児童や生徒の感染 2か月で242人 感染経路「家庭内」6割近く

児童や生徒の感染 2か月で242人 感染経路「家庭内」6割近く
各地で学校が再開したことし6月からの2か月に、新型コロナウイルスに感染した児童や生徒は242人で、感染経路の6割近くが「家庭内」だったことが文部科学省の調査で分かりました。学校での感染拡大を防ぐため、家族にかぜの症状が出た場合は登校しないよう呼びかけています。
調査は文部科学省が全国の教育委員会などを通じて行ったもので、ことし6月から先月末にかけて全国で新型コロナウイルスの感染が確認されたのは、小学生が90人、中学生が53人、高校生が97人、特別支援学校の生徒が2人の合わせて242人でした。

感染経路を見ると、「家庭内」が最も多く、全体では57%、小学生では70%に上っていました。
一方、「学校内」での感染は全体の5%にとどまっていました。

また高校生では「家庭や学校以外の活動・交流」が18%、「感染経路不明」33%と、合わせて5割を超えました。

これをうけ文部科学省は、学校での感染拡大を防ぐため、本人だけでなく同居する家族にかぜの症状が出た場合も登校しないよう徹底することや、放課後や学外での活動が多い中高生には生徒みずから注意するよう指導が必要だとして、6日付けで全国の教育委員会などに対策を通知しました。
文部科学省の平山直子健康教育・食育課長は「家庭内感染が非常に多い中、家庭でも取り組みを強化してもらい、中高生もレジャーなど自由な活動が増える時期なので自分自身で対策を取ってほしい」と呼びかけています。

休校や日々の消毒作業 過剰な対応必要なし

文部科学省では、感染に伴う休校や、教職員の負担となっている日々の消毒作業についても過剰な対応は必要ないと呼びかけています。

調査では、ことし6月から先月末までに感染が確認された学校の対応もまとめていて、このうち全国で臨時休校の措置を取ったのは延べ84校でした。

日数別に見ると、最も多かったのが「1日」で16校、次いで「3日」、休校しなかった「0日」と続いた一方、最も長い学校では土日を除いて「9日」休校していました。

これを受け文部科学省は、臨時休校は濃厚接触者の確認や検査に必要な日数で行うものだとして、濃厚接触者がいなかったりすぐに特定できたりすれば休校の必要はなく、休校した場合でも1日から3日で再開するのが一般的だとしています。

また範囲についても全校一斉に休校にする必要はなく、保健所と相談したうえで該当するクラスや学年など最低限の範囲にとどめるよう呼びかけていて、学びの機会を保障することが最優先だとしています。

さらに教育現場で負担となっている日々の消毒作業についても複数の感染症の専門家から意見を聞いたうえで、特別な作業は必要なく過度な消毒が負担とならないよう注意を呼びかけています。

具体的には、床は通常の清掃でよく、大勢の人が触れるドアノブや手すりなどは1日1回、机やいすは必要に応じて家庭用洗剤などで拭き掃除をすればよいとしていて、手洗いや咳エチケットといった基本的な感染症対策を重視することが大切だと呼びかけています。

無症状でも登校自粛求める取り組みも

新型コロナウイルスに感染した児童や生徒の感染経路の6割近くが「家庭内」となる中、新宿区教育委員会では学校全体が臨時休校になるリスクを減らそうと、児童・生徒と同居する家族がPCR検査を受ける時点で、子どもに症状が出ていなくても登校の自粛を求める独自の取り組みを4月から進めています。

この取り組みは学校内にウイルスを持ち込ませず、学校全体への影響を最小限に抑えるのがねらいです。

同居する家族が陽性となり、子どもが濃厚接触者としてPCR検査を受けて陽性だったとしても、無症状の場合、検査の2日前から休めば学校内での濃厚接触者の発生を防ぎ、学校全体を休校にするリスクを下げることができるのです。

新宿区の小中学校では先月、ルールにのっとって40人以上の児童・生徒が学校を休み、6月の学校再開以降、臨時休校になったのは中学校1校にとどまっています。

新宿区教育委員会教育調整課の齊藤正之課長は「子どもたちの感染ルートのほとんどが家庭内感染なので、ウイルスを校内に持ち込まないことが大切だ。学びを止めないためにも休校にならないよう対策に力を入れたい」と話しています。

専門家“休校の基準 さらに明確化を”

学校運営の危機管理に詳しい東京学芸大学の渡邉正樹教授は「学校再開後の休校がこれほど多いのは驚きだ。これまでの国の基準では学校側は慎重に判断せざるを得なかったということだが、感染者が1人出るたびに休校していると学校全体でさらなる学習の遅れが起きてしまうため、今回の通知で文部科学省が、家族の感染が疑われる場合に子どもの欠席を徹底したり、濃厚接触者がいない場合の臨時休校は必要ないと明確にしたことは評価できる」としています。

そのうえで新宿区の取り組みについては「すでに具体的な取り組みで休校を防ぐ成果をあげていて評価できる。家族がPCR検査を受けたことで欠席した子どもに対し、今後さらにオンライン学習の環境を整備するなどして学びを保障することが重要だ」と話していました。

一方、渡邉教授は国に対し、学級閉鎖など学校の一部だけを休校させることについて、「具体的な例を示せば、学校はさらに子どもの安全と学習の遅れを両立する判断がしやすくなる」と、さらに基準を明確にする必要があるとしています。