社会

安全装置ない旧型トラクター約24万台 メーカーでは対策の動き

農作業中のトラクターが横転し、死亡する事故が相次ぐなか、横転した際に下敷きになるのを防ぐための安全装置が付いていない、旧型のトラクターが少なくともおよそ24万台に上るとみられることが分かりました。おととし1年間にトラクターの事故で73人が死亡していて、農機具メーカーの中には対策に乗り出す動きが出ています。
農林水産省によりますと、農作業中に死亡した人はおととしまでの10年間に3450人に上っています。

おととし死亡した274人のうち、26%に当たる73人がトラクターの横転や転落などで亡くなりました。

NHKはトラクターの現状などを調べるため、国内の大手農機具メーカー4社に取材しデータをまとめました。

その結果、国内では推計でおよそ147万台のトラクターが稼働していて、このうち横転した際に下敷きになるを防ぐための「安全フレーム」が付いていない旧型のトラクターはおよそ24万台に上ることが分かりました。
「安全フレーム」は運転席の後ろにある鉄製のフレームで、斜面や段差で横転した時にフレームがあることで運転席周辺に空間ができ、運転する人がトラクターの下敷きとなるのを防ぐことができます。

トラクターには農業分野の研究や農業機械の安全性を調べる「農研機構」の審査で平成9年度から安全フレームの設置が求められていますが、それ以前のトラクターには設置されていないものが多く、今もそのまま使われているのが現状です。

「農研機構」が平成17年に農家などを対象に調査を行い、トラクターの転落・横転事故を分析した結果、安全フレームが設置された場合は73件の事故のうち、死亡事故はおよそ3%でした。

しかし、安全フレームがない場合は107件の事故のうち死亡事故はおよそ25%とおよそ8倍に上ったということです。

こうした中、農機具メーカーの中には安全フレームの設置を呼びかけるなど対策に乗り出す動きが出ています。

農林水産省はことし2月に有識者会議を設置し、トラクターの事故などを減らすための対策を検討しています。

大手メーカーの取り組み

大手農機具メーカーの中にはトラクターの死亡事故を防ぐため、対策に乗り出す動きが出ています。

このうち「クボタ」は、農家を直接訪問するなど安全フレームの設置を呼びかける取り組みをことし4月から始めました。

「クボタ」が製造し、現在稼働している旧型のトラクターのうち安全フレームをあとから取り付けることができるものは全国におよそ3万3000台あるとみられています。

会社では、トラクターが横転した際に死亡事故を防ぐことにつながると説明したうえで、旧型のトラクターへの安全フレームの設置を進めています。

できるだけ農家の負担を減らすため、費用については従来の10分の1の1万円にしているということです。

各地の営業所で取り組みを進めていて、中四国クボタ下関営業所の大竹卓也さんは「農家の命を守るためには安全フレームの設置は大変意義があると思う。農家と接する中で安全に対して意識を持っている人が少ないと感じるので、今後も安全への意識を高めてもらう活動をしていきたい」と話しています。

また、「井関農機」は、ことし6月からトラクターの横転事故を防ぐための取り組みを始めています。

個人農家の多くが所有する小型のトラクターは左右のブレーキを連結させていない状態で走行させた際に誤って片方だけブレーキをかけるとトラクターが急旋回して横転や転落する危険があるということです。

このため、左右のブレーキを連結させずにアクセルを踏んだ場合は警告のランプだけでなくブザーで知らせる装置を開発し、トラクターに設置できることを呼びかけています。

井関農機は「日本の農業は、高齢化が進んでいる。少しでも事故を減らすために安全に配慮したもの作りをしていくことはメーカーとして絶対に必要なことだと考えている」と話しています。

専門家「危険に気付くのが難しい」

農業分野の研究機関「農研機構」の積栄安全技術ユニット長は「トラクターは丈夫な機械でメンテナンスをすれば長く使える。使い慣れた機械を大切に長く使いたいと30年以上使っている人も多い。そのために安全フレームがもともと付いていないトラクターを今も使っている人がいて、事故が繰り返し起きている」と話しています。

そのうえで「農家の人は日々、慣れた田んぼや畑で使い慣れた機械を使って仕事をしているので、そこに危険がうもれていると気付くことがどうしても難しい。生産者も高齢化が進んで若い人に比べて重大な事故になるリスクが高いと思う。各メーカーもトラクターの安全性を確保する取り組みをしていることは重要なことだ」と話しています。

そして、「これからの時代は、安全なしで産業を発展させていくことは現実的に難しい。今働いているベテランの人も引き続き元気に仕事ができるように、そして新たな就農者もやりがいを持って仕事ができるように農業の業界全体として考えていかないといけない」と話し、関係機関が連携して事故防止の対策を進めることが重要だとしています。

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