もう限界…在宅勤務で保育 第2波また登園自粛はあるの?

もう限界…在宅勤務で保育 第2波また登園自粛はあるの?
「きょう確認された新型コロナウイルスの感染者数は…」
毎日のニュースを見るたびに、子育て世代の中には「保育園、また閉まったらどうしよう」と不安に感じている人も少なくないはずです。4月の緊急事態宣言を受けて全国の保育施設は、休園や登園の自粛を呼びかけました。「慣れない在宅勤務と子どもの世話で疲労困ぱい」。保護者の切実な訴えに保育の現場はどう対応し、第2波にどう備えようとしているのでしょうか。(社会部記者 大西由夏)

想像を超える「しんどさ」

ことし4月10日。都内在住の高橋俊晃さんは、自治体からの通知に頭が真っ白になりました。

「原則、休園します」

5歳の長男と1歳の次男が通う保育園が休みになるというのです。夫婦共働きの高橋家。子どもの面倒を見ながら在宅勤務をする日々が始まりました。
高橋さんはフリーランスで複数の企業の経理などを担当しています。日中、子どもたちには居間で過ごしてもらい、寝室で仕事をすることにしましたが、次男の泣き声が聞こえればあやしに行ったり、何度も寝室にやってくる長男に対応したり、ほとんど仕事になりませんでした。

結局、やり残した仕事は子どもが寝静まったあとの夜中に睡眠時間を削ってすることに。これまでも時々、在宅勤務をしながら子どもの面倒をみていましたが今回は全く違ったといいます。
高橋さん
「体力的にも精神的にも想像を超えるしんどさでした。1か月ほどたった頃からこれは続かないなと。再び休園になったら仕事先を調整します。収入が減るのは本当に困りますが、自分が倒れてしまっては本末転倒なので…」

「仕事×育児」生産性が半分以下に

高橋さんのように仕事と育児の両立に苦しんだ保護者は多くいます。

共働きの保護者でつくるグループが5月上旬、未就学児の保護者を対象に行ったアンケートでは、回答した1600人余りのうち6割以上が「仕事を中断しながら子どもの面倒をみた」と答えています。
さらに、「こなせる仕事の量が以前と比べて半分以下になった」という回答が過半数を占めました。全く仕事ができなくなったという回答も全体の12%に上ったのです。
アンケートを行ったグループは、こう指摘しています。
「在宅勤務と育児の両立は難しいという前提を理解したうえで集団保育ができない場合の対応を考えるべきだ」

在宅勤務は預けちゃダメなの?

そもそも在宅勤務の家庭は保育園の利用を我慢しなければならないのでしょうか。

厚生労働省は緊急事態宣言が東京都などに出された直後、考え方を示しています。
感染を予防する観点から、仕事を休める保護者などに登園自粛をお願いし、受け入れ規模の縮小を検討するというもの。

そのうえで、仕事が休めないなど必要な人に保育が提供されないことがないよう自治体が検討するとしています。
仕事と育児の両立に限界を感じた高橋さん。自治体の通知にも確かに、「仕事を休むことが困難な場合は特別に保育を実施」と書かれていました。

その一方で、こうも書かれていました。「保護者のいずれかが在宅する場合、原則として登園はお控えください」

東京23区に問い合わせると、複数の区が在宅勤務の家庭に自宅で子どもを見るよう要請していたことがわかりました。
高橋さん
「通知を読むかぎり、自分たちは子どもを預けるべきではないと判断しました。不安でしたが、今は耐えるしかないと」

「保護者の限界」登園率にも反映

こうした登園自粛が長くは続かないことを物語るデータがあります。東京23区の保育園や認定子ども園に子どもたちがどのくらい登園したかを示す登園率。

緊急事態宣言が出されていた5月は18の区で通常の2割以下にまで減少しました。
しかし6月は、14の区で通常の7割以上、4つの区で6割以上にまで戻っています。
6月は緊急事態宣言が解除されていたものの、各区は独自の判断で引き続き登園の自粛を呼びかけていました。それでも多くの保護者が子どもを預ける判断をしていたのです。

港区ではその傾向が特に顕著で、週ごとに登園率が上がり、月末には宣言が出る前の4月1日時点(80.6%)とほぼ同じ水準になっていました。
専門家は、家庭での保育が限界に来ていた表れだと指摘します。
池本さん
「6月の登園率は驚くべき数字。ギリギリまで我慢した結果で、仕事や収入の面で自粛と言っていられない状況もあったのではないか。在宅勤務といってもひとくくりにはできず、保育の必要性があるかないかを個別に判断する必要がある」

「第2波」来たらどう対応?

再び緊急事態宣言が出されたらどう対応するのか。東京23区に聞いてみると、いずれの区も「検討中」としながらも、いくつか傾向が見えてきました。
A区「保護者がウイルスを運んでくるリスクを最小限にしたいので、登園自粛の要請は強めることになる」
B区「保護者が仕事を休めるよう原則休園にする」
前回並み、もしくは自粛を強めるという区がある一方で。
C区「多くの意見を受けて、今後は保護者の職種や働き方で受け入れを線引きしない」
D区「テレワークが進んでいるがずっと家庭保育をお願いするわけにはいかない。感染対策をしながら開園するしかない」
前回の経験を踏まえて、柔軟な対応を検討している区が多かったのです。

ただ、感染リスクを減らすためには登園する園児の数を減らさざるをえないと考えている区がほとんど。その場合どういう基準で自粛を求めるのか。

多くの担当者からは次のような声が聞かれました。
「保護者と保育園で相談してほしい」

「線引き」に苦悩する保育現場

自治体から明確な方針が示されない中、保育現場は第2波にどう備えるべきか悩んでいます。
4月と5月の登園率を6%ほどにまで抑えた東京 豊島区の保育園。当時は区の方針に従い、医療従事者などの家庭を除いて登園を自粛してもらいました。

しかし再び感染が拡大した場合、保護者に同様の負担を求めるのは難しいと感じています。
遠藤園長
「大変さがわかるだけに、この家庭は受け入れてこの家庭は受け入れないという線引きが難しい。各家庭とよく話をして、毎日じゃなくても週何日とか、午前中だけ来るとか協力してもらうことを検討しています。感染者数をみるたびに、戦々恐々とする毎日です」

「withコロナ」保育の在り方は

緊急事態宣言時の保育現場の混乱は、感染リスクと向き合う日々が長期化する中、家庭も保育の現場もこれまでどおりでは立ち行かないことを明らかにしました。

ただ、働き方や保育の体制は、当事者の努力だけでは変えられません。働く親にとって保育園は欠かすことのできないいわば社会インフラです。

園側もその責任を全うしようと、感染者が増え続ける中でも子どもを引き受け続けています。

「withコロナ」の保育はどうあるべきか。国や自治体、企業はいまこそ当時の状況を振り返り、解決策を考える時ではないでしょうか。
社会部記者
大西由夏
平成23年入局
松山局を経て現所属