詳報!“GAFA”首脳は何を語ったか

詳報!“GAFA”首脳は何を語ったか
「GAFA(ガーファ)」とも呼ばれる(アメリカでは呼ばれていません)4つの巨大IT企業、グーグル(G)、アップル(A)、フェイスブック(F)、それにアマゾン・ドット・コム(A)の経営トップ4人が、29日、アメリカ議会下院・司法委員会の公聴会に出席しました。

新型コロナウイルスの感染拡大が続き、自宅にいる時間が増えるなか、インターネット通販で買い物をしたり、ネット動画を見たりして過ごすことが増えたと思います。そう、彼らは、この間、ばく大な収益をあげてきましたが、そのトップたちが、「何を語ったのか」、その背景も探りながら、詳しくお伝えしようと思います。(ロサンゼルス支局記者 菅谷史緒)

「歴史的」な公聴会

アマゾンのベゾスCEOが出席の意向を示したことで、「初めて4人がそろう」(米メディア)と注目された今回の公聴会。そこに呼ばれる証人は時代を映す鏡とも言え、29日午後1時(日本時間30日午前2時)、オンライン形式ながらスーツにネクタイ姿の4人がそろったテレビの画面を見て、私は歴史的な瞬間に立ち会っているという感覚を覚えました。
今回は司法委員会の公聴会ということで、日本の独占禁止法にあたる「反トラスト法」に基づくものです。つまり、4社が「大きくなりすぎ」て、「公正な競争を妨げている」という批判が当たっているか、調査しようというものです。

アメリカ議会の下院は、いま、野党・民主党が過半数を占めています。「テックジャイアントは解体だ!」という主張をする議員もいて、11月の大統領選挙を見据え、経営トップを「引きずり出した」という面もあるようです。

では、その批判の理由をいくつか見てみます。

高まる批判

なぜ“GAFA”は批判されるのか。キーワードは「独占」「寡占」です。

新型コロナウイルスの感染拡大で多くの企業の経営が悪化する中でも、この4社は巨額の収益を上げています。(4社の時価総額の合計は500兆円を超え、いまや、日本のGDPに迫る規模です。)

コロナで打撃を受けたアメリカ経済が「V字回復」する、というのは当初の見立て。いったん2番底を経験してから回復する「W字回復」か、いや「U字」かと言われる中で、最近聞くのは「K字回復」…。

つまり、多くの企業はなかなか回復できず右肩下がりの一方、大手IT企業だけが反転を続けるというシナリオです。危機にあっても拡大し続ける圧倒的な存在、それが“GAFA”なのです。

何を語ったか・その1 アマゾン

今回、最も注目を集めたのが、アマゾンのベゾスCEOです。ベゾス氏は、競争の激しさを強調します。
ベゾスCEO
「世界の小売市場では激しい競争が続いています。アマゾンのシェアは世界市場の1%未満、アメリカ国内でも4%に満たないのです」
さらに、雇用の拡大にも貢献しているとも…。
ベゾスCEO
「アメリカの42の州で10万人規模の雇用を生み出してきました。時給も連邦の最低賃金の倍の15ドル以上を支払っています」

おひざ元では…

そのアマゾンが本社を置く西海岸のシアトル。中心部にはアマゾン本社がそびえ建ち、周囲ではビルの建設工事がやむことはなく、街は活況を呈しているように見えます。
しかし、実際は、そうでもありません。「アマゾン活況」で家賃の高騰が続いています。中心部でカフェを営むシャーリー・ヘンダーソンさんは、さすがシアトル、注文を受けてからいれる本格的なコーヒーが売りです。
ヘンダーソンさん、以前は店のすぐ近くに住んでいましたが、家賃の高騰で、安い住宅に引っ越さないと店を維持できなくなりました。「中小事業者や個人は苦しくなるばかり」(ヘンダーソンさん)というのが、シアトルの実情のようです。

この街に変化が現れたのは、今月。シアトルの市議会は、大企業を対象にした新たな課税を決めました。「アマゾン増税」とも呼ばれていて、税収は、コロナウイルス対策やホームレスの人など社会的弱者の支援に充てられる予定です

「規制すべき」「役割を見直すべき」

公聴会を前に、私はある人物にインタビューしました。

ロジャー・マクナミー氏。創業間もないフェイスブックをいち早く見いだした投資家ですが、今ではそのフェイスブックを始め、巨大IT企業批判の急先ぽうとして知られています。

マクナミー氏は、こう言います。
マクナミー氏
「テクノロジーを抱え込み、自分の利益になることにしか使っていない」
彼らに新たな規制をかけ、4社がそれぞれ独占する技術を別の用途にも使うようにすることで、さらなる技術革新を実現できるはずだというわけです。
さらに、企業向けのITサービスを手がける『セールスフォース・ドットコム』創業者のマーク・ベニオフ氏は、「4社は、いかに利益を上げるかということしか重視していない。社会でどのような役割を果たしていくのか、私たちは積極的に問わなければならない」と指摘していました。

何を語ったか・その2 アップル

アップルのクックCEO。穏やかながら、はっきりとした口調は、新型スマホの発表会の時と変わりません。
クックCEO
「スマートフォンの市場では、サムスンやファーウェイなども成功を収め、厳しい競争が続いています。アップルはいかなる市場でも支配的なシェアは保有していません」

何を語ったか・その3 グーグル

グーグルに対しては「中国との関わり」について厳しい質問が出されました。中国軍に協力しているのではないかというのです。

ピチャイCEOは中国軍への関与を明確に否定したうえで
ピチャイCEO
「中国ではAI=人工知能に関する小規模なプロジェクトに参加しているだけだ」
実は、ここに来て“GAFA”への批判は、与野党双方から強まっています。中国との対立が深刻になる中、アメリカのバー司法長官は、「大手IT企業は中国におもねっている」といった発言をしています。
トランプ大統領も、公聴会に先立ちツイッターに投稿。「もし議会が巨大IT企業に公正さをもたらさないなら大統領令を出して私自身が行う。ワシントンでは、長年にわたって口だけで行動がともなってこなかった」。

多くのアメリカ国民、企業が苦しい状況に置かれるなか、巨額の収益を上げるIT企業に厳しい姿勢を打ち出すねらいがありそうです。こうした流れを「強い者いじめ」と見るか、「新たな社会貢献を促すもの」と見るか。ことし秋に大統領選挙が迫るなか“GAFA”に不満を募らせている人たちにアピールしたいという政治的な思惑も透けてみえます。

それでも巨大であり続ける…!?

今回の公聴会を聞いていて、私は改めて“GAFA”の巨大さを感じました。4社の影響力はこれからも拡大こそすれ、縮小することはなさそうです。それを裏付けるように、公聴会は5時間余りに及び、議員の質問が途切れることはありませんでした。できるだけ、波風立たせぬよう慎重な物言いだった経営トップたちですが、「独占、寡占との懸念」をぬぐい去ることはできなかったように思います。
新型コロナウイルスの拡大で“GAFA”の「1人勝ち」(いや「4人勝ち」?)が、一層際立つなか、彼らが何を考え、経済や社会の安定にどのような役割を果たそうとしているのか、これからも取材していきたいと思います。
ロサンゼルス支局記者
菅谷 史緒
2002年入局
岐阜放送局、ニューデリー支局、イスラマバード支局、経済部などを経て現所属