結婚式 延期や中止17万組 損失6000億 新型コロナ影響

結婚式 延期や中止17万組 損失6000億 新型コロナ影響
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新型コロナウイルスの感染拡大で深刻な影響を受けているブライダル業界。業界団体が全国の結婚式場への調査などをもとに推計したところことし3月から来月までにおよそ17万組の結婚式が延期や中止となり、業界全体の経済的な損失はおよそ6000億円に上ることが分かりました。
新型コロナウイルスの感染拡大が続き結婚式の延期や中止が相次ぐ中、全国の式場やホテルなどが加盟する公益社団法人「日本ブライダル文化振興協会」は、ことし6月末、全国106の結婚式場を対象にアンケート調査を行い、業界全体の経済的な影響を推計しました。

それによりますと、感染が拡大したことし3月から来月までに延期や中止となった結婚式は推計でおよそ17万組に上り、年間に結婚式を挙げるカップルおよそ30万組の半数以上に影響が出ていることが分かりました。

また調査対象となった結婚式場の4月から6月までの売上高は平均で前の年の1割以下に落ち込んでいて、業界全体の経済的な損失はおよそ6000億円と推計されるということです。これは年間の推計市場規模の42%に当たります。

日本ブライダル文化振興協会は「感染者の数が再び急増する中、経済的な損失額は推計よりさらに増えることが予想され危機感を感じている。挙式の様子を、ライブ映像で届けられるシステムを導入するなど、新しい生活様式に合わせた対応を業界全体で積極的に進めていきたい」と話しています。

「コロナで結婚式を諦めないでほしい」

『コロナで結婚式を諦めないでほしい』。都内に本社がある結婚式プロデュース会社「アールキューブ」は、先月から新型コロナウイルスの影響などで挙式を諦めたカップルに友人や家族、同僚などが結婚式をプレゼントできる新たなサービスを始めました。

このサービスは友人や職場の仲間などが協力して結婚式の費用を「割り勘」で支払うことができる仕組みで、例えば新郎新婦2人だけで挙式するおよそ14万円のプランの場合、20人で協力すれば、1人当たり7000円ほどの負担で結婚式をプレゼントすることができます。

この費用の中には挙式で着るドレス代や式場代、音響やヘアメイク、写真撮影などの料金がすべて含まれていて、一人ひとりがクレジットカードで別々に決済できるため、幹事が費用を立て替えたりする必要もないということです。

この会社は年間1500組以上の結婚式を手がけていますが、そのほとんどが延期や中止を検討しているということで、感染収束の先行きが見えない中、いったん延期した挙式を断念し、正式にキャンセルする人も相次いでいるということです。

このサービスを担当している「アールキューブ」の大和まゆさんは「憧れの大切な1日に向かって一生懸命準備してきた新婦さんが1回2回と延期が続く中で気持ちが続かなくなり挙式を諦めてしまうケースも多いと思います。結婚式がなくなってご祝儀を渡せないままでいる友人の方も多いと思いますが、1人当たり7、8000円のお祝いの気持ちであれば負担も少なく新郎新婦も受け取りやすいと思います。コロナで結婚式を諦めてしまった人たちが周りの人から背中を押してもらえるようなサービスを目指していきたいと思います」と話しています。

新たなサービスで念願の挙式

新たなサービスで一度は諦めた結婚式を挙げることができるようになったカップルがいます。

千葉県に住む30代のカップルは、去年末に入籍し、2人が交際を始めた記念日のことし6月に結婚式を挙げることを予定していました。

新婦のまりえさんは4月に親族や友人に招待状を送る予定で準備を進めていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、結婚式のキャンセルを決断しました。

挙式予定だった日には会場の近くまで電車で行き、記念の日付の切符を大切に保管しているということですが、ドレスを着たり、写真撮影をしたりする気持ちにはなれなかったといいます。

まりえさんは「どうしても式を挙げたかったのでいったん延期して様子を見ていましたが、招待状すら送れない状況が続き『いつ挙げられるのか』という不安がすごく強くて心が折れてしまいました。いちばん楽しみにしていたのは家族だと思うのですが、すごく悲しかったです」と話してます。

そんな中、新郎の親族が新たなサービスを使って、2人だけの結婚式をプレゼントしてくれました。オンラインの打ち合わせで式場選びや当日の進行について打ち合わせを進めていて、今月6日の挙式の前には念願だったウエディングドレスのフィッテングも行いました。

まりえさんは「結婚式について前向きに考えられていなかったのですがプレゼントという形での周りの後押しで『結婚式を挙げてもいいんだよ』と思わせてもらえました。入籍から半年がたちますが、節目をやっと迎えることができます。父と母にドレス姿をぜひ見てもらいたいです」と話しています。

カップル支援の動きも

結婚式の延期や中止が相次ぐ中、カップルを支援する動きも各地で広がっています。

新型コロナウイルスの感染拡大でやむをえず結婚式を延期する場合でも契約によってはキャンセル料が発生することがあります。こうした中、全国各地で結婚式場を運営している46社は、ことし4月以降に式場を決めたカップルに対して、式の日程変更やキャンセル料に柔軟に対応する方針を共同で発表しています。

46社は日程の変更によるキャンセル料について後日、同じ式場で結婚式を挙げれば実質、負担をゼロにする対応をとるとしています。

一方、佐賀県は、県内で行われる予定だった結婚式や披露宴をキャンセルしたり延期したりしたカップルを応援するため、1組当たり10万円の支援金と、お祝いの花を購入できる5000円のギフトカードを贈ることを決めました。先月から申請を受け付けていてすでに217組から申請があったということです。

消費生活センターへの相談も急増

全国の消費生活センターにはことし3月以降、結婚式の延期や中止をめぐる相談が急増し、先月までの相談件数は2700件余りに上っています。

相談件数は緊急事態宣言が出された4月に1339件に上ったほか、5月が484件、6月が205件と相談が多く寄せられる状況が続いています。

感染者の数が再び急増する中、最近は結婚式をいったん延期して様子を見ていたカップルが挙式を断念してキャンセルした際に、高額の解約料を請求されたという相談も相次いでいるということです。