PCR検査 国の支援拡充を 日本商工会議所が緊急要望

PCR検査 国の支援拡充を 日本商工会議所が緊急要望
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新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、日本商工会議所は、中小企業の従業員が感染していないことを確認するためのPCR検査を受けやすくするため、政府に支援の拡充などを求める緊急要望をまとめました。
日本商工会議所は、感染者数の増加が続く中でも企業活動を維持していけるように、検査体制の拡充や医療体制の整備などが必要だとしています。

具体的には、PCR検査などの数値目標を盛り込んだアクションプランを来月初めにも示すことや、症状が軽い患者などを隔離するためのホテルを十分な規模で借り上げることなどを求めています。

そのうえで感染しているリスクが低い人が感染していないことを確認するため、民間の診療所などで行われているPCR検査は保険の適用外で高額なため中小企業が活用しにくいとして、医療機関が新たな検査機器を導入する際の国の支援を拡充し、検査費用の軽減につなげるよう要望しています。

山内清行産業政策第一部長は記者会見で「第2波、第3波が来れば中小企業の倒産や廃業が急増することが懸念され、検査体制の拡充は急務だ。中小企業が従業員にPCR検査を受けてもらって取引先の安心感を高めたいと思っても、費用の問題があれば今後の計画が立てられない」と述べました。

PCR検査 いくらかかるの? 何がわかるの?

新型コロナウイルスの検査は、原則として感染症法に基づき公費で行う「行政検査」として実施されています。

「行政検査」の対象となるのは、発熱など疑わしい症状がある人や、感染が確認された人の濃厚接触者のほか、特定の地域や集団でクラスターの連鎖が生じやすいと保健所が判断した場合なども含まれます。

厚生労働省によりますと、PCR検査では多くの場合で1回1万8000円、抗原検査は6000円がそれぞれかかりますが、いずれも自己負担分は公費で助成され、初診料などを除き患者の費用負担は発生しません。

こうした「行政検査」の対象とならない場合でも、海外渡航やビジネスの際に検査結果を求められる人など、希望者が検査を受けることは認められています。

その場合、一部の医療機関などで自費診療として検査を受けられますが、数万円程度の費用がかかるということです。

ただ、検査で陰性だったとしてもそれは検体を採取した時点でのことで、その後感染するおそれもあります。「陰性証明」とは検査の時点では陰性の結果が得られたという証明にすぎません。

このため厚生労働省は、海外渡航の時点でも陰性だと「証明」することまではできないとしています。

厚生労働省によりますと、ことし3月からこれまでにPCR検査は合わせて94万件余りが行われていますが、このうち自費による検査の件数については把握できていないということです。

国内で行われた検査の大半は「行政検査」だとみられています。

「拡充を」「検査すればいいの?」SNSで賛否

新型コロナウイルスの感染が拡大する中、SNS上にはPCR検査の拡充をめぐってのさまざまな意見が再び目立つようになっています。

「『感染しない、させない』ためにPCR検査の拡充を求めます。『マスクをしていたので濃厚接触者とは認められません』はやめてください」とか「誰もがすぐに検査できる能力は感染防止の第一歩なのになぜ拡充しないのか」などといった検査の拡充を求める意見が見られました。

一方で「PCR検査すれば良いの?当てにならない検査増やして不安煽って、何でも無いって言われたやつが実は感染源になってないよね?」とか「医療現場のひっ迫防止と言いながら、検査拡大しろという矛盾」といった、検査の拡充を懸念する意見も見られました。

専門家「陰性でもマスクなど対策は必要」

一方、陰性の結果を求めようとするこうした検査について、専門家からは慎重な意見も上がっています。

公衆衛生学が専門の国際医療福祉大学の和田耕治教授は、ビジネス目的での検査について「海外渡航する先の国によっては検査が条件になっている場合もあるので、その場合は検査を行う必要がある」としています。

ただ「PCR検査で陰性だったとしても、感染していないかどうかは確実にはわからず、その時点ではウイルスが確認されなかったという結果でしかない。陰性の結果が出た翌日に感染する可能性もあり、陰性を証明するために毎日検査を受けるのかということになってしまう。症状がない中で検査を受ける意義についてはよく考える必要がある」と指摘しています。

そのうえで「陰性の検査結果が得られたとしても、マスクなど基本的な対策が必要なことは変わらない」と強調しています。