8割以上の大学 追試や振り替え試験 コロナで学習遅れに配慮

8割以上の大学 追試や振り替え試験 コロナで学習遅れに配慮
新型コロナウイルスの影響が大学入試でも懸念される中、全国の大学の8割以上が追試や振り替え試験を実施し、半数が出題範囲などで学習の遅れに配慮することが、文部科学省の調査で分かりました。
文部科学省が先月末時点の各大学の今年度の入試方針を調ベた結果、学部入試を行う国公立と私立の767校のうち、新型コロナウイルスに感染した受験生などに追試や振り替え試験を行うのは656校で全体の86%、出題範囲などで学習の遅れに配慮するのは396校で52%と半数を超えました。

特に国立大学で追試や振り替え試験を実施するのは82校中の80校で、感染対策のため個別の学力試験を実施しない横浜国立大学と、実技試験が数日にわたる東京芸術大学の2校を除いたほぼすべてとなっています。

このほか私立大学では、総合型選抜の面接をオンラインで実施するなど、新型コロナウイルスの影響により各大学で異例の対応が取られています。

大学入試に詳しいリクルート進学総研の小林浩所長は「受験生は感染拡大で学校に通いにくい状況が続き入試の情報収集も難しい。大学側が積極的にメッセージを発信していくとともに、不安に配慮していろいろな条件を緩和し、受験しやすい環境を整えることが重要だ」と指摘しています。

入試のオンライン化 検討する大学

新型コロナウイルスの終息が見通せない中、例年どおりに入試を実施できるのか。各大学が対応に追われています。

昨年度の志願者数が6万人を超える東海大学では、一般入試で出題方法を配慮するなど、入試の機会を確保するため、担当者たちが協議を続けています。

特に面接や小論文、学力などが問われ、今年度から名称が「AO入試」から変わる「総合型選抜」は、出願開始が来月に迫っていて、大学では面接や課題発表のオンライン化を検討しています。

例年の状況から総合型選抜の受験生だけでも1000人を超えるとみられ、大学ではシステムを運営する企業の担当者を招いて説明を受けていました。

企業からは、リアルタイムの面接のほかにも動画を投稿する収録型の面接も可能で、多くの学生に対応できることや、受験生はどこにいてもスマートフォンやパソコンを通じて受験が可能だと説明され、入試担当者は「回線は切れないのか」とか「面接を動画提出にした場合、第三者による添削が生じないか」などと質問していました。

東海大学入学センターの山本義郎所長は「先が全く読めない状況で遠方から大学に来てもらうこと自体が受験生の負担になると感じ、どういう入試なら可能か検討する中でオンライン化が出てきた。新しいことをすると想定していないトラブルや公正さの課題もあるが、手探りでも受験生が安心して受けられる入試を選択しなければならない」と話していました。

オンライン入試に備え 対策急ぐ受験生

各大学がオンライン入試を導入した場合に備えて、受験生も対策に追われています。

首都圏を中心に展開する学習塾では、新型コロナウイルスの影響で一時、対面指導を中止していましたが、7月から、受験を控える高校3年生を中心に、段階的に指導を再開しました。

この塾に通う都内の私立高校3年生の女子生徒は、推薦入試の受験を目指して対策に取り組んでいますが、志望する大学はまだ面接試験の方法を公表していません。

オンライン面接が実施された場合に備えて、この日は講師から指導を受け、画面上の面接官をしっかりと見て受け答えするようアドバイスされていました。

女子生徒は「入試の詳細がはっきりわからない中、がむしゃらに勉強していて、不安はあります。対面での面接のほうが自分の熱意が伝わると思いますし、オンラインの場合、インターネット回線が大丈夫なのか心配もありますが、臨機応変に対応できるように頑張りたいです」と話していました。

「大学受験ナビオ」の教務責任者、酒井保人さんは「不安を抱える受験生の声が多いです。ようやく入試の情報が出始めたので、与えられた条件の中、きちんと取り組もうとアドバイスしています。オンライン面接も練習して慣れてもらい、よい印象を与えられるように指導していきたい」と話していました。