JTBとJALに聞く コロナの影響と観光・航空のこれから

JTBとJALに聞く コロナの影響と観光・航空のこれから
「もう旅行会社という考え方は捨てている」(JTB 山北社長)
「すべてを航空需要に頼っている事業構造を見直す」(日本航空 赤坂社長)

新型コロナウイルスで深刻な打撃を受けている旅行業界と航空業界を代表する大手トップのことばです。“人が移動すること”で稼いできた2つの業界は、従来のビジネスモデルではコロナの時代を生き残れないという強い危機感を持っています。逆風の中でどんな方策があるのか。2人の社長へのインタビューから探ります。(経済部記者 加藤ニール)

深刻な打撃を受ける旅行業界

旅行会社最大手のJTB。新型コロナウイルスの影響で、3月下旬以降は、海外旅行のツアーはすべて中止。国内旅行も、移動の自粛が呼びかけられた影響でキャンセルが相次ぎ、旅行の取扱額は、4月と5月はいずれも去年の同じ時期より90%以上の落ち込みとなりました。
県をまたぐ移動自粛が6月に全国で緩和され、夏の観光シーズンに向けて観光需要の回復が期待されていましたが、7月、再び感染が拡大局面に。

6月にJTBの新たなトップに就任したばかりの山北栄二郎社長にとっては、かつてない逆風の中での船出となりました。

厳しい環境が続く中、これから会社をどう経営していくのか。山北社長が口にしたのは、意外なことばでした。
山北社長
「旅行会社という考え方は、われわれはかなり前に実は捨てていました。JTBは今、交流を創造していく会社なんです」
「新型コロナウイルスの影響で、突然、全世界レベルで、われわれも今までに経験がない状態になりました。旅行事業に限らず、観光全体が非常に厳しい状態にある。しっかり安全対策をとりながら、なんとか、交流を少しずつ復活させていかなければいけないと思っています」

ポストコロナに向けて

実は旅行会社を取り巻く環境は、新型コロナウイルス以前から変化していました。

旅行会社を通さず、ネットやアプリで自由に旅行を手配する人が若い世代を中心に増えています。旅先を選ぶにも、旅行会社のパンフレットに頼るのではなく、旅行サイトやSNSを活用することが珍しくなくなってきています。

こうした変化を背景に、JTBは、旅行以外の分野にも事業を広げられないか、脱“旅行会社”を掲げて模索を続けていたのです。新型コロナウイルスで旅行の需要そのものがしぼむ中、その取り組みを加速させています。
その1つとして力を入れているのが、海外出張ができなくなった企業などを対象にしたオンラインイベントの開催。5月には、中国の企業を集めた商談会をオンラインで開きました。直接顔と顔を合わせたやり取りが難しい中、映像のライブ配信などを活用することで、商談をサポートしました。

株主総会やセミナーの開催など、イベントの種類も広げていて、今後、新しい事業の柱の1つとしたい考えです。
こうした脱“旅行会社”の取り組みは、まだ始まったばかりで、試行錯誤の段階。山北社長は、ポストコロナに向けて新たなビジネスを創出していきたいと話しています。
JTB 山北社長
「旅行会社としての長い歴史の中で、旅を通して企業や団体などとさまざまな関係性ができています。これをベースにして、それぞれのお客様の課題解決を図るという方向性で、ビジネスを大きくしていきたい。旅行や観光が、今、こういうピンチですが、変化の時代の中で新しいものをつくっていきたいと思っています」

日本航空 大幅な赤字

旅行会社と同様に深刻な打撃を受けているのが航空会社。日本航空の赤坂祐二社長も、需要の回復には厳しい見通しを示します。
日本航空の国内線の利用者数は、4月から6月は、去年の同じ時期の13%にまで激減。国際線は、1.4%にまで落ち込みました。
8月に発表した4月から6月までの3か月の決算は、最終的な損益が937億円の大幅な赤字となりました。
赤坂社長
「感染の第2波、第3波は避けられないと言われているので、われわれも状況を見ながら、ブレーキとアクセルをうまく使い分けてやっていくしかない。国内線は、ここから1年くらいかけてコロナ以前の水準に回復していけると思いますが、国際線は3年から4年という長丁場を覚悟しなければいけない。さらに国際線の場合は、本当に完全に元の水準に戻るのかというと、そこはちょっと厳しいかもしれません」

リスクをどう分散させるのか

航空業界はこれまでにもリスクにさらされてきました。SARSなどの感染症や、リーマンショック、アメリカの同時多発テロなど、何度も利用者が急減する事態に見舞われています。

ただ今回は、感染拡大をきっかけにオンラインが社会で急速に広がり、人の動きに変化が出ています。赤坂社長はビジネスモデルの転換が必要だと考えています。
赤坂社長
「航空ビジネスの事業ポートフォリオを変えなければいけないと思っています。今まではビジネス需要を主体にしてきました。今後は、企業の出張は減るでしょうから、いわゆるニューノーマルにあわせた商品を開発していかなければいけない。そして、LCC事業にも力を入れて観光需要を取り込んでいく必要がありますし、国内事業を育てていかなければなりません」
「コロナを乗り切ることが最大の課題ですけども、本当に大事なことは、コロナ後にあると思っています。JALグループは、事業全体が航空需要に頼っている状況なので、そこも見直していかなければいけない。マイレージを活用した金融事業や、ドローンやエアモビリティーを使った事業など、ニューノーマルに適合するような形で事業化していきたい」

危機を乗り越えた先に

航空や旅行会社だけでなく、鉄道、バス、宿泊など人の移動や観光に関わる業界からは、「もうコロナ以前には戻らない」という声をよく聞きます。

このところ国内の感染者数が再び増加し、この夏の帰省や旅行にブレーキがかかっていることも、業界にとっては不安材料です。

ただ一方で、知らない土地を旅して、体験やグルメを楽しむ「旅のだいご味」は、きっとこの先も変わらないはず。日本航空は、旅先で仕事をする「ワーケーション」を取り入れた商品の開発など、新しい旅の姿をビジネスにつなげようという動きも始めています。

世界的な危機を乗り越えた先に、どんなビジネスが見えてくるのか。それぞれの模索が始まっています。
経済部記者
加藤ニール
平成22年入局
静岡局、大阪局を経て
現在、国土交通省担当