ロシア開発中のワクチン 10月から大規模接種へ 新型コロナ

ロシア開発中のワクチン 10月から大規模接種へ 新型コロナ
ロシアは、開発中の新型コロナウイルスのワクチンについて、今月中旬にも政府がワクチンとして承認し、再来月、10月から国内で大規模に接種を開始するという見通しを明らかにしました。この動きに対して、欧米のメディアからは、臨床試験のデータが公開されていないなどとして、安全性や有効性を疑問視する見方が出ています。
ロシアの政府系ファンドで、ワクチン開発に携わっている「ロシア直接投資基金」のドミトリエフ総裁は3日、国営メディアのインタビューで、モスクワの国立ガマレヤ疫学・微生物学研究所が開発を進めているワクチンについて、今月中旬にも政府が新型コロナウイルスのワクチンとして承認し、10月からロシア国民を対象に大規模に接種を開始するという見通しを明らかにしました。

一方、ムラシコ保健相は1日、記者団に対し、ワクチンが完成した場合、感染リスクの高い医療関係者や、教師に優先して接種すると述べています。

ロシアで開発中のワクチンは、3段階ある臨床試験のうち、第2段階までは終了したとみられていますが、最終の第3段階に進んだかどうかは分かっておらず、大規模な接種は最終試験を兼ねたものになるのではないかとみられています。

ドミトリエフ総裁は、60年余り前に旧ソビエトが人類初の人工衛星を打ち上げたことになぞらえて「まさにその時のような瞬間だ」と述べ、アメリカより早くワクチンの開発に成功することになると強調しました。

ロシアとしては、世界に先駆けて新型コロナウイルスのワクチンを開発したとアピールすることで、国際社会での存在感を誇示する思惑があるとみられますが、欧米のメディアからは、臨床試験のデータが公開されていないなどとして、安全性や有効性を疑問視する見方が出ています。

WHO「公式な発表聞いていない」

WHO=世界保健機関は、新たにワクチンを開発する際に、ヒトで安全性や有効性を確かめる臨床試験に関する指針を策定していて、多くの国の規制当局や開発者はこの指針に基づいて臨床試験を行っています。

この中では臨床試験は、3段階で行う必要があるとして、第1段階では、少人数の健康な大人に投与して、ワクチンの安全性や特性を確かめ、第2段階ではより多くの人に投与して、安全性とともに、必要とされる免疫の反応が得られるかなどを調べるとしています。

そして第3段階では、ワクチンの承認に向けて安全性と有効性を慎重に確かめるとしています。

指針には法的な拘束力はないものの、各国は安全性や有効性に関する国際的な信頼を得るためにこの指針に基づいて開発を進め、進捗状況や結果を公開しています。

ロシアの動きについて、WHOのリントマイヤー報道官は4日、国連ヨーロッパ本部の定例の記者会見で、「まだ公式な発表は聞いていない」と述べ、具体的な言及を避けました。
一方、中国では、製薬企業の「カンシノ・バイオロジクス」と人民解放軍の研究所が開発を進めているワクチンが最終の第3段階に進んでいて、この製薬企業は、ことし6月末、「軍の内部に限って投与する承認を軍から得ている」と発表しています。