ベイルート爆発 死者100人 けが人4000人 今も救出作業続く

ベイルート爆発 死者100人 けが人4000人 今も救出作業続く
中東・レバノンの首都ベイルートの港で大規模な爆発が起こり、死者は100人、けが人も4000人にのぼっています。現場では一夜があけた今も煙が立ちのぼり救出作業が続いていますが、被害者はさらに増えるとみられています。
レバノンの首都ベイルートにある港で現地時間の4日午後6時ごろ、複数回にわたって爆発があり、市内の広い範囲で建物や車が壊れるなどの大きな被害が出ました。

一夜明けた現地では倉庫やクレーンなどの港湾施設が大きく壊れ、煙が立ち上る中、救助活動が続いています。

被害の全容はまだ分かっていませんが、救助にあたるレバノンの赤十字社の事務局長は現地メディアに対し、これまでに100人が死亡し、けが人は4000人にのぼっていることを明らかにし、今も現場のがれきの下に取り残されている人がいるとして、被害者がさらに増えるとの見方を示しています。

現地の日本大使館によりますと、ベイルート在住の日本人1人が割れたガラスで手と足を切り、病院で手当てを受けましたがけがの程度は軽いということです。

爆発を受けてレバノン政府は港の倉庫に爆薬の原料にもなる、硝酸アンモニウムおよそ2750トンが、6年前から保管されていたことを明らかにし、今後、調査委員会を立ち上げ、詳しく調べることにしています。

レバノンは長引く経済危機で政府の資金繰りが悪化していて、ベイルートの市長は5日、「被害額は数十億ドル規模にのぼる」と述べるなど、経済へのさらなる影響が懸念されています。

硝酸アンモニウム 過去の事件や事故

中東・レバノンの首都ベイルートで起きた大規模な爆発では、爆薬の原料にもなる硝酸アンモニウムが爆発した可能性が指摘されています。

硝酸アンモニウムの爆発が原因となった事件や事故は、過去に世界で起きています。

このうち、2015年には中国・天津の倉庫で硝酸アンモニウムなどが引火して大規模な爆発が起き、合わせて173人の死者・行方不明者が出たほか、周辺にあった300余りのマンションや工場などが被害を受けました。

この爆発では中国政府の調査チームが報告書をまとめ、保管されていた化学物質の1つが気温の上昇で自然発火し、近くにあった硝酸アンモニウムなどに引火して大爆発が起きたとみられ、危険物の保管方法などの安全管理のずさんさが事故につながったと指摘しています。

また、1995年にアメリカ南部のオクラホマ州の連邦政府ビルが元軍人によって爆破され、政府職員や保育所にいた子どもなど168人が死亡、500人以上がけがをした事件では硝酸アンモニウムが使われました。

このほか2013年、南部テキサス州の肥料工場で起きた爆発で14人が死亡し、200人以上がけがをした事故では硝酸アンモニウムの爆発が原因だったと結論づけています。

専門家「火災で熱分解進み爆発か」

爆発物や安全管理に詳しい横浜国立大学の三宅淳巳教授は、レバノンで起きた爆発の映像で上空に白い球状のガスが広がったあと、茶色や赤茶色の煙が立ち上った様子から「硝酸アンモニウムが爆発したときの化学反応で、窒素酸化物が発生しているとみられる」と指摘し、倉庫に保管されていた硝酸アンモニウムが、大規模な爆発の原因となったとの見方を示しました。

また、硝酸アンモニウムは、外部から強い衝撃を与えられた場合や、火災などで熱分解が進んだ場合、それにほかの物質に触れて化学反応を起こした場合などに爆発を起こす特性があると説明しました。

三宅教授は、今の段階で爆発の原因断定はできないとしながらも「火災が発生して時間がしばらくたったあとに大きな爆発に至っているので、硝酸アンモニウムが火災で熱分解が進み爆発を起こしたと考えるのが自然だ」と話し、最初の爆発による衝撃や、その後の火災がきっかけとなって、大量の硝酸アンモニウムの爆発につながった可能性を指摘しました。

また、レバノン政府が倉庫に保管されていたと発表したおよそ2750トンの硝酸アンモニウムすべてが爆発した場合、爆発の規模をTNT火薬に換算すると1000トンほどに相当し、これはおよそ8キロ離れた場所のガラスが爆風で割れる威力にあたるということです。

三宅教授は「これだけの量の硝酸アンモニウムが、どういう状況で保管されていたのかを最初に調べられなければいけない」と当時の管理体制が適切でなかった可能性もあると指摘しています。

日本人男性「テロかと思った」

爆発のあった場所から南に2.5キロほどのところにいた認定NPO法人「パルシック」の風間満さん(31)は「バンという音がしたあと、衝撃を感じ、とっさに身をかがめた。顔を上げたら辺りにガラスが散乱していて、頭から血を流している女性もいた。上空にピンク色の煙が立ちこめてきて、レバノンという土地柄、テロか空爆かと思ったのと同時に、生きて帰れるのだろうかと不安になった」と爆発の瞬間を振り返りました。

風間さんは、レバノン国内のシリア難民の支援活動に携わっていて、今回の爆発でベイルートの港湾機能が損なわれ、小麦などの貯蔵庫も被害を受けたことから、レバノンのシリア難民にも影響が及ぶのではないかと心配しています。

日本大使館にも被害

外務省によりますと、大規模な爆発があった港からおよそ2キロ離れた地区にある日本大使館にも被害が出たということです。

爆風で、大使館の建物の窓ガラスや窓枠が破損し、大使館から数キロ離れたところにある大使公邸でも同様の被害が出ているということです。

外務省は、大使館の職員にけがなどはなく、業務への支障もないとしています。

硝酸アンモニウムは貨物船から押収か

カタールの衛星テレビ局、アルジャジーラなど複数のメディアによりますと、今回ベイルートでの爆発で関連が指摘されている硝酸アンモニウムは、2013年9月、レバノン付近を航行中の貨物船から押収されたものだということです。

この貨物船は、パナマ在住のロシア人の実業家が所有していたもので、化学メーカーの工場で生産された硝酸アンモニウム2750トンを積んで、旧ソビエトのジョージアからアフリカ南東部のモザンビークに向かう予定でした。

しかし、レバノン当局が故障を原因に船を押収したうえ、船員を拘束したため、ロシア人の船主は船と積み荷を放棄し、硝酸アンモニウムはベイルートの港の倉庫に保管されることになったということです。