東京都 新型コロナ感染 4段階で最も深刻 モニタリング会議

東京都 新型コロナ感染 4段階で最も深刻 モニタリング会議
東京都は、新型コロナウイルスの感染状況などを分析・評価する会議を開き、現在の都内の感染状況についてすべての世代に感染が広がっているなどとして、4段階ある警戒のレベルのうち前の週に続いて最も深刻な表現にしました。
東京都は6日、現在の都内の感染状況と医療提供体制を分析・評価する「モニタリング会議」を開きました。

専門家として出席した帝京大学医学部附属病院の坂本哲也病院長は感染状況について、新たな感染の確認が3日間で1000人を超えるペースで増加していて、5日までの1週間の平均が前の週のおよそ1.34倍の346.3人になっていると説明しました。

そのうえで、すべての世代に感染が広がっているほか感染経路も多岐にわたっていて、無症状や症状の乏しい人が気がつかないうちに感染を広げている可能性があると指摘しました。

こうした状況を踏まえ、現在の状況を「感染が拡大していると思われる」として、前の週に続き4段階あるレベルのうち最も深刻な表現にしました。

また、「医療提供体制」については、重症化リスクのある中高年の人や中等症の入院患者が増加しつつあるとした一方で、重症患者向けの病床はまだ確保できていると指摘しました。

そのうえで、4段階あるレベルのうち上から2番目の「体制強化が必要であると思われる」と評価し、こちらも前の週と変わりませんでした。小池知事は「感染しない、感染させないという意識を持ち慎重な行動をお願いする」と述べました。

1. 専門家の判断 感染状況

都内の感染状況について、4段階ある警戒レベルのうち引き続き最も深刻な表現とした理由について、専門家は全世代に感染が広がり、感染経路が分かっていない人が増えていることなどをあげました。

感染状況のモニタリング項目のうち、新たな感染の確認は3日間で1000人を超えるペースで増加していて、5日までの1週間の平均は前の週の1.34倍の346.3人となりました。

年齢別では、3日までの1週間で
▽20代が43.2%、
▽30代が24%で合わせておよそ7割近くを占める一方で、
▽40代は12.6%、
▽50代も8%いて、専門家はすべての年齢層に感染が拡大しつつあると指摘しました。

また、4日までの1週間で感染経路が分かっている人の中では
▽家庭内で感染した人の割合が26%と最も多いことも報告されました。

このほかの感染経路では
▽夜間に営業する近い距離での接待を伴う飲食店での感染が19.3%、
▽職場内が17.9%、
▽会食が13.8%などとなっています。

感染経路が多岐にわたっている背景について、専門家は、特に症状のない人が無意識のうちに、感染を広げている可能性があると指摘しました。

また、4日までの1週間で
▽20代と30代は夜間に営業する近い距離での接待を伴う飲食店での感染が24.1%と最も多い一方で、
▽40代と50代は家庭内での感染が33.5%と最も多くなっていることが指摘されました。

▽60代でも40.5%、
▽70代以上でも51%といずれも最も多く、年齢が高くなるほど家庭内で感染するケースが目立っていると説明されました。

このほか、先月の1か月間では、80代以上の3分の2が施設内で感染していて、介護施設などでは無症状や症状の乏しい職員を発端とした、感染が確認されていて感染防止対策と検査体制の拡充が必要だとしています。

また、会食での感染も確認されていることを踏まえ、たとえ少人数であってもマスクを外して会話をしながら飲食を行うと感染のリスクが高まるため、このような環境を避けることが非常に重要だと指摘しています。

さらに、グループで旅行に行き、同行した人などに陽性の人が含まれていて感染が広がる事例が複数発生していて、先月後半から増える傾向にあるとしています。

このほか、感染状況を地域別にみると新宿区が13.9%と最も多いものの、島しょ部をのぞく都内全域に広がっているとしています。

また、感染経路が分からない人はきのうまでの1週間の平均で210人で、前の週の1.4倍近くに増えていて、このままのペースで4週間増え続けると、今のおよそ4倍の1日当たり840人程度となり、さらに4週間続くと現在のおよそ16倍、1日当たり3360人程度になると指摘しました。

2. 専門家の分析 医療提供体制

都内の医療提供体制について、専門家は、入院患者が増え、感染の収束の兆しが見えないとしたうえで、「医療現場では今後、患者を受け止めきれるのかと感じていて、緊張が続いている状態だ」と述べました。

医療提供体制を分析するモニタリング項目のうち、「陽性率」は、5日までの1週間の平均が6.9%で、前の週より0.4ポイント増えました。

5日までの検査人数が前の週に比べておよそ1.3倍に増えたにもかかわらず、陽性率も増えていることについて専門家は「陽性者の絶対数の増加を示すものである」として、都内全域で感染が広がっていることが危惧されると指摘しました。

また、入院患者は5日の時点で1475人で、1週間前と比べて1.3倍となりました。

新たに感染が確認される人が増え続けていて収束の兆しが見えないとして、専門家は「医療現場では患者がどこまで増えるのか、今後、患者を受け止めきれるのかと感じていて、緊張が続いている状態だ」と述べました。

さらに、今月1日までの1週間は前の週に比べ重症化リスクのある中高年や、中等症の入院患者が増えつつあると説明しています。

また、患者を病院で受け入れるには、感染防御対策、検査、消毒など通常の患者よりも多くの人手や労力、時間が必要で煩雑な入院と退院の作業が短期間で繰り返されているとしています。

専門家は「これらのことも医療機関の負担と考えなければならない」と指摘しました。

そして、保健所が患者を入院させるにあたり、受け入れ先の病院が見つからず都に調整を依頼する件数は多い日で150件を超えるほか、中等症の患者の調整依頼の件数も増えていて、入院の調整が難しくなっていると説明しています。

また、今月4日までの1週間で感染が確認された人のうち無症状の人は13.5%で、こうした人などに療養してもらうため都が借り上げたホテルに常駐する医師などの確保に苦労していると指摘しました。

一方、5日の重症患者は1週間前より1人減って21人でした。重症患者は、新たな感染確認が増えたあとおよそ2週間遅れて増え始めることを踏まえ、集中治療室などの病床を重症患者が占有する期間が長くなることを念頭に置いて病床を確保することが必要だとしています。

3. 専門家「事前に宿泊療養や自宅療養の判断要件を」

モニタリング会議で専門家は、今後、医療機関で病床がひっ迫する事態に備えて、重症化するリスクが低く医師が入院の必要がないと判断した人についてはホテルでの宿泊療養か、自宅での療養かを判断する要件を事前に決めておき、都内全域で統一した運用を図って病床を確保しておく必要があると指摘しました。

さらに、家庭内で感染するケースが相次いでおり、安全な自宅療養のための環境整備が必要だとして、自宅で療養するのは家庭内で感染を広げないために1人暮らしの人を前提として、食事を届けるなどのサービスや地域の医療機関が療養を支援する体制作り、それにITを活用した健康管理のシステムの導入などが必要だと指摘しました。

4. 専門家 「すべての人が他人に感染させるリスク」

モニタリング会議で専門家は「症状が無いか、極めて症状が軽い人が感染させていることが非常に問題になっている。自分は感染していないと思っていても、すべての人が他人に感染させるリスクを持ってると考えなければいけない。若い人が高齢者に感染させる一定のリスクがあることは否定できないと思う」と述べました。

そのうえで、「人と会う機会を増やす、特に近くで話をする、あるいは会食をすることに必ず感染を起こすリスクがあるんだという自覚を持って行動していただきたい」と述べました。