ビジネス特集

ワーケーションの事例紹介 仕事と家族の時間を温泉で両立

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、いわゆる3密を避けられると、新しい旅行スタイルが注目を集めています。それは「ワーケーション」。仕事を表す「ワーク」と休暇を意味する「バケーション」を掛け合わせたことばで、政府も7月、普及に取り組む方針を打ち出しました。仕事しながら休む?いったいどんなものか、いち早く取り組む現場を取材しました。(仙台放送局記者 川田陽介)

川のせせらぎを聞きながら…

宮城県南部にある蔵王町。蔵王連峰を臨むこの町には、県内有数の温泉地「遠刈田温泉」もあり、1200以上の別荘が建ち並んでいます。

ここにある別荘が今、ワーケーション向けに貸し出されています。そのうちの1つを見せてもらいました。
広々したリビングに、源泉掛け流しの天然温泉。もちろんインターネットも完備しています。テレワークで仕事を行い、疲れたら温泉で気分転換できる。そんな空間が広がっていました。

家族の絆が深まった

ワーケーションを実際に体験した人に話を聞きました。仙台市に住む櫻井亮太郎さんです。

接客研修やプロモーションなどを行う会社を経営していますが、新型コロナウイルスの感染が広がる3月末に会社の勤務形態をテレワークに変更しました。
もともとワーケーションに興味があったという櫻井さんは、この機会を利用し、蔵王で仕事をしながら過ごすことにしました。櫻井さんには妻と2人の子どもがいますが、当時は学校も臨時休校だったため、家族全員で5泊6日の日程で別荘を利用しました。
櫻井さん
「到着したその日から仕事を始めましたが、緑の森に囲まれて、川のせせらぎを聞きながら働くことができるのは最高だなと感じました」
櫻井さんが仕事をしている間、妻と子どもは近くにある牧場などで観光を楽しみました。
そして昼ご飯など食事の時は、別荘に戻って家族全員で過ごしました。櫻井さんは仕事と余暇を自分の好きなタイミングで切り分けられるのが、ワーケーションの魅力だと話しています。
櫻井さん
「自分のタイミングで仕事して、家族とも過ごせるので、非常に満足度が高かった。家族の絆がワーケーションによって深まったというのは確実に言えると思う」

企業もワーケーションに注目

こうしたワーケーションの魅力に、企業もビジネスチャンスを見いだしています。

別荘などを活用した民泊予約サイトを運営する仙台市の企業「百戦錬磨」社長の上山康博さんは、密の少ない地方にある別荘の需要は今後高まると考えています。
「百戦錬磨」上山康博社長
上山社長
「自然を感じながら、仕事もできる、この2つのいいとこ取りがワーケーションの魅力だ。今後、ワーケーションのような働き方は一定程度、定着していくと確信している」

安心に利用してもらうための対策は

ただ多くの人が別荘を利用するとなると、衛生対策がきちんとしているか心配ですよね。そこで上山さんの会社では、別荘の消毒を徹底して行っています。
まずドアノブやテレビのリモコンなど、部屋のどこにウイルスが付着しやすいか消毒のポイントをまとめた資料を作成しました。それをスタッフに渡して、消毒を徹底させているんです。
決められた手順で消毒を行った別荘には、予約サイトで「対策済み」というアイコンを表示し、衛生的な施設であることをアピールしています。
上山社長
「普通は掃除しないようなところも、指を触れるところについては、しっかり消毒していかないといけない。時間もかかるし手間もかかるが、そこをしっかりやっていくことが重要だ」
こうした対策が功を奏し、緊急事態宣言が解除された5月下旬以降、予約は増えているといいます。

ワーケーションの効果を周辺地域にも還元

蔵王町は仙台から車で1時間、東京から新幹線で2時間と、アクセスがいいのも強みです。このメリットを生かそうと、上山さんは東北新幹線の白石蔵王駅前に、地元の企業と事務所を設けました。
ワーケーションの客は長期滞在が多いため、周辺の観光施設を利用する機会も増えます。このエリアには、白石市にある白石城のほか、100匹以上のキツネと触れあえる施設、さらには自然豊かな国営公園もあります。

上山さんは地元の企業と連携し、別荘を利用する客に観光名所を訪れてもらうことで、ワーケーションの効果を還元しようとしています。
上山社長
「蔵王は交通の便も非常によく、ポテンシャルが高い。長期滞在する中で蔵王周辺の魅力に気付いてもらうことで、宮城の観光を盛り上げていきたい」。

全国で広がるワーケーション

ワーケーションへの期待は全国で高まりつつあります。環境省は新型コロナの感染拡大を受けて、感染リスクの少ない自然の中で仕事することを勧めていて、その場所として国立・国定公園や温泉地をあげています。

さらに長野県と和歌山県は、ほかの自治体と連携し、ワーケーションの普及に向けた協議会を設立していて、今後、地域間の競争も活発になりそうです。

仕事しながら余暇も過ごすという、多くの人になじみのないスタイルですが、新型コロナによってこれまでの働き方は見直しを迫られています。そういう今だからこそ、ワーケーションにトライしてみる価値はあるのではないでしょうか。

地方の活性化にもつながるワーケーションがどこまで広がるか、今後に期待したいと思います。
仙台放送局記者
川田 陽介
平成22年入局
長崎局と宮崎局をへて出身地の宮城で経済を担当

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