「単身赴任 解消」に見る企業の変化 新型コロナで変わる働き方

「単身赴任 解消」に見る企業の変化 新型コロナで変わる働き方
サラリーマンに単身赴任はつきもの、と感じている方は多いかもしれません。でも、家族が離れ離れで暮らす「働き方」や「生き方」が本当に当たり前でいいのでしょうか?
今、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、単身赴任を解消しようという動きが出始めています。今までの当たり前が“ニューノーマル”に変わるのでしょうか。
(経済部記者 藤本浩輝)

ネット上でも話題に

菓子メーカーのカルビーが6月25日に発表した「単身赴任の解除」。
東京の本社や各地の営業拠点などオフィスで働くおよそ800人の従業員を対象に、業務に支障が無いと所属部門が認めた場合は、「単身赴任をしなくていい」というものです。
従業員が転勤を命じられた場合に、同居している家族をもとの住まいに残して、従業員が「単身で」引っ越しをすることを選択するのが、単身赴任。
それを「解除」するのが今回のカルビーの取り組みで、いま、単身赴任中の従業員に、地元に戻ってもらうことが主眼です。
このニュースはネット上で大きな関心を集めました。
ツイッターより
「単身赴任で、男性側が子供を連れて行くの、私は見たことがない
つまり、
単身赴任って奥さんに育児を丸投げして成り立つ制度なんだよね
共働きも当たり前の今、見直されて当然だと思う」
ツイッターより
「これぞパラダイムシフト。コロナを機に新時代へ世の中が移行し始めているのを感じる」
ツイッターより
「単身赴任はどう考えても人権侵害なんだからこれを先駆けに廃止が当然という流れになってほしい」

家族は離れないほうがいい

カルビーは、2014年に在宅勤務制度を開始。
2017年には、在宅勤務の利用日数や場所の制限をなくした「モバイルワーク制度」を導入しました。

そして、新型コロナウイルスが拡大したことし3月下旬からは、オフィスで働く従業員を対象に「在宅勤務を原則とする」という働き方に変えました。
すると、オフィスで勤務していたときと同じように在宅でも働けるだけでなく、通勤時間の削減や業務の効率化というメリットも出てきたといいます。

そして、会社がさらに踏み込んだのが、単身赴任をやめること。
想定されているのは、こんなケースです。
北海道出身で地元の工場に勤務している従業員が東京にある本社の管理部門に転勤する場合、これまでは北海道に家族を残して東京に単身赴任することもありました。
しかし今後はテレワークを原則とし、業務に支障が無いと会社が認めれば、北海道で家族と一緒に暮らしながら、東京にある本社の管理部門の業務を行います。

こうした取り組みを始めるきっかけは何だったのでしょうか?
カルビーの広報担当に聞いてみました。
カルビーの広報担当
「モバイルワークで働くことができる前提で、そもそも、『その単身赴任は必要なのか?』という人事部門での問いかけから始まりました。これからは、勤務場所を選ばない、新しい働き方を進めることで、家族が別れて生活する不都合を解消できるのではと考えています。モバイルワークや、効率的な出張との組み合わせで、単身赴任を前提としていた仕事も、相当部分は代替できると考えています。お客様や社内からの理解のもと、モバイルワークと出張を組み合わせることで、業務遂行可能な社員が増えてくるはずです」
そもそも転勤をしなくてすめば単身赴任も無くなりますが、そこまで一足飛びに人事制度を変えるのは難しい。
せめてテレワークを活用し、出張と組み合わせればなんとかなる仕事なら、単身赴任はしなくてすむようにしようという考え方です。
伊藤秀二社長
「単身赴任が全部悪いわけではないが、単身赴任が起きるということは望ましくないとずっと考えていました。地方であれば大きい家に住めるかもしれないとか、その選択は働く側の人が持つべきなのではないか」
まさに、多様な働き方の実現につながってほしいと思います。

将来は単身赴任をゼロに

水処理施設の設計や管理などを手がける東京の会社「メタウォーター」。
この会社はもともと、名古屋・東京・大阪にある3つの会社の事業が統合された経緯から各地に主要拠点があり、現在およそ120人が単身赴任していますが、単身赴任を1年後にはおよそ60人に削減し、将来はゼロにしたいと考えています。

これまでも、週休3日制やサテライトオフィスの設置、所定労働時間の短縮などといった働き方改革を積極的に進めてきましたが、やはりテレワークの有効活用などで、単身赴任の見直しを広げようとしています。
プラントエンジニアリング事業本部主任の武藤輝生さん(37)。
水処理施設の基本設計などを担当し、長年、関西で生活を続けてきましたが、去年5月、所属する部署が変わり東京で単身赴任をすることに。
しかし今後は出張やテレワークを活用して、年内に大阪に戻る予定です。
武藤輝生さん
「将来もし子どもができた場合、子育てのことを考えると、私が大阪に戻って一緒に生活基盤を築いたほうがベターかなと思います」
メタウォーターの藤井泉智夫執行役員は単身赴任解消のねらいについて次のように話しています。
藤井泉智夫 執行役員
「働きやすい環境を整えることに真っ向から逆行しているのが単身赴任です。家庭という大切な時間を失ってしまう中で仕事をするということは、普通に考えれば、本来はおかしな話です。東京の本社に勤務している人で、通勤時間に1時間半かける人がたくさんいますが、名古屋から東京までも同じ1時間半なのに、名古屋に勤務している人が東京に単身赴任しなくてはいけないのは、とてもおかしな事です。単身赴任を変えることで、戦後の復興期から今に至るまでの働き方が大きく変わっていくと思っています」

会社の在り方 そのものを見直すときに

私たちは新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけとした時代の大きな変化に直面しています。

この国からすべての単身赴任を完全にやめることは現実的ではないかもしれません。

しかし、少なくとも本人やその家族が望まない単身赴任を減らしていくために、これまで続けてきた人事制度や会社の在り方、そのものを見直すときに来ているのかもしれません。
経済部記者
藤本浩輝
平成17年入局
山口局、大阪局など経て
現在は流通業界を担当