなルートの検討を進めた結果、今月8日、熊本地震から4年4か月ぶりに全線で通れるようになった熊本県の豊肥本線をルートに組み込むことを決めました。

「ななつ星」の運休は、豪雨災害の影響でさらに1か月延びて5か月余りにもおよび、今月15日、ようやく再開にこぎ着ける見込みです。

JR九州クルーズトレイン本部の新山夏江課長代理は「地震から復活した豊肥本線を通ることで、豪雨災害の被災地の人たちにも、間接的にエールを送れればと考えている。豪雨災害で寸断された九州7県をつなぐルートを、いつかまた結べる日が来ることを願っている」と話していました。

熊本地震から復旧を果たした豊肥本線へ

平成28年の熊本地震からの復旧を果たして全線で通れるようになったJR豊肥本線では、4年ぶりに姿を現した豪華寝台列車「ななつ星」を、大勢の地元の人や鉄道ファンが出迎えました。

熊本地震で大きな被害が出たJR豊肥本線では、今月8日、4年4か月ぶりに全線で通れるようになり、翌9日には、JR九州の豪華寝台列車「ななつ星」が、再開前の訓練運行で、熊本地震以来初めて被災した区間を走りました。

豊肥本線の各駅や沿線の道路などでは、4年ぶりに帰ってきた「ななつ星」を一目見ようと、早朝から、地元の人たちや鉄道ファンが集まり、カメラのシャッターを切ったり手を振ったりしていました。

乗客を乗せたルートの折り返しとなる熊本県の阿蘇駅でも、夏休み中の家族連れなどが大勢集まり、停車中の「ななつ星」の車体に触れたり、列車から降りた乗務員とことばを交わしたりしていました。

列車を見に来た男性は、「阿蘇の雄大な風景のなかを走る姿に感動しました。新型コロナなどもあって試練だと思いますが、頑張ってほしいです」と話していました。